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異形のものへの変身願望<三上鳩広 個展【II】>

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三上鳩広

革造形作家・三上鳩広の個展<三上鳩広 個展【II】>が、高円寺・ギャルリー・ジュイエにおいて2015年11月12(木)から21(土)まで開催中だ。

デートの待ち合わせ場所に行くと、ベンチに腰掛けていた彼女は一冊の文庫を眉間にしわを寄せて読んでいた。よほど熱中しているのか、僕にまったく気がつかない。しばらくしてようやく文庫から目を離し、顔を上げると僕を見てニコリとほほ笑んだ。何を読んでいたのかと覗き込むとSF作家・栗本薫の『グイン・サーガ』。主人公のグインは身体は人間だが頭だけが豹という異形の戦士。ヒロイック・ファンタジー小説だ。彼女は僕を見つめると眼を細めて「あなたも頭が豹だったらよかったのにな……」と小さくつぶやいた。

革造形作家・三上鳩広の個展<三上鳩広 個展【II】>で展示されているのは異形の生物の被り物。豹はないが兎や鳥や植物からインスパイヤされて制作された、レトロのようでいて廃墟と化した近未来を想わせる、スチームパンクの異世界が観る者を魅了する展示となっている。

三上鳩広

※写真は展示風景を撮影したもので、実際の作品とは色や質感がかなり違っていることをお断りしておく。


Profile:三上 鳩広(MIKAMI HATOHIRO)


佐賀県出身、千葉在住。
被り物を中心とした革造形作家。
ギャラリーでの展示を中心に、他方面への作品提供も行う。

MV提供・雑誌掲載

2012年 HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA “HALLOWEEN PARTY” MV マスク提供。
2013年 GREMLINS “the Carnival” MV マスク提供。
2015年 リーガルフリーペーパー「Regal Paper」表紙 マスク提供。


Interview:三上鳩広

変身願望、異形の生き物への憧れ

──作家の三上鳩広さんが女性だったことに驚きました(笑)。

よく言われます(笑)。

──今回、初めて展示に伺わせていただいたわけですが、とても興味深く拝見しました。三上さんがマスクに注目し出した理由はあるのですか?

明確なきっかけはないんです。でも、もともとガスマスクや、バイクに乗る時に着用するヘルメットなど、“首から上が隠れる”、というものの見た目がすごく好きだったんですね。それがフェチ的な感覚で、私にはものすごくグッとくる。“顔はない。だけど首から下が人間である”という見た目が大好きで。それを自分なりに、“動物的な表面だけども、少し違う”。“人間ではないけど、人間に近い何かである”、という表現をしたかったんです。それをずっと昔から惹かれていたフルフェースマスクという形態を取って表現ができたら、という想いがありました。そういうものがあれば自分が見てみたい。自分で作ったらどうなるんだろう。ところからスタートしました。

三上鳩広
──変身願望的なところがあったりするのですか?

ありますね。私自身にもありますし、人に被ってもらいたいという願望もあります。“あわよくば、こういう生き物がいたらいいのに”とか、“こういう改造人間というか、異形の生き物からいたらいいのに”という願望もあります。

──兎や鳥など、モチーフに動物が多いように思いました。

モチーフは、動物だったり植物だったり、もしくは自分の好きな映画だったり音楽だったり、そこから発想を得たものですね。

三上鳩広

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