





Interview:WK Interact
——よろしくお願いします。 (作業用のバンの後部に座って)僕のオフィスへようこそ。 ——いつもこうして車で移動しているのですか? アメリカではもっと大きな車だよ。日本は道が狭いしね。ギャラもそんなにもらってないから、寝泊まりもここでしているよ。昨日は女の子を5人を呼んだんだ。冗談だよ(笑) ——(笑)。今回なぜNOISEMAKERのジャケットを手掛けようと思ったんですか? 彼らの音楽を聴いて、ミュージックビデオを観てかき立てられたんだ。すごく衝動的に「やりたい」と思った。だから、ただジャケットのために絵を描いただけで終わりにはしたくなくて、こうして実際に日本に来て、彼らに会って、ここに描いてる。お金を払ってでもでも来たかったんだ。まあ、そこは払ってないけど、それくらいの気持ちの表れが車をホテルにしてるってことさ。してないけどね(笑)。 ——わかりました(笑)。あなたの作品が渋谷の街のど真ん中にあるのは、素晴らしいですね。 渋谷は面白いよね。昼は多くの人がここで働き、夜はみんながあちこちでパーティをしている。白と黒がはっきりしたミニマルな街。そういう意味では僕のモノクロの作品とはコネクションがあるよね。でも、渋谷はそのミニマルななかに、いろんなカルチャーがうごめいてるだろ? 最高にクレイジーな街だよね。そこも、この絵とマッチしているように思う。ここに描いた女の子は、情報が溢れるソーシャルメディア、すなわちスマートフォンなどを使うのではなく、レコーディングシステムを持ち歩いていろんな音を録音して集めることで生きている。“ムーブ・オン”のなかでは、みんながアーティスト。そこにある情熱を感じてるんだ。 ——12メートル四方の壁に画像を投影するやり方で、かなり細かいところまで描かれていますが、既存の処理ソフトでここまでできるものなんですか? それはね、独学で研究した企業秘密(笑)。一つ言えることは、コンピューターはほとんど使ってないってことだね。 ——今回はモノクロの世界のなかで、NOISEMAKERのバンド名は赤色ですが、意味はあるのですか? 結果的にだけど日本っぽいよね。でも日本の旗は素晴らしい。あの赤は、小さな島国でありながら、そこにあるすさまじいエネルギーを表しているように僕は感じるんだ。実際に素晴らしいカルチャーが日本にはたくさんある。 ——時代を遡ると、ストリートのアートはイリーガルという視点や、アカデミックなアーティストからの目線との戦いでもありました。今はどうなんですか? どんどん大きくなってる。今はもはや“ストリートアーティスト”という言葉自体がないくらいに。ほんとうに素晴らしいことだよね。でも日本はそうやって描ける場所が少なすぎると思うんだ。壁はたくさんあるのに、広告のポスターとかそんなのばかり。昔は日本こそが前を走ってるようにも思ってたんだけど、今は遅れてる。今回僕が描いたこの壁は、来年には取り壊されるって聞いたけど、これがNOISEMAKERや見てくれた人の心に残って、何かいい影響を及ぼすようになればいいね。 ——そう思います。 そうやって自信を持って言えるくらい、いい仕事をさせてもらった。もしかしたら、日本の人は謙虚だから、僕に“やってもらった”と思ってるかもしれないけど、まったくその逆。だってさ、空港に僕を待っている人たちがいて、旗を振って迎えてくれるのなんて日本だけ。僕のアートは内に籠るものではなくコネクションだから、その時点ですでに作品の制作は始まってる。そして、NOISEMAKERとこの作品に触れてくれた人たちがいて完成するんだ。
Interview:NOISEMAKER
——まずは『RARA』の音楽的なことについて、話しを伺いたいと思います。あくまでもロックバンド然とした人力のパワフルなサウンドに比重を置きながら、エレクトロニックやさまざまなロック以外からの音楽的要素も取り入れられて、アップデートされていることに刺激を受けました。 HIDE オールドなロックのサウンドと、そこと対極にあるエレクトロや今のポップの要素をどう混ぜ合わせるか。そこで、例えばレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against The Machine)がもしエレクトロを採り入れたら? みたいなが発想のもとにあるんで、そう感じられたんだと思います。バンドらしさ、そこにある生々しさが失われたものにはしたくないんです。 ——そこのバランス感覚が絶妙。 AG バンドのメンバー以外の作家やプロデューサーが悪いとは思わないけど、そこに委ねすぎちゃってるのか、世界中のいろんな音楽がコピーに聞こえるんですよね。