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【FUJI ROCK FESTIVAL ’23出演決定!】インタビュー:ÁSGEIR|デビュー10年目の変化と感謝

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ÁSGEIR アウスゲイル

2022年でデビュー10年目を迎えた、アイスランドのインディー・シーンを代表するミュージシャン、アウスゲイルÁsgeir)。自身4枚目のアルバムとなる『Time On My Hands』を昨年10月にリリースした彼は<FUJI ROCK FESTIVAL '23>7月30日(日)に出演することも発表された。

新作『Time On My Hands』は、パンデミックで思うようにライヴ活動ができない期間に、デビュー以来の付き合いとなるプロデューサーや仲間たちと作り上げられた。エレクトロニクスとアコースティックを融合させたサウンドは、さらに成熟したものに進化。

今回は曲作りの過程で、ヴィンテージ・シンセに刺激を受けたという。アウスゲイルの自宅にZoomを繋げてアルバム制作の舞台裏を聞いた。

INTERVIEW: ÁSGEIR

ÁSGEIR アウスゲイル

━━新作『Time On My Hands』はアコースティックな曲やエレクトロニックな曲が混じり合って表情豊かな作品ですね。アルバムから、いろんなことを試してみよう、という好奇心が伝わってきました。

そんな風に感じてもらえると嬉しいよ。その通りで、スタジオでいろんなことを試して、それを楽しみながら作ったんだ。これまでフォークとエレクトロニックという両極端なサウンドを混ぜることに興味を持ってきたけれど、今回のアルバムでは、エレクトロニックな曲は思い切りエレクトロニックに。フォーキーな曲は思い切りフォーキーにすることでコントラストが鮮明になった。それが幅広いサウンドを生み出していると思う。

━━スタジオワークに時間をかけたのは、パンデミックで室内で過ごす時間が多くなったことと関係ありますか?

こういうアルバムになった理由のひとつとして、間違いなくコロナ渦という状況は関係してると思う。実際、ロックダウン中の大半を、同じスタッフと一緒にスタジオにこもって作業していたからね。でも、すごく楽しい時間を過ごせたよ。アルバムの制作はプレッシャーとの闘いでもあって、時々、しんどくなる。少なくとも、自分のこれまでの経験ではそうだった。でも、今回のアルバムは本当に楽しくて、その勢いで一曲につき何バージョンも作ったんだ。ヴァージョン違いの曲はアルバムには入れてないけど、いつか何らかの形で表に出すことができたらいいな、と思ってる。

ÁSGEIR - Boderland

━━スタジオにたくさんのシンセサイザーがあって、それを試すことが多かったそうですね。

ヴィンテージ・シンセがたくさんあって、それをよくいじっていたんだ。自分には、古いシンセがギターやピアノと同じ生楽器みたいに感じられる。そこに魂が宿っているような気がするんだ。最新のシンセみたいにいろんな音が出ないし、壊れやすくて扱いにくい。演奏していて不具合や誤作動もあるけど、そういう不自由さが生き生きした音楽を生み出すような気がする。最近、完璧じゃないことが音楽を魅力的にするんじゃないかって思うようになってきたんだ。今回のアルバムでは、ほぼ全曲でメモリームーグを使っている。このシンセはベースやオルガンの音を出せるし、作曲にも使えるんんだ。

━━シンセで作曲したことで曲に変化は生まれました?

シンセをいじっているうちにループができて、そこから曲に発展したり、シンセの音色からイメージが膨らんで曲ができたりした。新しい楽器に触れることで、その音色からインスパイアされて曲が生まれることは以前にもあったけどね。最近の曲作りで大きく変化したことといえば、曲を書いた後のプロセスかな。デビューした頃は、自分が書いた曲がスタジオでどんな風に仕上げられていくのか想像もできなかった。作品を出していくうちにスタジオの技術を学び、曲がどんな風に化けていくのかを知って、そのプロセスに興味を持つようになったんだ。デビューした時から今回の新作まで同じプロデューサーで、彼からいろんなことを学んだ。そのおかげで耳が繊細になって、細かい違いを聞き分けられるようになったことが大きいと思う。

