August 26, 2017, 11:00 am
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August 28, 2017, 10:00 am
ラム酒のブランドとして名高い「バカルディ 」が、音楽とアートのカルチャー・カクテル・プロジェクト<BACARDÍ“Over The Border” >を2017年春にローンチしました。
海外でも多くの音楽イベントを開催しているバカルディが、日本で新たにスタートしたプロジェクトは一体どのようなものなのでしょうか?
イベント概要から、東京・大阪で開催されたローンチパーティ、そして名古屋・札幌・福岡で開催されるサテライトパーティまで、その魅力を一挙ご紹介します!
<BACARDÍ“Over The Border”>とは
19世紀から20世紀、世界が大きく移り変わる激動の時代においてもフロンティアスピリットを忘れることなく挑戦し続けてきたバカルディ。
本プロジェクトは、バカルディと同じく常に挑戦し続け、常識に捉われない創作活動を行なっている音楽やアートのアーティストとのコラボレーション、さらにはその活動のサポートを通じて、バカルディのブランドメッセージである「Over The Border」を伝えることを目的としています。
体験型イベントとオリジナルメディアの2つを軸としており、体験型イベントでは、世界を舞台に活躍するクリエイターの実験性に溢れたアート作品の数々が展示。さらに「既存の概念を打ち破る」表現を行ってきた音楽アーティストが国内外から招聘され、個性豊かなパフォーマンスを披露。もちろん、バーカウンターでは本格的なバカルディカクテルが楽しめます。
オリジナルメディアでは、アーティストたちの活動をサポートする独自のプラットフォームメディアとして情報を発信しており、刺激的な作品の紹介はもちろんのこと、クリエイターの創作活動の裏側や、彼らの生の声からクリエイティビティの着想に触れることもできます。
東京・大阪開催でのローンチパーティには豪華出演者!
東京公演は6月29日(木)、東京都港区の印刷工場をリノベーションしたイベント・スペース「TABLOID」にて、大阪公演は7月1日(土)、大阪市住之江区にある名村造船所跡地のアート複合スペース「クリエイティブセンター大阪」にて開催されました。
当日のコンセプトは「音楽フェスティバル×アートミュージアム」。R領域の巨大なオブジェやMIRRORBOWLERによる光のインスタレーションなど、数々のアート作品で会場内は埋め尽くされ、海外からはビートメイカーのTOKiMONSTA(トキモンスタ)、初来日のSOFI TUKKER(ソフィー・タッカー)とAnna Straker(アンナ・ストレイカー)、文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞した和田永など、自由な表現に挑むアーティストたちがパフォーマンスを披露。両日ともに大盛況のうちに幕を閉じました。
TOKiMONSTA (feat. Yuna) - Don't Call Me (Official Video)
SOFI TUKKER - F*ck They (Official Video) [Ultra Music]
Anna Straker – Serious
アフタームービーではTOKiMONSTAの楽曲“Steal My Attention”に合わせ、当日の会場内の模様が収められているだけでなく、出演者たちの生の声もたっぷり。アーティストたちが「Over The Border=既存の概念を超える」ことについて、様々な意見を交錯させています。
BACARDÍ “Over The Border” Launch Party Tokyo 2017[After Movie]
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『覚醒』でのメジャー・デビューから20年。そんな節目とも言うべき2017年に、GRAPEVINE が通算15作目となるニュー・アルバム『ROADSIDE PROPHET 』を完成させた。
20年の深い年輪とこれからの未来に思いを馳せる歌詞と、勇壮に鳴り響くホーン・セクションの祝祭的なサウンドがストレートに心を打つリード・シングル“Arma”。20周年にうってつけの華々しい幕開けから始まる全11曲だが、そこに過剰な気負いや余計な感傷は一切ない。彼らはこれまでと何ら変わらないまま飄々と、しかし真摯に音楽と向き合い、ただ純粋にまだ見ぬ世界を求めて旅を続けている。
そこで今回のインタビューでは、特に音楽的な側面にフォーカスを当てつつ、デビュー作『覚醒』から最新作『ROADSIDE PROPHET』に至るまで、20年に渡るバンドの歴史を振り返ってもらった。
Interview:GRAPEVINE
——今年はバンドの20周年ということで、5月に対バンツアー<GRUESOME TWOSOME>がありました。ユニコーン、Dr.StrangeLove(長田進 / 根岸孝旨 / あらきゆうこ)、clammbon、STRAIGHTENER、OGRE YOU ASSHOLE、NICO touches the Walls、麗蘭、UNISON SQUARE GARDENと、先輩・後輩入り混じって、いろんなバンドと対バンしてきましたが、このツアーはいかがでしたか?
田中和将(以下、田中) とても楽しかったですよ。「20周年記念ライブ」って銘打ったワンマン・ライブをやらずに、いろいろなゲストを呼んで対バン・ライブを組んだんですけど、我々の演奏も最後までダレなかったし、結果的にはより「20周年記念」感が出せたんじゃないかな。20年の間で関わってきた人たちと一緒にステージに立つことができて、改めて自分たちのキャリアを実感できました。
——また、先日は<FUJI ROCK FESTIVAL ‘17>(以下、フジロック)にも参加していました。<フジロック>でのライブは3回目ですが、今回のステージはいかがでしたか?
田中 過去に出た中でも一番良かったんじゃないですかね。僕らが始まってすぐに土砂降りになって雨宿りのために屋内に入ってきた人たちも「良いやん」と思ってくれたみたい。<フジロック>のお客さんはライブに慣れてる方も多いと思うんで、ああいう反応は嬉しかったですね。
——今年6月にアルバムに先行してリリースしたシングル“Arma”は20周年記念にも相応しい、ストレートな歌詞とサウンドになっています。この曲を作っている時には、「20周年」はどれくらい意識していたのですか?
田中 アルバムに向けてレコーディングを始めて、その中からシングルに選んだ曲なんですけど、その時点ではまったくそういう意識はないですね。ただ歌詞を書く際には自分たちの20年のキャリアのことはだいぶ意識しました。
——この曲では、ホーン・セクションが印象的に使われています。これまでのGRAPEVINEには、ほとんどホーン・セクションを使った曲が無かったと思うんですが、この曲でホーンを使うというアイデアはどこから生まれたものですか?
田中 キーボードやってくれてる高野さんが「ホーンでも入れてみたらいいんじゃないか」と言い出して。高野さんがシンセでフレーズを作って、最終的に生に差し替えました。セクションとしてホーンを取り入れたのは初めてなんですよね。一本とかで入れたことはあるんですけど。
GRAPEVINE - Arma(Music Video)
——ジャム・セッションで曲を作るようになってから、ここ最近のアルバムはずっとセッションから生まれた曲と、亀井さん作曲の曲が半々くらいのバランスとなっていましたが、今回の新作『ROADSIDE PROPHET』はバンドが作曲クレジットになっている曲は2曲(“これは水です”“レアリスム婦人”)だけで、あとは田中さんと亀井さんの作曲になっています。今回こういうバランスになった理由を教えてください。
亀井亨(以下、亀井) 珍しくプリプロの段階で曲がたくさんあったから、っていうだけですね(笑)。レコーディングの時に曲がない場合に、じゃあジャム・セッションで曲を作ろうかって話になることが多い。
田中 亀井くんがたくさん曲を持ってきてくれたんで、やることがたくさんあるわけですよ。大体そういう作業の隙間でジャム・セッションをするんですけど、今回はそういう機会もあまりなかったですね。
——やはりジャム・セッションから曲を作っていく方が時間はかかるんでしょうか?
亀井 ジャム・セッションをするだけでも、二時間くらい回しっぱなしでやりますからね。そこからチョイスして、構成して……ってなるんで、時間はかかりますね。
亀井亨
——田中さんが作曲した楽曲は、『真昼のストレンジランド』以来だと思います。前作のタイミングで、田中さんは「家で曲を作らなくなった」というようなことを仰っていましたが、今回また作曲をし始めたのはなぜでしょうか?
田中 僕、あんまり宅録とか向いてないタイプなんですよ。「自分色」があんまり楽しくなくて、どんどん冷めてくるというか、「これ、何がええの?」っていうのが分からなくなったりするタイプで。だから、あまりバンドに持っていかないっていうだけなんです。今回は持ってかなあかんかなっていうプレッシャーを感じたんで、持っていったっていうだけの話ですね(笑)。
——今回のアルバムは、高野寛さんがプロデュースに4曲参加した前作から、またセルフ・プロデュースに戻っての製作となっています。ただ、これまでのセルフ・プロデュース作がかなり密度の濃い作品になっていたのに対し、新作は良い意味で力みがなく、オープンなサウンドになっているように感じました。
田中 まぁ、曲によりけりかなぁ。でも、雰囲気はオープンになってきているとは思いますね。ここ数年の作品もそうですけど、作り込み方の種類も変わってきていると思います。曲によったり、その時によったり、ケースバイケースなんで、一概に言うのは難しいですけど、すごくリラックスしてやれているのは間違いないです。
——例えば、“Arma”はどういう風に作り込んでいったんですか?
