

Interview:テレサ・ウェイマン
——神戸公演が終わったばかりですが、いかがでしたか? すごく楽しかった。当然、ハリーほど私たちは黄色い歓声を受けることはできなかったけど(笑)、それでも楽しむことができました。それに、日本という国にいること自体がとても楽しくて。私たちが普段過ごしてるカリフォルニアとは全然違うし、みんなすごく礼儀正しくて優しく接してくれるのは大好きだし、興味深いものがたくさんあるので。 ——今回のハリー・スタイルズとの共演は意外だったんですが、どういう経緯があったんですか? ハリーから話をもらって、私たちもそうなんだけど、彼もものすごく幅広い音楽が好きみたいで、アメリカのツアーではカントリーの若い新人歌手を前座につれて回ってるみたいで。で、私たち自身も彼のアルバムをすごく好きだし、そもそもいい人そうな印象を持ってたんけど、実際会ってみてすごくいい人で。今回のライブは楽しんでるわ。 ——ではTT名義の初アルバムについてお聞きします。まずソロ作品を作ることになった必然性を聞かせてください。 そうね……バンドの中にいると、このバンドって一人の船頭がいてみんなが着いていくって訳ではなく、4人それぞれが自分の個性を反映させてるバンドなので、どうしても長い間やってくるとバンドのアルバムだけではどうしても出せない自分の部分がある、少なくとも私はそういう風に感じてしまった。それで2009年から自分でレコーディングができるように、例えばビートとかサンプルとかをどうやってコンピューターを使ってプログラミングするかを自分で少しずつ学んで行って、身につけて行って、ツアーとか移動の時とか、一人でいる時にいろんなものをちょくちょくやって行ったものが今回のアルバムにつながって行った感じかな。 ——アルバムを聴いて結構驚いたのがボーカルが前面に出ているプロダクションだなと感じたんです。それはボーカルもしくは声や歌詞を聴かせたいという思いがあったんでしょうか。 ええ。一つはやはりポップの世界から自分が学んだこととして、いろんな暗喩とか隠喩に自分が伝えたい気持ちや感情を覆い隠すのではなく、すごくわかりやすく共感しやすい歌詞を今作では書けたということがあると思う。あとは、自分のことをずっとシンガーだと思っていなかったんだけど、でもバンドで歌っているわけだから、シンガーとして自分がどれだけ成長しているか?ってところにしっかりフォーカスしたいなという風に今回は思ったのね。と、言いつつも歌だけではなく、すべての楽器を自分で演奏して、音楽的に可能なあらゆる角度からの表現を今回のアルバムで出したかったからというのはある。 ——個人的な印象としては不安や不穏を感じると同時にリラックスできるアルバムだったんですね。それはもしかしたらテレサが言葉だけではなく、内面をサウンドでも表現してるせいなのかなと。音選びや構築に心を注いだからなのかなと思ったんです。 すごくファジーな形で組み立てるのが好きなんだけど、明確なピースもありながらそれを他の要素とーー布の繊維の織りのように織り合わせていくっていうようなやり方が好きなのね。その不安っていう印象は良く分からないけど、自分としてはアンビエントミュージックのような雰囲気を感じてもらいたいっていうのはすごくあるわ。 ——なるほど。アルバムタイトルが『LoveLaws』で、レーベルが〈LoveLeaks〉という、この対比が面白いなと。法律と漏洩みたいな(笑)、そこに何か意図はあるんですか? ははは。実はアルバムをはじめは『LoveLeaks』にしようかと思って。いわゆるパナマ文書じゃないけど、私の内面をリークしているというくらい、さらけ出しているという部分を感じたので、「あ、いいかな」と思ったんだけど、結果的に『LoveLaws』にしたのは、より重みがあるというか。当然、アルバムの中にはロマンスについての歌もあるけど、人間としてやはり人と接する時に善意がいかに大事かってこととか、お互いについてちゃんと愛を持って接することが必要だとか、やはり我々人間がこの宇宙で存在して、愛っていうものがすごく大きな一つの法則としてあるわけだから、みんながそこへ立ち返る場所だなっていうところで『LoveLaws』がいいかなと思って、タイトルにしたの。 ——なるほど。いろんな形の愛を表現されてると思うんですが、バンド以上にパーソナルな印象を受けたんです。それは愛についての内容が増えたことが関係しているんでしょうか。 ええ。やっぱりなんらかの形で自分の内面をさらけ出すと自分の弱さを見せることにつながると思う。「え、これってどういうことなんだろう?」「私は何を感じているんだろう?」というのが分からないことがあって、分からないことで感じる自分の弱い部分というのが多分出てるんだと思う。でもこのアルバムができたことによって、そういったことが自分の中で消化できたというか、落とし込むことができて理解することができたということが言えると思う。ま、特に恋愛の気持ちを結構さらけ出すってことは自分の弱みを見せることだと思うんだけど、さっき言われた不安というものはそういうところなのかな?と。この先この気持ちはどうなるんだろう?っていうのが分からない、分かっていれば強い気持ちになれるけれども、やっぱり先が分からないのは強い気持ちになれない、それが弱さっていうものにつながっていくのかなと思う。

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