ÁSGEIR アウスゲイル

━━スタジオで曲に手を加える作業、ポスト・プロダクションに興味を持つようになったんですね。そういった心境の変化は、近年のアルバムに反映されていると思います。今回のアルバムでは、“Snowblind”のようにダンサブルなビートをフィーチャーした曲が印象的でした。

あの曲はサビの部分は何年も前に作っていたんだ。それが自分の頭の中にずっと引っかかっていて、この曲はポップ・ソング向きだな、と思っていた。それで曲のイメージを練りながら、音を肉付けしていったんだ。スタジオにあるシンセを片っ端から試して、彫刻みたいに音を足したり、引いたりして、何週間もかけて形にしていった。さっきの話に出たように、作曲より音作りに時間をかけた曲で、4つ打ちみたいなビートをコピー・アンド・ペーストして、そこにリヴァーブやフィルターをかけて生き生きとした曲に仕上げていったんだ。あの曲のダイナミックさは、コンピューターによるポスト・プロダクションが鍵になっていると思う。

Ásgeir - Snowblind

━━スタジオワークに興味を持つようになったことで生まれた曲なんですね。

うん。でも、それってどうなんだろうって思うこともある。スタジオの知識が増えたおかげで、PCゲームを攻略するような感覚で曲に向き合うようになってしまったからね。それに曲の細部を作り込んでいくのはキリがないんだ。細部にこだわっているうちに曲の全体像を見失ってしまい、このままだとまずいぞ、と思ったことが何度もあった。1000回くらい繰り返し聞いて完璧な状態に仕上げるよりも、録音したものをすぐに第三者に渡して仕上げてもらった方が新鮮に聞こえることがある。あまり曲に深入りしすぎると、その曲が本来持っている良さを台無しにしてしまう気がするんだ。お腹いっぱいになるまで曲をこねくり回したりせず、何も考えない方がいいんじゃないかって思うことがある。だから、ポスト・プロダクションに時間をかけすぎるのは良くない、と最近は思ってはいるんだけど、やり始めると楽しくて止まらなくなるんだよね(笑)。

━━スタジオから出られなくなる(笑)。そういえば、“Borderland”はお父さんに歌詞を託されたそうですね。

これは締め切りギリギリに作った曲で、期限内に歌詞を書き上げるのは無理だと思って父親に頼んだんだ。父は8歳の頃から詩を書き始めたプロの詩人だからね。。実はこれまでに何度も父に歌詞を頼んでいる。僕がミュージシャンの道に進んだ10 年前からね。父は今年で80歳になるけど、詩を書くことに人生を捧げてきた。人生経験が豊富でたくさんの本を読むから、豊かな引き出しとボキャブラリーを持っている。語りたいことがいっぱいあって、自分の言葉に自信や重みがあるんだ。この曲の歌詞は2日くらいで書いてくれた。たまに「ちょっと歌詞のイメージが違うな」と思うことがあるけど、この曲に関してはバッチリで、それを兄と英語に翻訳したんだ。

Ásgeir - Borderland

━━家族で作った曲なんですね。

そうなるね(笑)。今回のアルバムでは、歌詞にも挑戦したいと思ってピーター・ベンという友人と一緒に歌詞を書いたんだ。2人でかなり密に作業をしたよ。歌詞には毎回かなり時間がかかっていたんだ。自分に人生経験がないのもあるし、歌詞を書くことに関しては自分でも躊躇してしまうところがあったからね。それでも、自分なりの声やスタイルを見つけようと試行錯誤してて、それで時間がかかってしまうんだよね。

━━改めて作詞に向き合ってみて、何か発見はありました?

