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集合知で顧客体験をモダナイズするー台湾インディーズ音楽カオスマップ制作秘話

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2020年12月30日に、「台湾インディーズ音楽カオスマップ」を、公開しました。 taiwan このマップは、巷で「何やらおもしろいらしい…!?」と評判である、台湾のインディーズ音楽シーンで活動する(あるいは活動していた)約200アーティストを、ジャンルごとに分類し、視覚化したものです。 このマップには、JPG版と、オンラインツールMiro版があります。
Miro版では、気になったアーティストの音源(SpotifyBandcampYouTube など)に直接アクセスしたり、コメントを残したりことができます。 台湾のインディーズ音楽情報が一か所に集約され、しかも音源リンクへ直接アクセスできるプロジェクトは、日本国内はもとより、台湾でも前例がありません。新規性とオンラインツールの活用といったポイントをご評価いただき、多くのWebメディアさんに取り上げていただきました。また、さまざまな方にお知らせをするなかで、「自分たちも音楽地図を作りたかったんです!」というご感想を複数の方からお寄せいただきました。 そこで、このコラムでは、「台湾インディーズ音楽カオスマップ」の制作プロセスを公開します。このプロセスを真似ることで、一定品質を満たした、あなただけの音楽地図ができます。タイ音楽でも、インドネシアポップスでも、辺境サイケでも。

原点:台湾ミュージックのTSUTAYAを作るには?

「台湾インディーズ音楽カオスマップ」の制作をはじめた原点には、「台湾ミュージックのTSUTAYAみたいなのを作りたい」という小さな野望があります。地方出身の私にとって、音楽文化への理解を深める最初の接点は、TSUTAYAでした。
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(画像出典元:栃ナビ
TSUTAYAのレンタルコーナーでは、豊富な作品群が一定の法則に基づいて分類され、好きな作品を選んで借りることができます。私は子どもの頃、両親や妹とともにTSUTAYAに通うことでさまざまな音楽に触れました。そして、高校生ではタワーレコードでCDを買うようになり、上京してライブハウスに行くようになり、30代の今は台湾の音楽を紹介する活動をしています。きっと同じような経路で、音楽文化への理解を深めた地方出身の方も多いでしょう。 つまり、あるカルチャーについて理解を深めようとしたときに、入口に一定の情報量があり、好きなものを選べる環境があることは、その世界を掘り下げていくうえで有効な体験と言えます。この世界観を台湾インディーズ音楽に持ち込み、多くの方に作品の魅力を伝えるにはどうすれば良いか? を考えました。 私は富豪ではないので、台湾のCDを輸入して、TSUTAYAのような建物を建てて全国展開することはできません。しかし、インターネットを利用すれば、日本のどこにいても、台湾のインディーズ音楽の情報を取得できる仕組みづくりができるのではないか? と考えました。そしてそれは、一覧性のある「カオスマップ」の形が最適であろうという仮説を持ちました。

メディア情報からデータベースを作る

台湾インディーズ音楽のTSUTAYAをつくる!」という野望をブチ上げたものの、すぐに作れるわけではありません。私がはじめに行ったのは、情報の収集です。幸いにも、これまで台湾音楽関係のイベントや書籍、また自サイトの企画などで収集したアーティスト情報があり、それらを頼りに、エクセルで簡単なリストを構築しました。 taiwan参照した書籍・イベント】 平成台湾100アルバム展 -台湾ポップス30年間の発展の歴史:2019年開催 代官山蔦屋書店(イベントレポート) ミュージック・マガジン2020年4月号「特集 台湾音楽の30年」 Web企画「ミュージック・マガジンに載らなかった台湾音楽の100枚」:2020年5月公開 この時点では、130アーティストくらいの情報が集まっていました。

泥臭く一次情報をあつめる

メディア情報の収集と平行して行ったのは、一次情報の収集です。これは台湾の音楽に限りませんが、メディアで紹介されるインディーズアーティストはごく一部です。言語障壁やビジネス障壁がある海外の音楽では、その傾向は強くなります。しかし、紹介されていないアーティストの中にも、才能のアーティストがいることを、ご存じかと思います。 そこで(1)一般投稿を受け付けるアンケートフォームを設置する (2)日本と台湾を行き来する現場の方に取材する、という2点に取り組みました。前者では多くの方に協力を頂き、アーティスト情報だけではなく、おすすめコメントや、台湾音楽の発信について思うことなどのフィードバックが集まり、企画を進行していく上で学びが得られました。 現場の方への取材では、ミュージシャン、サウンドエンジニア、音楽ジャーナリストの皆さんにお話を伺うことができました。知識や経験をお持ちの方に相談をすることで、アーティスト情報はもちろんのこと、より具体的な相談もでき、企画の質を向上させることができました。 泥臭く情報を集める、話を聞く、そしてそれをコンテンツに落とし込む。これは私がずっと大事にしている考え方です。これらの取り組みの結果、最終的に約200アーティストの情報を収集できました。