田中 亀井くんが持ってきた曲なんですけど、結果として“Arma”に関してはすごくシンプルにやろうと。別に原点回帰とかそういう意識は一切ないですけど、90年代のそれこそオアシスみたいに、最初から最後までギミック無しでやるのが潔いんじゃないかっていう発想から始まりました。
西川弘剛(以下、西川) でも、そこまでの間でかなり苦労はしてますね。いきなりそんな選択をすることはまずないんで、その選択肢に至るまでに相当苦労してます。
亀井 どうしても、何かやりたくなる性質なんで。でも、何年かに一回とか何曲かに一回くらい、これはストレートにやろうみたいなのが来ますね。
田中 そう、たまにあるよね(笑)。
西川 こんな構成の曲って、多分今までやったことないくらいなんですよ。ここまで単純な構成で、2コーラスで終わりみたいなのって。相当珍しいです。
田中 これをシングルにするんであれば、歌詞に20周年感みたいなものを匂わせたらお客さんも共感してくれるんじゃないかという気持ちもありつつ(笑)。かなり意識して書いたっていう感じですね。
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August 31, 2017, 11:00 am
2017年は、アメリカのインディ・シーンにとって、間違いなく一つの節目として記憶される年になるだろう。何しろ、年明けからダーティ・プロジェクターズ、フリート・フォクシーズ、グリズリー・ベアと、2000年代後半以降のシーンを牽引してきた大物バンドがこぞってニュー・アルバムを発表。
繋がりの深い隣国カナダからもブロークン・ソーシャル・シーン、アーケイド・ファイアという二大巨頭の新作が届けられ、9月早々にはザ・ナショナルのアルバムも控えている。そんな錚々たるトップランナー達の中でも、とりわけ復活を祝福され、新作の発表を待ち望まれてきたバンド。それがジェームス・マーフィー率いるLCDサウンドシステム だ。
復活前のラスト・アルバムとなった2010年発表の3rd『ディス・イズ・ハプニング』と、それに伴うツアーの千秋楽を締めくくった2011年4月のマディソン・スクエア・ガーデンでのラスト・ライブから6年強。昨年2016年に再結成を発表し、同年の<コーチェラ・フェスティバル>でヘッドライナーとして劇的なカムバックを果たしてからちょうど1年。
ツアーやフェス出演に忙しく世界各地を飛び回る中でレコーディングされた通算4作目の最新作『アメリカン・ドリーム』は、両A面の形式をとった先行シングル“コール・ザ・ポリス/アメリカン・ドリーム”のリリース段階から大きな話題を呼んできた。チャート成績においても、全米初登場10位だった前作を大きく上回る記録を残すことはまず間違いないだろう。
では、なぜLCDサウンドシステムはこれほどまでに多くの音楽ファンに活動再開を熱望される、唯一無二の伝説的な存在となっているのか。その理由を知るためには、ジェームス・マーフィーが2000年代を通して音楽シーンに残してきた大いなる功績を辿る必要がある。
ジェームス・マーフィーの大いなる功績を辿る
〈DFA〉がもたらした影響
当初、ジェームス・マーフィーという名前は、バンドのフロントマンとしてではなく、プロデューサー兼レーベル主宰者という裏方として、音楽シーンに浮上してきた。トリップホップのパイオニアであるアンクルのメンバーだったティム・ゴールズワージーと共に、プロデューサー・チーム「The DFA」としての活動を始めたのは1999年。その発展形として、彼らは2001年にニューヨークを拠点とするレーベル〈DFAレコーズ〉を立ち上げる。
それらの名前を一躍世に知らしめたのは、2000年代前半のクロスオーバー・シーンを象徴する名曲、ラプチャーの“ハウス・オブ・ジェラス・ラヴァーズ”だろう。それまで一介のパンク・バンドに過ぎなかったラプチャーが〈DFA〉の洗礼を受けてハウスとダンス・カルチャーに邂逅したこの楽曲は、ロックとダンス・ミュージックが交配しつつあった当時のNYアンダーグラウンドの刺激的なムードを見事に捉え、世界中のDJがこぞって自身のセットに加えるフロア・アンセムに。
これ以降、人力の生音とエレクトロニック・プロダクションが融合したサウンドは、「ダンス・パンク」「ポストパンク・リヴァイヴァル」とも呼ばれる一大潮流となっていった。
SPINHouse L!VE: The Rapture "House of Jealous Lovers"
デビュー曲“ルージング・マイ・エッジ”
〈DFA〉周辺への世界的な注目の高まりに合わせて、その首謀者であるジェームス・マーフィーと、彼によるプロジェクト・LCDサウンドシステムの名前は一気に知名度を獲得していく。2002年にリリースされたデビュー曲“ルージング・マイ・エッジ”は、“ハウス・オブ・ジェラス・ラヴァーズ”にも比肩するフロア・アンセムに。
その最たる特徴は、カンからダフトパンクまで、ロック、ヒップホップ、エレクトロニック・ミュージック等々、ありとあらゆるアンダーグラウンド・ミュージックの歴史的瞬間に立ち会ったのは俺だと自慢しつつ、同時に「今の俺はエッジを失いつつある」と自虐を口にするリリックだ。当時すでに30歳という決して若くない年齢だった自らの内に渦巻く、虚栄心と嫉妬と不安と焦り。ユーモラスでウィットに富み、同時に感動的で胸を打つ言葉のセンスは、デビュー当時から現在に至るまで、LCDサウンドシステムの大きな魅力の一つとなっている。
LCD Soundsystem - Losing My Edge
その後、LCDサウンドシステムは、アルバムを出すごとに必ず批評メディアの年間ベスト・アルバム上位に名前を連ねる、インディ・シーンを代表する大物バンドとなっていく。それまでにリリースしたシングル曲を集めたディスクとアルバムとしての流れを意識したディスクの二枚組となった2005年のデビュー・アルバム『LCDサウンドシステム』。
『ピッチフォーク』の「2000年代のトップ・トラック」第二位に選ばれた名曲“オール・マイ・フレンズ”を収録し、グラミー賞のベスト・エレクトロニック/ダンス・アルバム部門にノミネートされた2007年の二作目『サウンド・オブ・シルヴァー』。
そして、活動停止発表後にリリースした2010年の三作目『ディス・イズ・ハプニング』。その尖鋭的なセンスに全く衰えを感じさせないどころか、作を追うごとに研ぎ澄まされていく最中での解散だっただけに、彼らの復活を望む声は今日まで後を絶たなかったのだ。
LCD Soundsystem - All My Friends
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2017年9月16日(土)、17日(日)、18日(月・祝)に東京・TOKYO ODAIBA ULTRA PARKにて開催される<ULTRA JAPAN 2017 >。
The Chainsmokers(ザ・チェインスモーカーズ)、Alesso(アレッソ)、Steve Angello(スティーヴ・アンジェロ)、Nicky Romero(ニッキー・ロメロ)、Hardwell(ハードウェル)ら世界トップクラスのDJだけではなく、今年から「LIVE STAGE」も新設。Underworld(アンダーワールド)、Pendulum(ペンデュラム)、Empire of the Sun(エンパイア・オブ・ザ・サン)といった屈指のダンス・アクトたちに加え、国内からもMIYAVI、ちゃんみな、水曜日のカンパネラ、Crossfaithが出演し、その見所は盛りだくさん!
さらに、追加出演者として、世界からも注目されているヒップホップアーティストのKOHH、オーバーグラウンド、アンダーグラウンド問わず話題を集める日本人ラッパーのSALU、そのファッション性でも注目の男女デュオのゆるふわギャング、小室哲哉と浅倉大介の新プロジェクトPandoraが発表。国内外の個性溢れる超豪華アーティスト総勢98組が出揃いました。
そんな<ULTRA JAPAN 2017>開催にあたり、MIYAVI 、水曜日のカンパネラ・コムアイ 、ちゃんみな からコメント動画が到着!
コムアイとちゃんみなのコメント動画は、なんとQetic独占! お見逃しなく♪
【ULTRA JAPAN】MIYAVI コメント
【ULTRA JAPAN】 水曜日のカンパネラ コムアイ コメント
【ULTRA JAPAN】ちゃんみな コメント
<ULTRA JAPAN 2017>への意気込みが伝わってきますね! 個性豊かなラインナップで、さらにパワーアップした<ULTRA JAPAN 2017>。ぜひ、足を運んでみてください♪
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September 6, 2017, 4:00 pm
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September 6, 2017, 6:00 pm
イギリス北部のウェストヨークシャーで結成されたジャーマン3兄弟によるスリー・ピース・バンド、ザ・クリブス が、通算7作目となる最新作『24-7 Rock Star Shit 』を完成させた。
彼らのかねてからの憧れの人物だったスティーヴ・アルビニをプロデューサーに迎えたこのアルバムは、たとえるなら彼ら流のパンク・ロック・レコード。クリブス印のポップなメロディを随所に忍ばせつつも、全編にはいつになく荒々しくむき出しのギター・サウンドが広がっている。
つまり本作は、超低予算で制作された04年のデビュー作『The Cribs』から13年の間に人気バンドとなった彼らが、もう一度自分たちのルーツを見つめ、商業的な成功を気にすることなく、伸び伸びと好きなことを追究した作品なのだ。
とはいえ本作は、ジョニー・マーをメンバーに迎えて自身最大のヒットを記録した09年の『Ignore the Ignorant』と同様、キャリア最高位となる全英チャートの8位を記録している。本作に込められた思いや制作中のエピソードを、3人にメール・インタビューで聞いた。
Interview:ザ・クリブス
——何でも、今作のもとになった楽曲のうち4曲は元カーズのリック・オケイセックを迎えた前作『For All My Sisters』と同時期に制作が進められ、一時はそれらをダブル・アルバムとしてリリースする構想があったそうですね?
