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音楽は人間と人間の関係──Aaron Choulai、インタビュー

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アーロン・チューライ(Aaron Choulai)

来日してから約15年。東京・江古田を拠点に、ジャズやヒップホップ、現代音楽などを横断しながらシーンに新しい風を吹かせてきたピアニスト/ビートメイカーのアーロン・チューライAaron Choulai)が、2023年1月からオーストラリアのメルボルンに拠点を移し、活動していく。メルボルンでは、アーロンは、オーストラリアの代表的なアンサンブルの一つ、オーストラリアン・アート・オーケストラAustralian Art Orchestra)のアーティスティック・ディレクターに就任。日本で培ってきた音楽性やコミュニティ、主催レーベル〈Namboku Records〉とも連動させながら、オーケストラで新しい音楽を生み出していく予定とのことだ。

アーロンのあらゆる活動の中でも、近年のプロジェクトではMONJUのMC・仙人掌を迎えた編成で、ジャズとヒップホップを見事に融合させたAARON CHOULAI RAW DENSHI SEXTETが話題となった。恵比寿BATICAや小岩BUSH BASHなどのヴェニューをはじめ、新宿PITINNや丸の内のCOTTON CLUBといった場所に極上のジャズと東京を代表するヒップホップのヴァイブスを届けた。

メルボルンへと発つ直前、アーロンは11月19日(土)にアーロンが主催するイベント<LOFI IMPROV>が恵比寿BATICAで開催される。アーロンが今回クインテットに迎えるMCは、湘南・藤沢を拠点に活動するヒップホップレーベル〈DLiP RECORDS〉から、BLAHRMYのMiles Word。アーロンに大きな影響を与えたOILVE OILが繋げたという国内随一のMC、また吉本章紘(Sax.)、オオツカマナミ(Ba.)、治田七海(Tb.)らクインテットのリハーサルを行う日、この取材を実施した。

リハーサルで繰り広げられるセッションと試行錯誤に立ち合い、メンバー間のディスカッションを目の前にし、音楽を次のステージに昇華しようとするプレイヤーたちの気迫をひしひしと感じた。アーロンはインタビュー中、「音楽は人間と人間の関係」からしか生まれないと言っていたが、まさしくその言葉の通りだったと思い出す。RAW DENSHIとは即ち生の素粒子。互いに音で振動しあって、結びついていくというものだ。リハーサル後、代々木の磯丸水産で強行したインタビューの一部をこの記事で紹介しよう。

INTERVIEW:Aaron Choulai with Miles Word

アーロン・チューライ(Aaron Choulai)

──アーロンさんが来年の頭にオーストラリアへ帰られると伺いました。

Aaron Choulai(以下、Aaron) しばらくメルボルンを拠点に活動します。理由はオーストラリアン・アート・オーケストラという現代音楽のアンサンブルのアーティスティック・ディレクターの仕事が始まるから。

──アーティスティック・ディレクターでは詳しくどういうことをやっていく予定なんですか?

Aaron オーケストラのこれからの活動を決めます。アートとはどういう意味なのか。将来のことを考える。僕の場合はヒップホップの世界や日本にも繋がってるから、そのオーケストラでは日本について表現したいなって思っていて。だから、日本とは離れるけど、ここの音楽とは離れない。

──2009年に日本に来られて、15年間ほど日本で生活されていますよね。その期間で、自分の表現の移ろいなどをどう感じていますか? 最近では写真や映像もやっていますよね。

Aaron 写真や映像に興味を持ったのは、一年半くらい手を怪我してピアノが弾けなくなったから。手術もしたけど、ピアノを弾けなかったのがやっぱりつらくて。そのときに芸術がやりたいと思った。僕、目があまり見えないんですよ。法律的には不自由な扱いになる。真っ黒とかじゃなくて、光ると何も見えなくなる、みたいな。その目でどう見えているのか、カメラで表現できるんじゃないかと思った。

