

Interview:グザヴィエ・ルグラン&トーマス・ジオリア
——今回、DVを題材に選んだのはどうしてでしょう。 グザヴィエ・ルグラン(以下、ルグラン) まず、悲劇が描きたいと思ったんです。そして、家族についての物語を描きたかった。自分を守ってくれるはずの家族が、突如として危険なものになりうるということを。今や夫婦間の暴力は現代病みたいなものですからね。 ——とてもリアルな描写でしたが、DVについて撮影前に下調べをされたのでしょうか。 ルグラン 様々な被害者会に参加して、被害者の方から話を訊いたりしました。ある被害者の女性はこの映画を観て、「私が経験した恐怖や、私が考えていたことがすべて映画に描かれていた。まるで私の物語みたい」と驚いていました。 ——役者の演技も真に迫っていました。監督は俳優としても活動されていますが、監督として役者に演出する時に気をつけていることはありますか。 ルグラン なるべく俳優の立場に立つようにしています。上から目線の演出ではなく、俳優の演技を見守る。俳優がする演技を尊重して、演出が前に出過ぎないように心掛けています。 ——トーマス君は、本作がスクリーン・デビューになりました。出演してみた感想は? トーマス・ジオリア(以下、ジオリア) 監督と演技指導のコーチと一緒に、撮影に入る1ヶ月前から役を作り込んだり、演技の練習をしたりしました。すべてのシーンにおいて監督から助言があって、うまくいかなかったり、問題が生まれたりしたら、すぐに監督が相談にのってくれたので安心して演技に集中することができました。 ——お父さんに迫られたり、精神的にプレッシャーをかけられるシーンが多かったと思いますが、特に精神的にキツかったシーンはありますか? ジオリア いっぱいあります(笑)。まずは父親と車の中で会話するシーンです。怒っている父親と向き合う、とてもエモーショナルなシーンでした。いちばん大変だったのは、クライッマックスシーンです。ここは俳優として感情表現が試される難しいシーンだったので頑張って演じました。 ——監督は、そういう大変なシーンを演出する際、気をつけたことはありますか。 ルグラン まず、リハーサルでは技術的な面を伝えました。どの瞬間に、どれくらい動くか、細かいところまでリハーサルで決めました。そして、リハーサルを何度もしたうえで、本番では長回しで撮影したんです。細かい動きを身体で覚えてから撮影したことで、役者は感情的には自然に演じることができたんです。


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