ゲイリー いつの間にか、話が少し事実とは違ってきているみたいだね……。僕らがスティーヴ・アルビニと4曲を作ったのは2011年12月のことで、ちょうど『In The Belly Of The Brazen Bull』をレコーディングしていた時期だったんだ。で、そのうちの1曲“Chi-Town”はアルバムに収録されることになって、残りの曲は後のために取っておいた。
僕らはスティーヴと仕事ができたことが本当に嬉しくて、「将来、彼と一緒にフル・アルバムを完成させたい。」と思ったんだよ。だから、ダブル・アルバムを作ると構想したことは一度もなかった。でも、BBCのインタビューで「2枚のレコードを同時進行で制作してる」っていう話をしたものだから、そこからダブル・アルバムっていう誤解が生まれたんだと思う。
——なるほど、そうだったんですか。前作『For All My Sisters』はポップな楽曲が詰まった作品だったのに対して、今回の『24-7 Rock Star Shit』にはあなたたちのパンク・バンドとしての魅力が詰まった作品になっていますね。
ゲイリー 確かに、『For All My Sisters』はバンドのポップな側面に焦点を当てたアルバムだったね。一方で今作は、曲作りもレコーディングも短期間で終わらせた。それぞれの曲を覚えるのがやっとな期間で、それが柔軟で自由な感じを生むのに必要だと思ったんだ。商業的な成功を目指さないレコードを作ることで得られる解放感が、僕たちにとっては心地よかったんだ。
The Cribs - Summer of Chances
——そもそもあなたたちは、デビュー当時からポップなメロディだけではなく、たとえば〈SSTレコード〉のようなUSパンク/ハードコア的な感覚も持ち合わせていたバンドだったと思います。パンク/ハードコアにのめり込んだきっかけはどんなものだったんですか?
ゲイリー パンク・ロックが僕たちの原点であることは、いつまでも変わらない。僕たちはイングランド北部の小さな町で暮らす鬱屈した少年だった。そして、(プレイヤーに)電源を入れて大音量で曲を流して叫びながら、ただエネルギーを発散させていた。そういった音楽を手に入れられるコミュニティーの存在もまた、僕たちにとってはとても大事なものだった。
ファン向けの雑誌が好きでよく読んでいたし、〈キル・ロック・スターズ〉や〈サブ・ポップ〉の「シングルズ・クラブ」(レーベルから直接アーティストのシングルが届くサービス)やメーリング・リストにも登録していた――。そうすることで、外の世界や趣味が合うと思える人々と繋がっているような気持ちになれたんだ。現代からすればおかしな話に聞こえるかもしれないけど、インターネットが普及する以前のパンク・キッズにとって、それは本当に大事なことだった。もちろん、その一方で、僕たちはポップミュージックも大好きだったよ。80年代のポップミュージックはすごく甘ったるくてよくできていたから、印象的なフレーズが頭の中にしっかりと刻まれた。だから、90年半ばに10代になった僕たちが激しいパンク・ロックをやるようになっても、美しいメロディに対する愛着はつねに持っていたんだ。ラモーンズを愛してやまない理由もそこだと思う。3人とも子供の頃からビートルズやクイーンが好きで、同時にたくさんのガールズグループも好きだったんだよ。
——では、パンク/ハードコアの中でも大切なアーティストや作品があれば、その作品との思い出も合わせて教えてもらえると嬉しいです。また、そうした音楽のどんなところに惹かれたんでしょう?(アティテュードなど、音楽的なことでなくても構いません)。
ゲイリー ハギー・ベアは、昔も今も一番好きなバンドだね。「環境に適応できない者たちが強い絆で結ばれたときに、どういうサウンドが奏でられるか?」ということを完璧に体現している。彼女たちは他にはない理想を共有し、男性が支配する当時の特異な音楽シーン(ブリット・ポップじゃなくてブリット・プープ=まぬけ、だね!)に束縛されてなるものかという決意を持って、ミュージシャンの才能に対する旧来の意見や、「いい」「正しい」と認められているものごとに背を向けていた。
結果として、彼女たちの音楽は実験的で、荒々しく、とんでもなく重厚で、当時のイギリスでは他の何よりも遙かにエキサイティングだった。彼らの決断と、高潔さ、そして自分たちの手で作り上げる手法は、僕に多大な影響をもたらしたよ。
——では、音楽以外であなたたちがパンクを感じるものや瞬間というと?
ロス パンク・ロックとは、何らかの活動というよりは、むしろ心の持ちようなんじゃないかな。たとえば、手首を怪我しながら、アルバム1枚のレコーディングでドラムをすべて叩いてみせるのは、ほとんどの人がパンク・ロック的だと思うだろう。これはまさに、4枚目のアルバムのレコーディング中に僕が経験したことだよ(笑)。それから、昔ゲイリーがツアー中に敗血症(細菌やウィルスが血液中に入り、臓器不全などの全身症状を起こす病気)になって入院しなくてはいけなくなったことがある。そのとき彼は、医者の指示に逆らって病院を抜け出して、ツアーをやり遂げた。これだってパンク・ロックだと考える人もいるだろう。ライアンだって、手を怪我したのにそれでもライブを最後まで続けたことがあるんだ。
ライアン うん、僕もロスと同じ意見だね。自分からパンク・ロックだと主張するのはなかなか気恥ずかしいもので、パンクというのは「心のあり方」だし、狙ってできるものじゃない。それでも興味深いと思ってもらえるようなちょっとした逸話があるとすれば、セックス・ピストルズの『Never Mind The Bollocks(勝手にしやがれ!!)』の30周年記念ライブで、サポート・バンドに僕たちが唯一選ばれたことや、ジョニー・サンダースのマネージャーから、かつて彼がステージ上で来ていた古いシャツを贈られたことが挙げられる。そのとき、「イギリスでこのシャツを受け取るにふさわしいのは、きみたちだけだ」と言ってもらえたんだ! これってかなりすごいことだよね……!
——今回はスティーヴ・アルビニのスタジオに滞在して制作が進められました。彼がかかわった作品の中で好きなものは? また、一緒に作業を進めていく中で、彼にどんな魅力を感じましたか?