日本に来てそういう経験もあったし、一番大きいのはヒップホップと繋がったこと。日本に来た時はジャズを探してた。もちろん日本にもジャズはあったけど、ニューヨークと違ってコンテクストがよく分からなかったから、自分が参加できる音楽じゃないと思った。そこでOLIVE(OIL)さんやK-BOMBのヒップホップを聴いたら、これがニューヨークのジャズと一番近い音楽だと。それは、コピーではなくて自分の表現をしているから。自分の表現でヒップホップの世界に参加してる。ジャンルとか関係なく、それがジャズだと思います。

アーロン・チューライ(Aaron Choulai)
アーロン・チューライ(Aaron Choulai)
アーロン・チューライ(Aaron Choulai)

──アーロンさんの最近の作品の中で、これまでの活動成果が顕著に表れたのが『Raw Denshi』だったと思います。ジャズやヒップホップ、現代音楽的でもあるアーロンさんらしい作品でした。これまでリリースしてきた作品を振り返ってみていかがでしょうか?

Aaron 『Raw Denshi』はレコードで一番明瞭に自分を表現できた作品でした。時間とお金がかかっててすごい難しかった(笑)。その前のジャズピアノの作品は友達とやって自然にできたもので......毎回そうやればいいんですけどね。

──『Raw Denshi』の名前を取ったRAW DENSHI SEXTETは、アルバムにも参加している仙人掌さんを迎えた編成でしたよね。これまでもMCを迎えた編成でライブをされていて。

Aaron そうですね。KOJOEとやったり、OLIVEさんとクインテットをやったりした。MCとやると違う可能性が見えてくるし、やりたい方向性が分かってくるし、したいこともできる。今回、マイルスと組む編成もすごく難しいのに、練習すればするほどみんな分かってくれる。

『Raw Denshi』は日本でしかできない音楽だと思います。音楽の部分はジャズメンなら誰でもできるパーツかもしれないけど、ジャズとヒップホップの関係を理解してるという点では日本のラッパーが一番強いと思う。

日本には戦争の歴史があるじゃないですか。明治時代以前にも色々文化があって、戦争後に文化が作り直された。俺はそんなに歴史に詳しくないけど、ジャズはアメリカの音楽で、世界の文化になってる。俺が日本に来てから思ったのは、ジャズをそれっぽくやってる人がいること。一番難しいのは、俺たちがアメリカ人じゃないということなんですよ。音楽や文化が好きなのはもちろん良いけど、参加することだけでは足りないんです。文化を本当に分かってるなら、音楽が好きという以上にやらなきゃいけないことがある。個人的に、それをやることがミュージシャンとしての責任だと思う。特にヒップホップの文化に入るのはすごく難しいと思う。だからそういう矜持やオリジナリティを探求して持って文化に参加してるマイルスやKOJOEが一番ジャズだと思ってる。

日本の音楽と言ったら武満徹とか小澤征爾とかのイメージが強いと思うけど、OLIVE OIL、黛敏郎、MILES WORD、KOJOE、石若駿、吉本章紘......これからみんな出てくると思う。

アーロン・チューライ(Aaron Choulai)
アーロン・チューライ(Aaron Choulai)

──仙人掌さんの曲をアレンジするのと、マイルスさんの曲をアレンジするのでどう違いを感じましたか?

Aaron マイルスの場合は……難しいですね。小節が難しい。16小節じゃなくて23小節とかなんですよ。フック入りの曲も少ない。サックスのソロみたいにフレーズが入ってくる。仙人掌はオーセンティックで、8小節と16小節、みたいな。作曲家としてはそういう違いがあるかな。どちらも難しいけどカッコいい。

──マイルスさん、今日はリハーサルをして、どうでしたか?

