昨年<グラストンベリー・フェスティバル>に出演を果たし、最注目バンドのひとつとなったFat White Family (ファット・ホワイト・ファミリー)。
2011年にサウス・ロンドンで結成されたファット・ホワイト・ファミリーは、リアス・サウディ(Vo)、ソウル・アダムチェイスキー(Vo/G)、ネイサン・サウディ(organ)、タイシ・ナガサカ(B)、アダム.J.ハーマー(Vo/G)、セベリン・ブラック(Dr.)からなる6人組み。
会場のものを次々と破壊する過激なライヴ・パフォーマンスで話題となった彼ら。そのあまりに激しいライヴ・パフォーマンスのため、イベントを禁止にする会場もあるほど。その一方で、アーティストやセレブリティのファンが多く、アルバム収録曲の“Satisfied”は、友人であるショーン・レノンとの共作となっています。
そんな彼らの待望のセカンド・アルバム『Songs For Our Mothers』がリリースされました。バンドは今作について「自分たちの妄想や、セックス、ドラッグ、死、さらには北アイルランドの英雄である俳優サム・ニールについて」語っています。アルバムの中から、ファースト・シングル“Whitest Boy On The Beach”のMVがすでに公開され、頭を刈り上げられていくメンバーの姿に目を引きつけられます!
Fat White Family – “Whitest Boy On The Beach”
今回、メンバーのリアス・サウディ(Vo)とソウル・アダムチェイスキー(Vo/Gt)にインタビュー。最近影響を受けているというバンド、ミート・ラッフについてや、デイヴィッド・キャメロンといった政治の話題、さらには、ムッソリーニ、アドルフ・ヒトラー、プリーモ・レーヴィなど、幅広いテーマについて語ってくれています。このインタビューをご覧になれば、彼らのパーソナリティと新作の魅力が丸ごとわかる内容に仕上がっています。
text by Qetic・Takashi Matsunaga
Interview:Fat White Family(Lias Saudi[Vo]、Saul Adamczewski[Vo/Gt])
——13年のデビュー作『Champagne Holocaust』リリース以降、より広範囲なツアーや<SXSW>、<グラストンベリー・フェスティバル>への出演など、様々な経験をしたと思います。中でも印象に残っているのはどんなことだったか教えてもらえますか?
リアス・サウディ(以下、リアス) 確かに色々あったけど、正直ほとんど覚えてないな。覚えてないっていうのは良いサインだよ、だいたいが楽しい時間を過ごして泥酔した結果覚えてないんだからさ。でもずっとそれを続けるわけにもいかないから、今回のアルバムではきちんと記憶しておけるようにしたいね。
——ファット・ホワイト・ファミリーは激しいライヴをするバンドとして有名ですが、あなたたちにとってライヴとはどんなものなのでしょう。また、バンド結成からこれまでのライヴの中で最も記憶に残っている出来事やエピソードは?
リアス ツアーは楽しいけどしんどいしストレスも多いよ。ずっと続けていると体が持たないね。一緒に演奏したりするのは楽しいけどさ。それにバンド側としての記憶と観客側の受け取り方は違うこともままあるし……ある人は気にいるし、ある人は全然楽しくなかったと思うかもしれない、でもどっちにしてもやらなきゃならない。でもあんまりそれは気にならないし、一旦ツアーを始めるとある程度決まったルーティンが出来上がって、そんなに色々考えたりしなくなるから、それが結構好きだね。印象に残っているライヴはどれも地元であるロンドンでのライヴだよ。特にホームであるサウス・ロンドンのやつ。ブリクストンの「クイーンズ・ヘッド」でのライヴはオーディエンスも良かったし良いライヴだったよ。例によって詳しいことはあんまり覚えてないけど。
——デビュー作リリース以降のライヴの中で、新たに発見したインスピレーション源や、新たに気づいたことがあれば教えてください。
ソウル・アダムチェイスキー(以下、ソウル) 最近じゃ(ツアーを)続けるカギはペースダウンすることだって気づいたよ。
リアス そうそう、リラックスすることさ。最近は瞑想を始めたんだ、東洋のやつを色々ね。物事を覚えておくのにも役立つから、2、3年後はインタビューに答えるのもずっと楽になるはずさ。べろべろに酔っ払わなくても済むようになるんだ、酒やドラッグも瞑想も同じようなもんだよ。両方一緒にやるともっといいね、ははは(笑)。君もやってみなよ。
——ライヴを離れると、ショーン・レノンとの出会いも、恐らく前作リリース以降の印象的な出来事だったと思います。彼と知り合った経緯と、彼と過ごした日々のことについても教えてください。
リアス (ショーンとは)<SXSW>で会ったんだ。俺たちをディナーに連れて行ってくれて、ニューヨークに行ったときも面倒を見てくれたよ。
ソウル ショーンは俺たちがウータン・クランみたいだって言ってたね。
リアス そうそう、一緒にいるとウータン・クランを思い出すらしい。なぜかは知らないけど。
ソウル 俺たちの(ウータン・クランとの)共通点は同じくらい社会不適合者だってことかな。
リアス 人間としてどうしようもないところさ。
——元々ウータン・クランの音楽に共感していましたか?
リアス・ソウル (同時に)いや、してなかったね(笑)。
——また、新作に収録された“Satisfied”を制作することになったいきさつは?
リアス 俺たちも彼もミュージシャンだから、それが自然な成り行きだったよ。それが論理的で、面白いことだと思ったのさ。単純に、「家に行って曲を作ろう」って話になったんだよ、それがミュージシャンとして俺たちがやることだし、それで生計を立てているんだしね。彼と過ごすのはなかなか楽しいよ、彼は友達だからさ。
ソウル 俺たちは特に彼と一緒に過ごすことについて、(彼が誰であるか)考えたりはしてないよ。友達として以上に何か特別なことがあるわけじゃないし、他のどの友達と一緒にいるときとも同じさ。彼もただの人間さ(笑)。
Fat White Family – “Cream of the Young”
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