ライアン スティーヴとの仕事は本当に最高だったし、僕たちのようなバンドにとってはまさにこれ以上ない選択だった。作業はすごく簡潔で、本当に楽しみながらやれたんだ。若い頃から、僕たちはスティーヴ・アルビニが手がけたレコードのサウンドがとても気に入っていたから、彼と一緒にやってみたいとずっと思っていた。子供の頃、ニルヴァーナの『イン・ユーテロ』を初めて耳にしたとき、あのアルバムの音響はこれまで聴いてきた中で最高のものだと思ったよ。
今回のレコーディングは、基本的にはリハーサルでやるのと同じように全員で準備をして、それからスティーヴがマイクをセッティングした。そしてすべてを生演奏の形でレコーディングするっていう感じで、とにかくあっという間だったんだ。別のトラックを重ねたりはしなかったし、スティーヴはすぐに彼のサウンドを作り上げるから、スタジオでの休憩時間もほとんどなかった。こういうやり方だと、自分たちのエネルギーを強く保ったまま思い通りのレコーディングができるから、すごくよかったね。全員がスタジオに居合わせていることも、多くの楽曲を生み出す上で有効的だった。
スティーヴとは本当に仲良くやれたよ。彼はとても愉快で気の利いた人物で、一緒に熱中できることがたくさんあるし、共通の友人も何人かいる。すばらしい体験だった。
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September 7, 2017, 11:00 am
強力な新譜が目白押しの2017年秋、あれこれもチェックしなくちゃと目移りしている音楽リスナーは多いと思うが、「聴かなきゃリスト」に忘れずに追加してほしいのがミュートマス の新作『プレイ・デッド 』だ。
2008年の<サマーソニック>で初来日を果たしてからは4年連続で毎年夏フェス出演や単独公演を敢行。圧倒的なパフォーマンスで最強のライブ・アクトとしてここ日本でも根強い人気を誇りつつも、2011年の単独公演を最後に来日はしばらくご無沙汰。本稿では彼らのヒストリーを振り返りつつ、バンドの魅力が爆発した新作『プレイ・デッド』を紹介したい。
ミュートマス新作『プレイ・デッド』までの歴史
デビュー・アルバム『ミュートマス』リリース
バンドが結成されたのは2003年。それまで活動していたミクスチャー・バンド=アーススーツが解散し、より自由なスタイルの音楽をやりたいと考えていたポール・ミーニー(Vo)がダレン・キング(Dr)と実験的にスタートしたプロジェクトだった。
ほどなくして初代ギタリストのグレッグ・ヒルが合流ししばらくは3人組として活動していたが、2006年のファースト・アルバム『ミュートマス』のリリース前にアーススーツの元メンバーだったロイ・ミッチェル・カルデナス(Ba)が加入。初期4人のメンバーが固まったが、あくまで「ミュートマス」はポールとダレン2人が作った音楽で、グレッグとロイはその演奏役として参加するというスタンスであった。
その後バンドは米〈ワーナー〉との配給契約を結び、『ミュートマス』は2007年に再リリース。逆再生なのにきちんと演奏して見えるという“Typical”のビデオは低予算作品ながらそのアイディアが絶賛され、グラミー賞のMV部門にノミネートされるほどの評判となる。またこの曲はサビの伸び伸びとしたヴォーカルが歌唱力をアピールしやすいことから、アメリカの人気オーディション番組の本戦で候補者が歌ったことでも注目を集めた。それほど“Typical”はキャッチーで、シンプルながら完成されたポップ・ソングとしての魅力があった。
Mutemath - Typical (Video)
またこの年、バンドは映画『トランスフォーマー』のサウンドトラックに参加。1987年に放送されたオリジナル・アニメ版の“トランスフォーマーズ・テーマ”をミュートマス流に料理して提供している。
初来日となった2008年の<サマーソニック>はベースのロイが都合により欠席、代役を立ててのステージだったものの、カオティックなようで必ず美しく着地する高い演奏力と目を見張る圧倒的なパフォーマンスに、その場にいた誰もが一気に彼らの虜になった。私自身、ライブ終了後、隣にいた友人に「信じられないくらい良かったよね?」と呟いてあとは放心していた記憶がある。
2作目『アーミスティス』をリリースし初の単独公演
翌年8月バンドは2作目『アーミスティス』をリリース。メンバー4人全員が曲作りに参加するようになったことでプレイヤー/ソングライターとしての個々の個性が激しく衝突した結果、バンドは精神的に解散寸前まで追い込まれたというが、バンドとしてのグルーヴの骨太さは前作より格段にアップした。
シングル“Spotlight”は映画『トワイライト』シリーズのサウンドトラック『トワイライト~初恋~』にも収録され、ティーン女子を中心に一大ムーヴメントとなった同映画のファンにもアピール。アルバムのリリース直後には2年連続で<サマーソニック>に出演し、東京ではマリン・ステージの2番手として登場。スタジアムでも見劣りしないダイナミックなパフォーマンスで観客を沸かせた。また11月には初の単独来日公演も実現。このツアーはバンドにとっても非常に満足度の高いものになったそうで、彼らは後日東京での“Spotlight”を思い出深いシーンとしてYouTubeで公開している。
Mutemath - Spotlight [Live]
メンバーの脱退を経てリリースされた『オッド・ソウル』
2011年、彼らに転機が訪れる。『アーミスティス』のツアー終了後、グレッグが脱退。バンドは新ギタリストを迎えず、ロイがベースとギターを兼任する形で新作の制作を続けることになるが、これがサウンドの方向性に影響した。
ヒップホップにハマった後、父親のレコード・コレクションからポリスなどのクラシック・ロックを知り同時にレディオヘッドなど革新的な現代のロックにのめり込んでいったポール。
教会の音楽隊に参加しながらジャズを知り、またUSインディ・ロック・シーンにも目を向けていたダレン。
ミュートマスの曲作りの核であったこの2人のセンスに、レッド・ツェッペリンなどのハード・ロックからミーターズやスライ&ザ・ファミリー・ストーンといったファンクまで、あらゆるクラシック・ロックに造詣の深いロイの持ち味が大幅に加わった。
こうして完成したのがサード・アルバム『オッド・ソウル』である。
ギター・ドリヴンな『オッド・ソウル』の曲をライブで演奏するにはやはりギタリストの存在が必須であったため、2011年の夏に新メンバーのトッド・ガマーマンが加入。実は彼がバンドに誘われたのは<サマーソニック>出演の直前だったため、それに間に合わせるため短期間で猛練習したという。
かくして新体制の顔ぶれが揃い、ミュートマスは再び4人組として歩み出した。同年11月には再び日本ツアーが実現。完売満員の渋谷AX公演は彼らが拠点とするニューオーリンズ・マナーに則り、バンドが客席後方の扉から登場して会場をマーチングしながらステージに上がるという演出でオーディエンスを驚かせた一幕もあった。
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September 7, 2017, 6:00 pm
かつて横浜市戸塚区にあった遊園地『横浜ドリームランド』の近くにある郊外団地=ドリームハイツ出身の先輩&後輩で結成され、07年のデビュー以降様々な音楽を飲み込んだサウンドとラップ・スタイルで人気を集めてきたサイプレス上野とロベルト吉野 。彼らがなんと結成17年目にして、メジャーに移籍。メジャー・デビューEP『大海賊 』を完成させた。
ロベルト吉野 の一時活動休止を経て、15年にアルバム『コンドル』で復活した彼らは、サイプレス上野 の『フリースタイルダンジョン』への出演なども追い風に人気を拡大。
そしてこのメジャー・デビュー作では、華やかさを増しつつも決して肩ひじ張ることなく、相変わらず彼ららしい音楽性を広げている。タイトルの『大海賊』とは、これまで同様、横浜ドリームランドに実在したアトラクションの名前から取られたもの。今まさに新たな大海原に漕ぎ出す彼らの現在について、作品の制作過程について、サイプレス上野氏に聞いた。
Interview:サイプレス上野
——ロベルト吉野さんが復帰して、15年に『コンドル』をリリースして以降の活動の広がりについては、どんな風に感じていましたか? 特に上野さんは『フリースタイルダンジョン』のモンスターとしても活躍することになったと思います。
それはやっぱり大きかったですね。でも、途中からはむしろ「嫌だなぁ」っていう感じで。
——「嫌だなぁ」ですか(笑)。
もちろん、状況が変わっていくのは自分でもよく分かって、露出が多くなって色んな人に話しかけられるようになったり、ガキンチョたちに街で顔を指されたり、「ちょっと写真いいですか?」と言われるようになったりしたんですよ。
ただ、負けると色んなことを言われるわけで、「ああ、こういう世界なんだな。」「(番組が)こういうレベルになってきてるんだな」と感じてました。途中からは全然気にしないようにしてはいたけど、やっぱり戦いに行くというのは、あまりいいものではなかったですよね。「新木場行くのだりいな」って。
——難しいことをしても、すべての視聴者がそれを分かってくれるわけではないですしね。
結局、何か言ってくるやつはプロ野球の試合を観て「何やってんだよ!」「ちゃんとやれよ!」って言うやつと一緒なんで。俺も言うから(笑)。でも、やってるやつが「じゃあお前もやってみろよ!」というのは一番言っちゃいけないことだし。そもそも自分たちはブームの中心人物だとは思っていなかったし、ずっとやってきたことの延長戦上でそうなっただけだったんですよ。
漢くんたちとも「全部勝たなきゃいけねえのかよ? 負けるときは負けるんだから仕方ないでしょ」と言っていて。それに、自分の場合は別に『フリースタイルダンジョン』に比重をかけていたわけではないから、それ用に練習することもなければ、サイファー(複数人が輪になって即興でラップをすること)も行かなかったんです。
ただ、地方に行って、番組が放送されていない場所でも声をかけられたりするようになったのは大きかったですよね。だからまぁ、今回のメジャー・デビューも、自分たちの中では、何度か話をもらったりする中で「次の段階に行こう」ということですね。
そのときに、顔が売れたという意味では関係があったかもしれない。でも、基本的にフリースタイルと俺たちが作る音楽とは関係ないんですよね。実際、今回の作品も「バトルMCを集めて戦いを歌います」みたいな曲は1曲も入ってないし、俺はああいうの、最低だと思ってるんで(笑)。
KEN(KEN THE 390)なんて、審査員として番組に出てるのにバトル・シーンのアーティストを集めて曲を出してて、「俺たちよりも先にお前がやるなよ!」って(笑)。まぁ、あいつは戦友だし、これは本人にも言ってることなんですけどね。そしたら「まぁまぁ」って言ってたけど、俺はそういうことはやれないんですよ。
——作る音楽は変わらないということですね。フリースタイルのブームがあって、ヒップホップへの敷居が下がった今だからこそ、音楽的にヒップホップの楽しさが伝わるチャンスでもありますし。
間違いないですね。これはミスター小林さん(漢 a.k.a. GAMIが代表を務める鎖グループのマネージャー)にも言われたんですけど、「お前らはヒップホップのままポップ・アイコンになれるんだから、遠慮せずに行けるとこまで行っちゃえよ。」「あんなバトルするやつなんて絶対いないんだから」って。
『ダンジョン』のメンバーだったら、たとえば俺たちの今回の“ホラガイHOOK”も自分を卑下する曲だけど、Creepy Nutsとは角度が違って、あいつらは直接的に「俺たちはイケてませんでした」って言うけど、俺たちは「そこまでイケてなかったわけではないしな」という感じだし(笑)。一方で、DOTAちゃん(DOTAMA)は真面目じゃないですか。CHICO(CHICO CARLITO)は新人類だし、T-Pablowは不良の一番かっこいい形。それぞれ違うから、そこの強度がみんな一気に上がると、また面白いんじゃないかな、と思うんですよね。
——吉野さんは前作『コンドル』の“THE LAST”で、上野さんが「活動はまだまだ(続けるよな?)」と振ったら「うん……まぁね」と濁していましたけど、あれは冗談だったわけですよね(笑)。2人でより大きなところでやっていく、と。
いや、あれ、マジだったんじゃないですか?(笑)。あいつはそういうやつなんで。でも、あいつも状況が変わってきたことは分かってるはずですよ。
——では、結成17年目のメジャー・デビュー作となる今回の『大海賊』の収録曲についてそれぞれ聞かせてください。まず1曲目の“メリゴ”はSKY-HIさんを迎えて、フィリー・ソウル~ディスコ的な雰囲気のキラー・チューンの上で「これからも自分たちらしくやっていく」という2人の決意が表明された曲になっていますね。
このトラックに関しては、俺たちは去年星野源ちゃんの“SUN”を使ってライブをやっていて、本人も「超面白いじゃん」と言ってくれて。俺は自分のDJセットでもかけたりしていく中で「こういう感じの曲いいよな」と思ってたんで、今回岩崎太整くんと話をする中で、「自然に耳に入ってきて、なんかいい曲かかってるねという感じにしたい」と話しながら、その上でオリジナルなものにするためにいい塩梅を探っていった感じでした。
——SKY-HIさんの客演はどんな風に決まったんですか?