Miles Word(以下、Miles) 例えば「俺、やりづらいな」と思う箇所もあった。でもそれはアーロンが考えてやってくれてるから、それはそれで成り立ってるはずだし、俺が茶々入れていいかわからないのもあったりしたかな。それはヒップホップは基本的にワンループだから。俺からしたらズレに聞こえるけど、他の人たちからしたらズレてない、みたいなこともあったり。でも、それを擦り合わせる作業がセッションというかさ。ビートは機械で作って、それを流すだけで成り立つんだけど、バンドはそれぞれの楽器のプレイヤーが集まって演奏してグルーヴが生まれるっていう難しさと大変さを感じたね。

Aaron うん。簡単かもしれないけど、こういう音楽を作るよりも難しいと思う。それは捉え方かもしれない。ビートを作るのはマジで難しい。ジャズのアレンジをするのはテレビを見ながらでもできるけど、ビートは集中して作らなくちゃいけない。自分たちがやってるのは何もないところから作る音楽だから、経験と知識があればとりあえずできる。ビートは、例えば冷蔵庫開けたらにんじん、オクラ、ご飯しかないけどそれでパスタを作るみたいな。そういうもの。そこにあるものでどう自分を表現できるか。簡単に説明するとね(笑)。

Miles 確かに、感覚が違うかもね。例えばビートだったら自分でドラムをズラしたり、合わせたりもできるわけじゃん。人とやってるとき、それが気になるわけだからすごい大変だよね。

Aaron  大変。だからこういう音楽をやってると、人間と人間の関係が大事になってくる。ちなみにマイルスと繋がったのはOLIVEさんのおかげですね。

アーロン・チューライ(Aaron Choulai)
アーロン・チューライ(Aaron Choulai)

──なるほどです。SEXTETを最初にやったのはいわゆるジャズの箱ではない恵比寿のBATICAでしたよね。そして小岩BUSH BASHやヒップホップの箱ではない新宿PITINNや丸ののCOTTON CLUBでもSEXTETをプレイしてました。その感覚もすごく面白かったです。

Aaron  僕はここ2年間くらいほぼPITINNとBATICAでしかやってないんですよ。理由はすごいお世話になってる店というのもあるけど、音楽のコミュニティをサポートしてくれてるから。誰も僕のことを知らない時でも声をかけてくれた。あれからステージも増えた。そういうこともあって、『Raw Denshi』みたいな特別なプロジェクトは自分が育てられた店でやりたかった。

──11月19日にBATICAで開催されるアーロンさんの主催イベント<LOFI IMPROV>には今回OLIVE OILさんやFKDさん、吉本さんらが出演されます。アーロンさんにとって、彼らはどんな存在でしょう?

Aaron <LOFI IMPROV>はもちろん最後とは言えないですけど、しばらくやる予定はないです。ミュージシャンでも先輩でも、僕は友達のような人間関係を大事にしてます。今回のイベントが最後だからではなくて、仲の良い友達がいないと音楽が生まれないんです。音楽って人間と人間の関係だと思うんで。

アーロン・チューライ(Aaron Choulai)

Photo by Miki Yamasaki Interview, Text, Edit by Koichiro Funatsu

SP THX to Daisuke Fukui

アーロンが紡いでいった関係から生まれた最高の音楽の集大成の一つが11月19日(土)が恵比寿BATICAで開催される<LOFI IMPROV>に集まる。 ぜひとも見逃しなく。

INFORMATION

アーロン・チューライ(Aaron Choulai)

NAMBOKU RECORDS presents LOFI IMPROV NO.4

2022.11.19(土) OPEN 23:00 EBISU BATICA DOOR ¥2.500 ※1D別

【LIVE】 AARON CHOULAI QUINTET Feat.MILES WORD AKIHIRO YOSHIMOTO QUARTET FIC

【BEAT LIVE】 OLIVE OIL AARON CHOULAI FITZ AMBRO$E FKD THE PEAL

【DJ】 VVOKA GONZ U DAZ SACHI THE FRIES INFINITI TATSUKI

以下の注意事項を必ずお守りください ※再入場はお断りしております。 ※飲食物の持込もお断りしております。 ※店内にて荷物預かりクロークがございます。 ※会場周辺での溜まりはご遠慮ください。 ※店内マスク着用をご協力お願いします。 ※スタッフの指示に従って頂けない場合はご入場をお断りさせて頂きます。

詳細はこちらAaron Choulai InstagramAaron Choulai Twitter

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