すごく興味深くて、この先ももっと追求していきたいと思った。ここまで深く自分自身について、人生について、生きる意味について掘り下げることってめったにないと思うからね。自分の人生について、何時間も何日もかけて振り返ることなんて、物書きになるか精神科にでも通ってないとまずないと思う。何かの瞬間に「そうだったのか!」と悟るような感じではなくて、作詞の作業中は、ずっと瞑想状態にあったみたいな感じだった。自分の中から出てきた言葉が紙に綴られてるのを見て、『へえ、そんなこと思ってたんだ』って驚いたこともあったし、自分が一体何を考えていたのかわからないこともあった。自分自のパーソナルな体験を綴るというよりは、もっと大きな視点から人生について語ってるような歌詞になった気がする。とにかく、すごく強烈で面白い体験だったよ。

━━タイトル曲“Time On My Hands”の歌詞にある、子供の頃に女の子に手相を見てもらったら生命線が短いと言われて泣いた、というエピソードは実話ですか?

あの歌詞は父が35年前に書いた詩を引用したもので、歌詞のアイデアに詰まった時に父の詩集を開いたら、最初のページにあった詩が曲にピッタリだと思ったんだ。今回のアルバム・タイトルを『Time On My Hands』にしたのは、時間を持て余している、という意味と、手相の中の時間という意味をかけたんだ。たぶん、手相の話は父の実体験に基づいていると思う。5歳の男の子が年上の女の子にからかわれて、生命線が短いから早死にするものだと信じ込んでしまう。その気持ちは自分にもよくわかるよ。幼い頃って年上の人の言うことは何でも信じてしまう純粋さがあるからね。

━━この曲では《あれから20年の月日が流れ 僕は再び同じ場所に立って何かが変わってしまった》と歌われています。デビューから10年目を迎えた今、時の流れをどんな風に感じていますか?

ファースト・アルバムを出してから、もう10年も経ったことを知って愕然とするよ。時間はこんなにも早く過ぎるものか、と思う。それって誰もが感じることじゃないかな。ただ、僕が体験したことは誰もが味わえることではない。僕は19歳から20歳になる頃にこの業界に入って、日々音楽漬けの環境の中で揉まれて成長してきた。それはすごく特殊で、面白い経験だった。

━━あなたの場合、デビューして、すぐに注目を浴びましたからね。

たまたま音楽の世界に飛び込んで、今もこうして音楽をやらせてもらってることに、最近になってすごく感謝するようになった。最初の頃は、あまりにも色々なことがパタパタと起きて感謝する余裕すらなかったからね。自分がこんな場所にいていいのか? というためらいがずっとあったんだ。ミュージシャンを名乗るだけの資格や才能が自分にあるのか? と日々自問していたんだ。でも、ある程度、キャリアを積んできた今は、自分なりに努力してきたと思えるし、ライヴに来てくれるお客さんへの感謝の気持ちも大きくなった。そこがこの10年間で変わってきたところかな。

ÁSGEIR アウスゲイル

取材・文/村尾泰郎 通訳/竹澤彩子

INFORMATION

Ásgeir

アイスランド出身のシンガーソングライター。2012年にデビュー・アルバム『Dýrð í dauðaþögn』をリリース。アルバムはアイスランドのチャートの1位を獲得し、同国史上、最速で売れたデビュー・アルバムとなった。また、アイスランド・ミュージック・アワード(アイスランドのグラミー賞)で、主要2部門を含む4部門を受賞した。2014年にデビュー・アルバムの英語ヴァージョン『In the Silence』、2017年にセカンド・アルバム『Afterglow』をリリース。ワールドワイドに活動の場をひろげ、フジロックフェスティヴァルに出演する等、来日公演も数度実施。2020年にはサード・アルバム『Sátt / Bury The Moon』をリリースした。

ÁSGEIR アウスゲイル

TIME ON MY HANDS(タイム・オン・マイ・ハンズ)

ÁSGEIR(アウスゲイル)

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ÁSGEIR アウスゲイル

FUJI ROCK FESTIVAL’23

2023.07.28(金), 29(土), 30(日) 新潟県 湯沢町 苗場スキー場

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