何人か候補が上がってくる中で、「日高を歌で使うのはウケるなぁ」って(笑)。
——SKY-HIはもともと、AAAの日高さんがラップを本格的にやりたくてはじめた名義だったにもかかわらず……(笑)。
そうそう(笑)。あいつとはもう10年以上の友達で、俺があいつのチ○ポを触ってる映像とかも残ってるぐらいなんですよ。でも、あいつにも新しいファンがついてるんで、参加が決まったときに「あいつとキス出来てチ○ポ触れるのは俺だけだ」って書いたら、中学生ぐらいのファンに「えっ?」って言われたりもして(笑)。
レコーディングは日高も日高で「ここはこういう節回しがいい」と何度も録り直してくれて、どんどん変わっていくのが面白かったですね。メリーゴーランドって、その場をずっと回ってるだけじゃないですか? でも、それでも楽しい人はいるわけだし、それでもいいんじゃないか、ということですよね。
【サ上とロ吉】サイプレス上野とロベルト吉野「メリゴ feat. SKY-HI」MUSIC VIDEO
——それはまさに、「これからも肩ひじ張らずに自分たちらしくやっていく」ということですね。次の“WALK THIS WAY(アセ・ツラ・キツイスメル)”にも、“最コア(=最高にコア/最高の最高)”をはじめ過去の曲に出てきたモチーフがちりばめられています。
俺たちの“よっしゃっしゃす〆”という曲に《汗・ツラ・キツいスメル/お送りしてるWALK THIS WAY》というリリックがあって、それがタイトルになっていて。これはライブ中、俺が吉野に「俺たちのスタイルで言ってやれ!」と言ったら、吉野が「汗、ツラ、キツいスメル」って言い出して笑っちゃったのが最初だったんですよ。
「それってまさに俺たちのことだな」って(笑)。「ツラ(面)」というのは本当に『WONDER WHEEL』を出した10年ぐらい前から言ってることですね。吉野と豊田に行ったときに、あいつが何にも刺されてないのにハチに刺されたような顔になってて、それを「ファイナル・フェイス(人として最後の顔)」と言い出したのが始まりでした(笑)。ツラが面白いというのは、「ヒップホップ第五の要素」ってみんな言うし。
——ははははは。
だから今回、最初はもっと女子に嫌われるような内容にしようと思ってましたね。俺らはとんねるずの“一気!”とかが好きだから、ああいう感じにしようと思って。というのも、今古きよき時代の音楽がリバイバルしている中でも、あの辺りは埋もれたまんまだろうなって思うんですよ。そういうところをすくわないとな、って(笑)。実際、ああいうお笑いは日本では消えてるわけじゃないですか。今は色んなTVの規制もあるし、『ダウンタウンのごっつええ感じ』を観ていた人間からすると、松ちゃんですら文化人みたいになっていて「あれっ?」って。そんな時代に、とんねるずの視聴率が下がってもああいうことをやっちゃう感じを遠めに見ながら、あの全盛の頃を俺たちも体験したい、という感じで作っていきました。
それをトラックを作ってくれたYasterizeにお願いしたら、最初は超ノリノリだったんですけど、途中から「何を言ってるのかよくわからないです。キツい。」って言われて(笑)。それで途中から「アツい感じにするのもいいんじゃないですか?」という話になって、「そういえばそうだな」と。それでだんだん高校球児が見えはじめてきて、甲子園のテーマ・ソングとして使われたら嬉しいな、と思って作っていきました。
まぁ、長年高校野球に関わるテレビを観ている俺からしたら、絶対に使われるわけないんですけどね(笑)。でも今、球児でヒップホップを聴いてるやつってめちゃくちゃ多くて、この間も自分の母校の横浜高校(上野さんは松坂大輔と同級生で、当時応援団長)の試合を観に行ったら、次に3年になる万波(中正)ってやつに、「プロになったら曲を作ってほしい」とお願いされて、「お前絶対忘れんなよ!」って(笑)。
次の“上サイン”は、自分がやってるハンドサインの曲を作ろうと思ってたら、一時期MU-STARSの藤原(大輔)くんから、1日1曲ぐらいすさまじいペースでトラックが送られてくる時期があったんですよ。その中でちょうどハマりそうな曲が来たから作った曲。リリックは“メリゴ”とも繋がってて、「世の中にはしなくていいこともたくさんあるけど、別にそれをやってもいいんじゃないか?」というのが裏メッセージですね。
次ページ サイプレス上野「2人しかいねえのに、『大海賊』ってウケるよな。」って。Copyright (C) Qetic Inc. All rights reserved.
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September 8, 2017, 11:00 am
日本有数の工業都市、川崎。その中でも南部に位置する川崎区出身の若きラッパー&DJたちで構成されるヒップホップ・クルー「BAD HOP 」が、9月6日(水)に2ndアルバム『Mobb Life 』をリリースした。
BAD HOPのメンバーは、ともに<高校生RAP選手権>の王者であり、2WINというラップユニットを組む双子のT-PablowとYZERRを中心に、Tiji Jojo、Benjazzy、Yellow Pato、G-k.i.d、Vingo、Bark、DJ KENTA。これまで無料でのミックステープやCDという形でゲリラ的に日本のヘッズたちの注目を浴びてきた彼らが、満を持してドロップする初の全国流通作だ。
今回はBAD HOPの実質的リーダーであり、楽曲のクオリティ・コントロールも担うYZERRに、クルーを代表してインタビュー。生い立ちから、HIPHOPとの出会い、自身が描くラッパー像、そしてBAD HOPの未来までたっぷりと語ってくれた。
Interview:BAD HOP・YZERR
YZERR:写真上段・右から二番目
すべてのタイミングが合わさって完成した『Mobb Life』
——今回インタビューするにあたって、川崎に行ってきました。これまでライブを観に行ったり、20代のときにアルバイトの現場仕事で行ったりしたことはあったのですが、みなさんが住んでいるエリアまでは行ったことがなくて。少し行っただけで何がわかるわけではないのですが…みなさんと同じ景色を見ながら、『Mobb Life』を聴きたいなと思って。
ホントですか? すいません、ありがとうございます。
——9月6日発売の2ndアルバム『Mobb Life』ですが、制作はいつぐらいから始まったのですか?
3ヵ月前ぐらいですね。
——去年は無料での作品(『BAD HOP 1DAY』『BAD HOP ALL DAY』)や、ライブ(『IRREGULAR BOUND』)がありましたが、それは最初から計画していたんですか?