僕らは、HIDEがプロデューサーとして立って、4人で徹底的に作り上げてるんです。NOISEMAKERの音とは何なのか。そういうアプローチが伝わればいいなって。 ——例えば、エレクトロでダンサブルな曲でも、スマートには叩かずにパワードラムを捻じ込んでる。そこに覚える高揚感がたまらなくて。 UTA ドラムパターン自体は全体的にすごくシンプルで難しいことはしてないんですけど、そのなかで、おっしゃるようにごり押しでパワーを入れた部分も多いです。だからそこを感じ取ってもらえたのは嬉しいですね。 ——そして、そういったパワフルで生々しい側面もありながら、実に美しいサウンドスケープも見える。その緩急はさすがだと思いました。 HIDE 基本的に根っこにあるものは変わらないんですけど、そこにプラスアルファ、何ができるか。ヘビーなバンドはどんどんヘビーになっていくし、エレクトロを採り入れても同じような感覚でカテゴライズされるようなものが激化していく時代の流れのなかで、“To Live Is”で言うと、もろにU2を意識したクリーンサウンドを入れてるんです。そういうどこか懐かしいテイストを加えるとか、いろんなことを自然にやれてるのは強味だと思います。 ——『RARA』というタイトルには「誰しもが特別な人」という意味があるということですが、まさにそのメッセージを自らが体現した、価値のある作品だと思います。 AG 音もそうだし曲もそうだしアートワークも、自分たちでとことん考え抜いてやってる意志を、本気を伝えたいんです。NOISEMAKERにしかできないことが詰まっていると思います。 ——今回はアートワークをWK Interactに依頼したわけですが、それはなぜですか? AG 僕が10代の頃、WKの絵に衝撃を受けて、彼の作品集を買ったことがきっかけで、どんどんストリートアートにのめり込んでいったんです。だからNOISEMAKERを始めた時からずっと、いつかWKにジャケットの絵を描いてもらうことを夢見ながら、自分で描いたり、DOTS COLLECTIVEというプロジェクトを立ち上げて個展をやったりしてきました。その個展で僕らのことを気に入ってくれた方がWKと知り合いで、そこから繋がることができて、想いが伝わったんです。 ——WKとは、どのようにやりとりしてこの絵ができたんですか? AG 音源とリリックとアルバムのテーマを伝えて、あとはおまかせしました。この女性が機械でいろんな音を録音して、自分のなかで欠けてしまった何かを取り戻していく。そこで重要なのが僕らのコンサート、というイメージらしくて。めちゃくちゃ嬉しいです。 HIDE すごく細かいところまで描かれてますよね。きっとまだ僕らにもわからない隠されたメッセージがあると思うし、まだ完成したばかりだから、もっとこのジャケットを楽しみたい。あとは、プロジェクターを使って絵を拡大して壁に投影するやり方とかは、僕らが大きな場所に描くことがあったら、と考えると、また一つ大きな勉強になりました。 ——愚問かもしれませんがあらためて、なぜそこまでアートワークにこだわるのでしょう。 AG 自分たちのルーツがそこにあるんです。90年代とか2000年代、リンキン・パーク(Linkin Park)やリンプ・ビズキット(Limp Bizkit)、インキュバス(Incubus)、ランシド(Rancid)、挙げればたくさんのバンドがいるんですけど、アートと音が密接で、メンバーが個展を開いてるバンドもいる。そういうストリートのアートと音楽の関係性が具現化された表現を、リアルに食らってきた世代ですから。 ——バンド名や曲からジャケ写が頭に浮かぶ。その逆も然り。そこで、おっしゃったようなバンドの文脈を辿っても、今の国内シーンを見渡しても、今作の音に対してこのアートワークの組み合わせって、私の知識だと近いものが見当たらない。でも不思議と腑に落ちるんです。それは、過去に対するリスペクトと、新たなものを生もうとする意欲の賜物なのかなと。 HIDE ありがとうございます。当時タギングとかスプレーアート、流行ってたじゃないですか。そこと音楽が確実にリンクしてた。僕らはそこに受けた衝撃を大切に、変わらずにやってきた。その結果なのかなと。 AG 実際にスプレーで描く、筆を落とすって、やっぱりカッコいいじゃないですか。



Text by TAISHI IWAMI
Photo by 横井明彦
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RARA ツアー
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