
(取材協力:リリックスピーカー)
Interview:一十三十一

一十三十一『Snowbank Social Club』 MV
——その時代へのあこがれを感じますが、実際にあこがれがあったのでしょうか? この世界観へのあこがれは、私の小さい時にまでさかのぼるもので。両親が北海道で「Big Sun」というトロピカルアーバンリゾートレストランをやっていたんです。それはまさに、鈴木英人さんが描かれた、山下達郎さんのアルバム『For You』のカバーアートの世界観を具現化したようなお店で、私が生まれた1978年から14年間やっていました。札幌の冬は気温がマイナスになるのですが、うちだけは常夏だったんです。お店の外にも中にもフェイクの巨大なヤシの木があって、スタッフみんな年柄年中アロハを着て。良い音楽がかかっておいしい食事ができる場所で、時は80年代、ピカピカの車に乗って、イケてる大人たちがオシャレして遊びにくる所謂デートスポットだったんです。


一十三十一 『Surfbank Social Club』MV
——80年代へのオマージュとしてバランスが絶妙だなと感じています。 『CITY DIVE』を作った時はシティポップなんていうジャンルがなく、かなり手探りなものでした。もっと遡ると、私の音楽は今思えばもっと実験的なものだったんです。色々な要素を好きなだけ盛り込んだような。なので、『CITY DIVE』は2002年のデビューから2012年までのその実験期を経て、色々試みてみた先のアルバムでした。北海道なのに常夏という、うちのトリッピーな「Big Sun」もリアル体験であり、私の原風景。なので、ウソすぎる印象ではないのだと思います。 ——昨年発売されたアルバム「Ecstasy」はどういったコンセプトで作られたのでしょうか。 「一十三十一に夏のアルバムを出してほしい」というのを周りから言われてましたし、私もそろそろ夏に出したいと思っていました。シティポップ界におけるTUBEみたいな立ち位置というか(笑)。そこで、今度は、最近やっていたコンセプチュアルな方法ではなく、プロデューサーを一人立てて、二人きりで限りなく自由に果てしなく気持ち良いものを作りたいなと。 それで、Dorianにお願いしたんです。Dorianと夏に出すということ以外はほとんど自由に考え、まずは「夏の大人の訳ありリゾート」っていうミステリアスなざっくりテーマで進めました。 それまでに描いてきたような湘南方面に代わって、今回の舞台は実際にありそうでなさそうであるかもみたいな、敢えてアブストラクトにしました。色々断片的なイメージはありますが、例えば「外国から見た熱海」みたいなイメージもあります。ラグジュアリーでエキゾチックで神秘的、そして訳ありリゾートっていう設定で(笑)。
一十三十一「Labyrinth ~風の街で~」MV
——心配になってしまいますが……。どれぐらいの期間、そうしていたのでしょう? 冬の間です。すごく快適で、余分なものが削ぎ落とされる感じなんです。最高な時間を楽しませてもらい感謝しています。 ——普段、どんな場所で歌詞を書いているのでしょうか? 家に、小さなボックスのようなスタジオがあるんです。家族には“ジェイル”って呼ばれています(笑)。 あまりに伝えたいメッセージや意味が出てきちゃうと、メロディやトラックとの距離が出てきてしまうから歌いながら作るんです。家族が寝た後も作れるように、そのスタジオの中で作ります。 歌詞自体はどこでも書きますね。ホテルのラウンジや大自然の中や旅先や移動中。書くところはいつも色々ですが、最終的にまとめるのはその“ジェイル”の中です。 ——また『Ecstasy』に戻りますが、日記から言葉を選ぶと仰っていましたが、昔の日記から選ぶこともありますか? 今回はそこまで昔のものは使っていないです。『The Memory Hotel』の後の日記からの言葉を選びました。 私の事がもとになっていたり、古典作品をモチーフにしたりと、内容は完全にフィクション。また、ちょうどエリックロメールを十数作品続けて観たばかりだったので、ロメールの世界観にも影響されました。例えば、“Galaterie”は髭おっさんの恍惚ソング。まさにロメール!一十三十一「Flash of Light」MV
——改めて、Dorian氏との制作過程はいかがでしたか? Dorianの楽曲は、様々な音色や楽器が、美しい庭のように数学的に哲学的に整然と配置されていて、宇宙の摂理の中に飛び込んで混ざり合う感じ。とてもスピリチュアルな体験でした。 例えば、“Swept Away”というラバーズの曲が届いた時、この世のものとは思えない美しさで怖いくらいで。その辺の普段のイメージだけじゃ到底追いつかないと思いました。 ——私は“Serpent Coaster”のコーラスを書かせてもらいましたが、その時に、この曲は「どん底な状況だけどそれを楽しんでいる気持ち」と言っていて。どん底でもそれを楽しんでいるというところが、“一十三十一”らしいと思いました。 その曲は気持ちが弱っている時の日記を参考にしているんですが、「落ち込みすぎて弱いという状況は、実は無敵で強い」という哲学に至った気持ちでした。谷底の川には全てのエネルギーが流れ込む境地というか。 例えば、コーヒー買ってそれを待っているという日常の中で、私の頭の中はこんなにぐるぐるジェットコースターのようだけど、すぐ隣にいるあなたは何も分からないでしょ? というのは、客観的にみるとフフフともはや笑える面白い状況かなって。 混沌としてますがいつものようにポジティブなメッセージです。リスナーと共有したいところはそういうところですね。手に届くファンタジーとして。一十三十一『Ecstasy』試聴ダイジェスト
EVENT INFORMATION
hitomitoi clubsetで緊急出演決定! エバーラスティングメロウ
2018.05.26(土) START 15:00 江ノ島OPPA-LA ¥3,000 hitomitoi clubset (Kashif,Dorian) やましゅた達郎 DJ: nutsman Tetsuya Suzuki(TOPGUN) strawberrysex okadada ましゅ gotez 詳細はこちらRELEASE INFORMATION
Ecstasy
2017.07.19(水) 一十三十一 Billboard Records HBRJ-1027 ¥2,600(+tax) [amazonjs asin="B072JG9YH5" locale="JP" title="ECSTASY"]【インタビュー】リリックラウンジVol.01、Seihoの描く歌詞の世界。物語の主題歌としてストーリーを紡ぐ?
一十三十一オフィシャルサイトリリックスピーカーオフィシャルサイト取材協力:歌詞を楽しむ次世代スピーカー リリックスピーカー interview&text by detroitbaby
Copyright (C) Qetic Inc. All rights reserved.