最初からですね。まずはとにかく名を売るというのが一番の理由でしたが、正直……人からお金を取れるクオリティのものをつくれている自信がなかった。あと、たとえばJ-POPの方々もフリーでライブしたり、全国を回ったりを最初やると思うので、そういう感覚でみんなに知ってもらって、広まっていけばいいなという気持ちもありました。
——フリーで着実に支持を集めて、SNSも効果的に使ってバズらせていく。堅実かつ、昨今の風潮にもマッチした理想的な方法だと思いました。
全部のタイミングが良かったと思います。フリーでやった中の“Life Style”っていう曲がYouTubeでけっこうヒットしたり、双子のT-Pablowが出演した『フリースタイルダンジョン』でラップが注目され始めたりとか。すべてのタイミングが合わさって、今回のアルバムに繋がったんだと思います。
BAD HOP / Life Style - T-Pablow, YZERR (Prod by Gold Digga)
——『Mobb Life』というタイトルは誰がつけたのですか?
みんなで10何個、案を出してから決めた感じです。これまでは『BAD HOP〜』が多かったんですが、今回はそれを変えてみました。
——その理由は?
『Mobb Life』がすごくしっくりきたんですよね。仲間たちとMobb(=群れる)……自分たちらしくていいなと。
BAD HOP / Mobb Life feat. YZERR, Benjazzy & T-Pablow (Official Video)
——(アルバム)ジャケットが意表を突くシンプルさでカッコ良かったです。
これはMOB酒で、メンバーにこのタトゥーが入ってるんですよ。
——たしかT-PablowさんがTwitterにUPしていたのを見ました。本作は初の全国流通の作品になりますが、意識として変わった点はありますか?
めちゃくちゃ変わりました。やっぱこれまでは良くも悪くも「限定」してたんですよ。それに比べて今回はしっかり良いものをつくって、みんなに納得してもらいたいっていう気持ちをメンバー全員が持ってたし、音楽的にもキチンと細かいところまで気を配ってつくりました。
——制作はどのような流れで進めてるんですか?
みんなでトピックから出します。それが何十個と集まる中から、それは無いわ……それは良いわ……って詰めていった後にトラックを選びます。
——BAD HOPの魅力のひとつに、曲のトピックの面白さがあると思っていて。例えば“Black Bandana”から“Gucci Scarf”の流れとかは、B-BOYの象徴的なアイテムのひとつであるバンダナの巻き方の変化が、みなさんの成長の軌跡とリンクしているような感じで。
そういうイメージだったので、伝わってたならうれしいです。『BAD HOP 1DAY』とかも、話の筋は最初から最後まで繋がっていて。コンセプトがしっかり見えないアルバムは嫌いなんですよね。単純にいい曲がいっぱいある…みたいなのはミックステープでいいし、アルバムってなると全体の流れが大事だと思うので。
BAD HOP / Gucci Scarf feat. Vingo, Bark & G-K.I.D (Official Video)
——リリックもみなさんで持ち寄って相談しますか?
そうですね。あとこういうメロディが良いとか、メンバー同士で「これ歌ってみ?」みたいな感じでやったりもします。
——USのHIPHOPもよく聴かれると思うのですが、今回の制作中に聴いていた曲はありますか?
似過ぎると嫌なので、制作中は聴かないようにしてます。でも、日本で一番向こうのHIPHOPに詳しい自信が……いや、少し盛りましたけど、でも何本かの指に入れるぐらい、若手も含めてUSのHIPHOPを聴いてると思います。
——音の乗り方、声の乗せ方など、日本をメインで聴いてないんだろうな……とは思ってました。好きなラッパーは誰ですか?
Lil Pumpとか、Smokepurppとか……いっぱいいますね。たださっきも言ったように聴き過ぎるとまんまになっちゃうので、頭に入れるだけ入れた後に、まったく聴かない期間をつくります。あとは一曲丸々ではなく、2小節だけを延々とループしたりとか。
次ページ ラップの原体験、<高校生RAP選手権>……受け継がれる「王道感」
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September 13, 2017, 6:00 pm
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September 14, 2017, 4:00 pm
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September 17, 2017, 5:00 pm
2000年代以降、ダンス・シーンを牽引してきた世界的なビッグ・アクト、ロイクソップ。ディスコ・サウンドを今様にアップデートした、ニュー・ディスコやスペース・ディスコと呼ばれる潮流を形作ったリンドストロームとトッド・テリエ。
エレクトロニック・シーンの最新潮流でもあるフューチャーベースのパイオニアであり、近年はアメリカのメインストリーム・アクトからも引っ張りだことなっている、カシミア・キャットやリド。
時代ごとにエレクトロニック・ミュージックの最先端を行くサウンドを生み出してきたそれらのプロデューサーが、実はみんな同じ国の出身だということはあまり知られていない。彼らを送り出した国、それはスカンディナビア半島の西端に位置する北欧のノルウェーだ。
ここに紹介するアナ・オブ・ザ・ノース のフロントウーマン、アナ・ロッテルードもノルウェー出身。近年、同国ではエレクトロニック・ミュージックのみならず、ポップ・ミュージックの躍進も目立ち、特に若い女性シンガーの活躍が著しい。
そこには、すでに本国でチャートを席巻しているアストリッドSや、英米の音楽メディアや早耳リスナーから熱い視線を送られるシグリッドらがいる。
そして、このアナ・オブ・ザ・ノースこそが、現行のエレクトロニック・シーンとポップ・ミュージックが交差する地点に立つ、次世代のクロスオーヴァー型ポップ・アイコンなのである。
その新人らしからぬ存在感は、アルバム・デビュー前にも関わらず彼らが実現させてきた、錚々たる気鋭アーティストやファッション・ブランドとのコラボレーションを見ていけば、よりよく理解できるだろう。
“スウェイ”をザ・チェインスモーカーズがリミックス
グラフィック・デザインを学ぶためにノルウェーからオーストラリアのメルボルンに移ってきたアナ・ロッテルードがニュージーランド出身のプロデューサー、ブレイディ・ダニエル-スミスと出会い、アナ・オブ・ザ・ノースが本格的に活動をスタートしたのは2014年のこと。
同年6月にデビュー・シングル“スウェイ”をリリースするやいなや、すぐに現ポップ・シーンを代表する超大物からのコンタクトが舞い込んでくる。その大物とは、今年リリースしたデビュー・アルバム『メモリーズ…ドゥー・ノット・オープン』が全米一位の大ヒットを記録したエレクトロニック・デュオ、ザ・チェインスモーカーズだ。
Sway - Anna of the North
当時、ザ・チェインスモーカーズはシングル“#セルフィー”をスマッシュ・ヒットさせたばかりの新人で、ザ・キラーズ、フェニックス、エリー・ゴールディングといったアーティストのリミックス等でも名を馳せ始めた時期。“スウェイ”を聴いた彼らの方から直々に連絡があり、“スウェイ”のリミックスを依頼することになったのだという。
すっかりEDMシーンからポップスのメインストリームへと進出し、現エレクトロニック・シーン随一の大物となった今とは全く状況が違うとはいえ、それでもすでに気鋭の存在だったザ・チェインスモーカーズが、シングルを一枚出したばかりの超新人に直にコンタクトを取り、コラボをオファーするのは珍しい。結果として、“スウェイ”をザ・チェインスモーカーズがリミックスしたことは、アナ・オブ・ザ・ノースにとって世界的な知名度を飛躍的に向上させる最初のきっかけとなった。
Anna of the North - Sway (The Chainsmokers Remix)
同郷ノルウェーのカイゴに抜擢!
その後2015から2016年にかけて、シングル3枚をコンスタントにリリースし、地元ノルウェーでのライブ活動を積み重ねていった結果、またしてもEDMシーンを牽引する大物プロデューサーからオファーを受けることに。それが同郷ノルウェー出身のカイゴだった。彼は現EDMシーンで最大の影響力を誇るプロデューサーの一人であり、2016年の<リオ・オリンピック閉会式>でパフォーマンスを行ったことも記憶に新しい。
そのカイゴがアナ・オブ・ザ・ノースにオファーしたのは、彼のヨーロッパ・ツアーのサポート。それまで小さなクラブでのライブばかり行っていたアナ・オブ・ザ・ノースだが、ここでいきなり5000人規模の会場で演奏することになり、パフォーマンスへの自信を培ったのだという。
このように、アナ・オブ・ザ・ノースがアルバム・デビュー前に世界的な耳目を集めた背景には、EDMシーンを代表する大物二組とのコラボレーションがあった。しかも、その二組ともが派手なビルド&ドロップ中心のEDMから一歩を踏み出し、新たなトレンドを生み出したアクトだというのも面白い。
カイゴはダンスホールやレゲトン由来のビートとスティールパンやマリンバの音色を使ったトロピカル・ハウスの先駆者。ザ・チェインスモーカーズはデビュー・アルバムにおいて、コールドプレイとのコラボをはじめ、より歌重視でメロウ&スムースなポストEDM的アプローチを展開している。トレンドの先を読むことに長けた両アクトがいまだキャリアの浅いアナ・オブ・ザ・ノースをフックアップした事実は、彼らの将来的なポテンシャルの高さを何よりも証明している。
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September 19, 2017, 3:00 pm
「夏が終わってもまだまだフェスを楽しみたい!」そんなフェス好き&音楽好きに向けて、ZIMA が家にいながらフェス気分を味わえる「バーチャルフェスキャンペーン 」を開催!