テクノロジーを活用する

アーティスト情報が充実したところで、実際のマップの制作に入りました。 マップの制作で意識していたポイントは、 (1)文字情報だけでなく、アーティスト写真を使って、映えるようにする。CDジャケットが並んでるイメージで。(まさにTSUTAYA!) (2)検索しなくても音源を聴ける仕組みにする(中国語名で音源を検索するのが手間であると考えられるため) この2点です。 今回の目的は、単に「マップ作りました!ドヤ!」とすることではありません。「マップを見た人がすぐに音源を聴けるようにする」というレベルまで作りこめてこそ、TSUTAYAのような体験を見た人に届けられると感じたからです。 しかし、(1)はできたとしても、(2)はどうすればできるのか、自分の知恵では見当がつきませんでした。そこで、台湾音楽好きのエンジニアの深谷 泰士さん(@tai_fukaya)に相談をすると、「Miro」というツールで実現できそうなことがわかりました。 Miroは、世界の有名企業でも取り入れられているオンラインホワイトボードツールです。文字を書き込むだけではなく、画像を入れたり、リンクをつけたりもできるとのこと。不安がないわけではなかったのですが、今回はMiroに賭けることにしました。
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私がMiroの軍門に下る様子
使い方のレクチャーや、全体のデザイン、情報を載せるテンプレートづくりなど複雑な作業は深谷さんが快く引き受けてくださり、無事Miroでのマップ制作が完成しました。 taiwan

価値を届ける

さまざまな経緯を経て、マップが出来上がり、12月30日に、私のブログメディア「Tapioca Milk Records」で公開しました。記事をTwitterでシェアすると、多くの方に拡散頂き、これまでに行った企画で一番の反響をいただきました。さらに多くの方にこの地図の価値を多くの方に届けるために、プレスリリースを作成し、音楽・カルチャーメディアさんにお知らせすることにしました。(私は本業では広報の仕事をしています) プレスリリースは、先行事例を参考に文章を作り込んでいくのが一般的です。しかし、今回はインディーズ音楽×カオスマップという前例のないプロジェクトであり、プレスリリースの書き方には悩みました。そこで、音楽業界のプレスリリースではなく、「カオスマップ」という文化が生まれたデジタルマーケティング業界のプレスリリースを参考に、文章を作りこみました。 すると、多くのメディアさんから反響をいただくことができ、さまざまな切り口で取り上げていただけました。この結果、某大手音楽フェスティバルのイベンターさんにも情報が伝わっていることを確認できました。プレスリリースに添付したSpotifyのプレイリストも、マップの公開から1週間で100人に到達し、今も増え続けています(この記事を書いている時点で160名超)。

集合知で顧客体験をモダナイズする

今回は(1)過去の情報を集める(2)取材をして一次情報を集める(3)テクノロジーを活用する(4)価値を届ける、という4つのプロセスでマップを制作いたしました。 どのステップにおいても、私一人の力では実現できないものだったことをお分かりいただけたかと思います。 私は、台湾の音楽関係で面白そうなことを企画して、情報を広める企画を打つのは得意です。しかし、その他の知識やスキルには欠けている部分があります。このプロジェクトを通して学んだのは、周りの方の協力と応援を頂ければ、前例のないものをつくり、これまでよりも多くの方たちに広めることができるということです。 もしあなたにも、広めたい世界や音楽がある場合は、一度周りに相談して、その形を作ってみませんか? 私は、台湾に限らず、詳しい人のおすすめから音楽を聴くことが好きです。これを見た方が音楽地図を作り、多くの音楽情報に触れられる日を、楽しみにしています。

Special Thanks:「台湾インディーズ音楽カオスマップ」制作にあたりお世話になったみなさん

いつも周りで背中を蹴飛ばしてくれるみなさん 一般投稿にご協力いただいたみなさん 早川徹さん(東京中央線) 劉堅白さん(Dope Purple) 笛岡俊哉さん(AKNIT) MADZINEさん(サウンドデザイナー) Brien Johnさん(音楽ジャーナリスト) 深谷 泰士さん(ソフトウェアエンジニア) UROROS 編集長 北原さん BELONG Media 編集長 矢部さん DIGLE MAGAZINE 編集部の皆さん Qetic 編集部 桑原さん みなさま、お忙しいなか、当マップの制作、拡散にご協力いただきまして、 どうもありがとうございました!

TEXT by 中村めぐみ

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