
アルゼンチンのコロッケ!
清野 それでは、簡単に物語からご紹介していただけますか? 岩井 アルゼンチンの映画です。自分がエルヴィスだと思っている男が主人公で、普段は製鉄工場で工員として働いています。夜はショーパブで、エルヴィス・プレスリーのそっくりさんとして舞台に立っています。しかしこれが、単純に「そっくりさん」のレベルではないんですよね。
宣伝担当の岩井さん
ポール 顔が似ているんですか? 岩井 自分がエルヴィスそのものであるかのように振る舞うんです。 ポール 自分の中で! 岩井 奥さんや周囲の人にも、自分の本当の名前は「カルロス」だけど、カルロスと呼ばせない。 ポール カルロスではなく、エルヴィスと。 岩井 そうですね。そう呼べと……。 ポール 4文字くらいだし……まぁ語尾も「ス」だし……(笑)。 3人 (笑)。 岩井 どうしてカルロスが、エルヴィスそのものであるかのように振る舞うようになったかというと、この人自身すごく歌がうまいんですよね。エルヴィスの歌声のように。 清野 これは映画見て、すごいなと思いました! ポール あっ、そこは納得できちゃう感じなんだ! 岩井 実際に、主人公カルロスを演じたジョン・マキナニーは、アルゼンチンでエルヴィス・プレスリーのトリビュートアーティストとして活躍しているぐらいの人です。 ポール コロッケ的な! 岩井 今まさにその名前を出そうとしてました(笑)。 3人 (笑)。 岩井 ジョン・マキナニーは、「アルゼンチンのコロッケ」だと思ってもらっていいと思います(笑)。
聞き手のポールさん
岩井 物語の話に戻りますが、彼には1つ夢があります。実はエルヴィス・プレスリー自身は42歳で亡くなっていて、彼自身も今まさにその年齢に近づいている。42歳の誕生日を迎えた時に、自分はどうすれば良いのか固い決心があって、最後にエルヴィス・プレスリーの聖地と言われるグレイスランドにあるエルヴィスの邸宅に向かっていきます。 ポール ロードムービーですか? 岩井 ロードムービーではないです。最後の方だけ「俺はツアーに出るから」と、アルゼンチンからアメリカに渡りますが、基本的にはアルゼンチンで鬱々とした毎日を送っています。 ポール 物語を聞くとちょっとコメディっぽいというか、笑いにもできそうな感じがしますが、コメディではないんですよね? 結構真面目な感じですか? 岩井 外から見たらコメディみたいに感じるかもしれませんが、本人は心の底からエルヴィス・プレスリーになろうと思って生きているので、非常にシリアスな話ではあります。 次ページ:こってりステーキ派で泣ける映画