10-FEET 、大沢伸一(MONDO GROSSO) 、夜の本気ダンス 、ハナエ の4組の人気アーティスト達が「自身が主催する“夢のフェス”」をテーマにプレイリストを制作。
さらに、ページ後半には、大沢伸一(MONDO GROSSO)、ハナエがそれぞれのプレイリストについて語った独占インタビューも公開!
また、各アーティストのグッズが当たる豪華抽選も合わせて実施中。バーチャルフェス限定レアグッズもあるので今すぐ応募しよう!
バーチャルフェスキャンペーン
VIRTUAL FES PLAYLIST
10FEET × ZIMA オリジナルタンブラーが100名様に当たる!!
応募はこちら!
MONDO GROSSO オリジナルTシャツが100名様に当たる!!
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夜の本気ダンス オフィシャルのれんタオルが100名様に当たる!!
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ハナエ オフィシャル扇子が100名様に当たる!!
応募はこちら!
※応募はお一人様1回に限ります。応募されるオリジナルグッズをお一つお選び下さい。
続く後半は、バーチャルフェスキャンペーン独占インタビュー!
大沢伸一(MONDO GROSSO)、ハナエそれぞれに気になる選曲のイメージや理想のフェスなどプレイリストについて語っていただきました。
次ページ 大沢伸一(MONDO GROSSO)、ハナエが理想のフェスを語る!Copyright (C) Qetic Inc. All rights reserved.
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September 20, 2017, 4:00 pm
今年8月に発表されたフォーブス誌によるDJの長者番付で5年連続1位を獲得し、<SUMMER SONIC 2017>のヘッドライナーも務めたカルヴィン・ハリスが、最新作『Funk Wav Bounces Vol.1』ではEDMを離れ、よりゆったりしたテンポで生音を生かしたファンクを鳴らしたのにも顕著な通り、ここ数年EDMシーンで活躍してきたアーティストたちは新たなサウンドに向かいつつある。
このムードは先日開催されたばかりの日本最大級のダンス・ミュージックの祭典<ULTRA JAPAN>のラインナップにも顕著。今年は会場に「LIVE STAGE」が登場し、ここにはアンダーワールドやポーター・ロビンソンなどに加えて、バンド形態のエンパイア・オブ・ザ・サンやCROSSFAITH、ギタリストのMIYAVI、SALUやKOHHらヒップホップ勢、そして水曜日のカンパネラなどが集結して、会場に多彩な音楽性を加えていた。
そう、EDMはブーム全盛期のビッグルーム・ハウス的なサウンドを後にして、より様々な音楽と結びつく時代――ポストEDMの時代に突入している。そうした時代を代表するユニットの一組として知られるシアトル出身のエレクトロニック・デュオ、オデッザ(Odesza) が、通算3作目となる最新作『A Moment Apart 』を完成させた。
ODESZA - Line Of Sight (feat. WYNNE & Mansionair)
アーティストとして/レーベル・オーナーとして若手シーンをけん引する存在。
オデッザは米シアトルのハリソン・ミルズとクレイトン・ナイトによるプロデューサー・デュオ。自主制作でリリー・アレンの“22”やローカル・ネイティヴスの“Airplanes”、アリシア・キーズ“No One”やヤー・ヤー・ヤーズ“Cheated Hearts”などを使ったサンプリング主体の12年作『Summer's Gone』で注目を集めると、AdidasやGoProとのタイアップを経て、<コーチェラ・フェスティバル>などに出演。
続く14年の2作目『In Return』では1作目で多用していたサンプリングに代わって外部ヴォーカリストを迎えて楽曲のスケール感を増すと、<エレクトリック・フォレスト>など多くのフェスでヘッドライナーを担当した。この9月からは2万人以上を収容するLAのステイプルズ・センターや、1万8千人規模のNYバークレイズ・センター公演などを含む過去最大規模のワールド・ツアーもはじまっている。
ODESZA - How Did I Get Here
ODESZA - All We Need (feat. Shy Girls)
同時に、彼らはスクリレックスの〈OWSLA〉などとともにDTM系の若手を擁して人気を博す新進気鋭のレーベル〈フォーリン・ファミリー・コレクティヴ〉のオーナーも務め、ここではルイス・フルトンやスウェーデンのカスボ、ジャイ・ウルフ、チェット・ポーターらをフックアップ。
中でもアメリカを中心に国籍/人種/性別の異なる幅広いメンバーが集うインターネット・コレクティヴ=ムーヴィング・キャッスルの初期メンバーとして知られるジャイ・ウルフは、16年の“Indian Summer”がSoundcloudだけで1000万回再生を超えるヒット曲になるなど注目を集めている。
つまり、アーティスト活動/レーベル運営の双方で次世代のエレクトロ・シーンを引っ張っているのが、このオデッザなのだ。
Jai Wolf - Indian Summer
Kasbo - World Away
次ページ 彼らの音楽の最大の特徴は?最新作『A Moment Apart』の魅力を紐解く
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September 20, 2017, 6:00 pm
8月19日(土)、20日(日)に東京・大阪で開催された<SUMMER SONIC 2017 >(以下、サマソニ)。
Calvin Harris(カルヴィン・ハリス)、The Black Eyed Peas(ブラック・アイド・ピーズ)、Foo Fighters(フー・ファイターズ)、Kasabian(カサビアン)といった豪華アーティストが来日し、圧倒的なパフォーマンスを披露。BABYMETALやSuchmos、欅坂46といった多彩な国内アーティストも出演し、今年も大盛況!
そんな<SUMMER SONIC 2017>1日目、東京会場に出演する豪華来日アーティストに現地でインタビューを実施♪
インタビュアーは、DATSでボーカル&ギターを、yahyelでシンセ&コーラスを担当する。アーティスト・MONJOE さん。両バンドにて作曲と編曲を手掛けるだけでなく、CM音楽制作やプロデュース・ワークも行うなど、多方面で幅広く活動しています。18日(金)に開催された<SONICMANIA>のSPACE ODD STAGEにも出演。海外在住経験もあり英語が堪能なため、今回のインタビューも英語にて行われました!
DATS - Mobile (Official Music Video)
yahyel - Rude (MV)
今回お届けするのは、Communions(コミュニオンズ) へのインタビュー!
2014年に結成され、地元デンマーク・コペンハーゲンで活動を開始。当時17歳から21歳と言う若さと、「ストーン・ローゼズ×ザ・リバティーンズ」と評されたサウンドで瞬く間に世界中で話題に。今年2月には待望のデビューフルアルバム『Blue』をリリースしました。
Communions - It's Like Air
8月19日(土)、12時55分から、マウンテン・ステージに出演したコミュニオンズ、インタビューにも気さくに応じてくださいました!
Interview:コミュニオンズ×MONJOE
L→R:ヤコブ・ファン・デュース・フォーマン(Gt.) 、 フレデリック・リンド・コペン(Dr.)、マーティン・レホフ(Vo/Gt.)、マッズ・レホフ(Ba.) 、MONJOE
——<サマソニ>でのライブはいかがでしたか?
マーティン・レホフ(以下、マーティン) すごく良かったよ。あれは多分僕たちがやって来たステージの中で最も大きいステージの一つなんじゃないかな。あと、ヴィジュアルを使ったのは初めてだったんだ。
——コミュニオンズのライブを観ましたが、素晴らしかったです。昨夜にはLiam Gallagher(リアム・ギャラガー)を<SONICMANIA>で観ましたが、コミュニオンズとリアム・ギャラガーにどこか共通するものがあったように思いました。それは多分、「ロックスター」ということだと思ったのですが、コミュニオンズは「ロックスター」になることを意識していますか?
マーティン そうは思わないよ。なんというか、ただのバンドかな。
——2月にもコミュニオンズは<Hostess Club Weekender>で東京に来ていますが、その時とオーディエンスに違いはありましたか?
マーティン 前回より観てくれた人が多かったよね。オーディエンスのノリが少し違ったよ。
——大きなステージを想定しながら曲を書くことはありますか?
マッズ・レホフ 時々あるよ。
——どういったことを考えますか?
マーティン スタジアムでやることだよ。音楽は大きなエネルギーだと思うから。僕たちはスタジアムで演奏すべきなんだよ、僕たちのストーリーの中で(笑)。
——コペンハーゲンのローカル音楽シーンについてはどう思いますか? また、その未来については?
ヤコブ・ファン・デュース・フォーマン(以下、ヤコブ) 僕らはリハーサルのスペースをみんなで共有するんだ。長い間、互いを知っているよ。未来についてはそのシーンだけを意識したことはなくて、全体のシーンを意識してるんだ。
——それは他のミュージシャンらにも言えることだと思いますか?
ヤコブ そうだね。ただみんながやってることはそれぞれがやりたいことの一部であるはずで、お互いに影響しあってるよね。
——それではよりローカルにと言うよりは、グローバルにと言うことですよね。僕は日本でバンドをやっていて、バンドとして日本から海外に出ることが難しいことを実感しているけど、コミュニオンズは(ローカルの)外に出ることについてどう考えていますか?
ヤコブ それはいいことでもあるし、そうでないこともあるんだ。いくつかスポットライトが当たったアーティストはすでに海外に出ているし、それは名誉なことでもあるけど、色々難しいこともあるよね……。でも日本に来るのはいいことだし、いろんなところでギグを演るのは楽しいよ。
——東京で何かしましたか?
ヤコブ ボーリングとカラオケ、たくさん飲んでたくさんタバコを吸ったよ。
▼こちらもチェック!
【サマソニでつかまえたヨ】デクラン・マッケンナ、18歳。初サマソニ、日本の食事やショッピングを満喫♪
interview by MONJOE
edit by Qetic・船津晃一朗/田中莉菜
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September 21, 2017, 6:00 pm
ヤマハ主催『Music Revolution』でのグランプリ・オーディエンス賞のダブル受賞をきっかけに2014年にメジャーデビューした、シンガーソングライター吉澤嘉代子 。
<ROCK IN JAPAN .FES>など国内の大型フェスヘ出演や全国ホールツアーを行うなど精力的に活動する一方で、私立恵比寿中学や、松本隆との共作によりシンガークミコへ楽曲提供も行っている。
最近では、バカリズムが「原作」「脚本」「主演」を務めた『架空OL日記』の主題歌として“月曜日戦争”を書き下ろし、話題に。そして、来たる10月4日(水)にはMETAFIVEのゴンドウトモヒコが表題曲をプロデュースした2ndシングル『残ってる』のリリースが決定している。
今回はそんな吉澤嘉代子に『残ってる』についてはもちろん、好きなスポーツやこの秋でやりたいこと等、様々な15の質問に答えてもらった。最後にはQeticのマスコットキャラクター「あいつ」のイラストも描いてもらったので、ぜひそちらもチェックしてみて欲しい。
吉澤嘉代子に訊く15の質問とお絵描き
①まずは、「今一番会いたい人」と尋ねられた際に最初に思い浮かぶ方はどなたですか? その理由もご自身なりに分析していただけますでしょうか。
人ではないですが、飼っていた犬です。私の宝物だし、いつでもいちばん会いたいです。
②好きなスポーツはありますか?
スポーツ全般苦手ですが、柔道は好きです。子供のころ、夏休みにいとこが遊びにくると、みんなで受身の練習をしていました。
③今日から一ヶ月間仕事休み、と告げられたら何をしますか?
家にいます。
④バカリズムさんが原作のドラマ『架空OL日記』の楽曲を書下ろされましたが、テーマが与えられての楽曲制作と、そうでない作曲の違いはありましたか?
作品を彩る一部になれたらと、曲だけで完結しないように気をつけました。脚本に登場するモチーフと連動させて、ドラマの最終回で歌詞の意味がわかる内容にしました。
吉澤嘉代子「月曜日戦争」MUSIC VIDEO
⑤10月4日(水)リリースの“残ってる”ジャケ写の後ろ姿、とても綺麗で素敵です。「楽曲を聴いた人が主人公になってほしい。その人の恋を投影してもらえたら。」との想いからこのジャケ写にしたそうですが、他のアーティストの作品で、自分自身を投影してしまう楽曲はありますか? もしあればどういった自分を投影するのかも教えていただけますでしょうか。
倉内太さんの「どうしようもなく今」という曲です。初めて聴いたとき、ずっと言葉にできなかったイメージを歌詞にしてもらったような気持ちになりました。
“残ってる”通常盤ジャケ写
⑥“残ってる”は「夏から秋にかけて季節の中にとり残されてしまった、朝帰りの女の子の歌です。」とのことで、切なくも少しドキッとするテーマだと思います。最近起こった切なくもドキッとした体験を教えてくださいませんか?
自転車に乗っていたら、目の前に酔っぱらったカップルがおり、通り過ぎようとすると、彼女の方が私によろけてきてぶつかりそうになってドキッとしました。「危ないですよ!」と文句のひとつも言いたかったですが、小さな声で「おっと」としか言えませんでした。彼女は彼氏に「気をつけなって言ったでしょう?」と優しく諌められていて、なんか切なかったです。
吉澤嘉代子「残ってる」MUSIC VIDEO
⑦カーネーションの“Please Please Please”にコーラスとして、そしてツアーにもゲストとして参加されるそうですね。カーネーションいいですよね。同年代の友人に「カーネーション」の魅力を伝えるとしたら、どんな言葉で説明しますか?
「色気がすごいんだよー!!!」
⑧好きな食べ物と嫌いな食べ物を教えていただけますか?
好きなのは、お鮨。きらいなのはピーマンです。
⑨「秋が楽しみ」とおっしゃっていましたが、この秋でやりたいことはなんですか?
紅葉を見に行って、柿の葉寿司をいただきたいです。
⑩好きな洋服のブランドはありますか?
今作の衣裳で着た「furuta」のお洋服が素敵でした。
⑪最近買った一番高い買い物はなんですか?
ギャルソンの鞄。
⑫好きなお笑い芸人はいますか?
バカリズムさんです。単独公演を見させていただいて、その秀逸さに人間の未知の力を感じました。
⑬1番言われて嬉しい言葉はなんですか?
なんだろう、、「おもしろい」です。
⑭好きな色は何色ですか?
赤・白・ピンクです。子供のころから好き。
⑮憧れの人はいますか?
たくさんいるけれど、もう会えない人なら歌人の笹井宏之さんです。
吉澤嘉代子が描いたQeticマスコットキャラクター「あいつ」
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September 28, 2017, 6:00 pm
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September 29, 2017, 11:00 am
2015年リリースの前作『ワーク・イット・アウト』が全英チャート9位にランクインした、現在のイギリスを代表するシンガーソングライターの一人、ルーシー・ローズ 。彼女が約2年振りに発表した3rdアルバム『サムシングス・チェンジング 』は、彼女のキャリアにとって大きな転機を刻む重要作品だ。
転機のきっかけは、昨年行ったサウス・アメリカ8か国を回るアコースティック・ツアー。SNSを通じて直接ファンにブッキングを呼びかけ、バックパックを背負って時にファンの家に泊まりながら旅した同ツアーによって、彼女は自分を見つめ直し、音楽を作る理由を再発見することになる。
その後、彼女はメジャーの〈ソニー〉からインディ・レーベル〈コミュニオン・レコーズ〉へと移籍。ブライトンでのレコーディングという新たな環境下で、商業的な打算や妥協を一切せず、自身の作りたい音楽を100%思い通りに作ったという。その結果、本作はとても純度が高く美しい感情が詰め込まれた、実に瑞々しい傑作に仕上がっている。
彼女は現在、英米やヨーロッパだけに留まらず、中南米、インドや東南アジア諸国など、世界各地を半年以上かけて回るワールドワイド・ツアーの真っ最中。その途中、昨年11月の初来日以来に訪れた東京で、話を聞いた。
Interview:ルーシー・ローズ
——最新作『サムシングス・チェンジング』は、昨年行ったサウス・アメリカ・ツアーに大きく影響されて作られたそうですね。そのツアーはあなたの夫が撮影したドキュメンタリーになり、YouTubeでも公開されています。そのツアーをやろうと思った、最初のきっかけについて教えてください。
セカンド・アルバムのツアーが終わった後、自分が音楽を作っている理由を見失って、このままじゃ次のレコードに取りかかれない感じがしたの。だから、旅をして世界を見て回ることにしたのよ。サウス・アメリカには私のライブを待ち望んでいるファンがたくさんいて、TwitterとかFacebookを通じて何度も連絡をくれていたんだけど、それがまだ実現できていないことをずっと申し訳なく思っていたから、サウス・アメリカを回ろうと決めたの。曲を演奏してファンの皆に幸せになってもらいながら、同時に行ったことのない街や人々の暮らしを見てみようって。
——前作のツアー後、自信を失っていたのはどういう理由からですか? あのアルバムはチャートで9位にもなり、とても成功した作品でもあったわけですが。
そうね。あのセカンド・アルバムはとても成功したし、私のキャリアにとっては今のところピークだったと思う。でも、あの当時を振り返ると、私はそれまで感じたことがないくらい不運に感じていたの。音楽を始めてから10年もの間、そのポジションをずっと目指して夢見てきたはずなのに、いざそうなってみると、私は向いていないんだって感じてしまって、何のためにやっているのか分からなくなったの。
音楽業界に染まって、やりたいことを諦めたり、妥協したりすることは簡単なんだと思う。そこにいると、とても大きなプレッシャーがあって、それに合わせて自分をフィットさせればいいんだから。でも、それでは私自身の思い描く幸せや成功を妥協することになる。だから、今回はチャートや成功することじゃなくて、何より自分自身でいることを重視して音楽を作ろうって決めたのよ。
——サウス・アメリカ・ツアーのドキュメンタリーを見ると、あなたはファンとギターを教え合ったり、音楽について意見を交換したりと、とても親密な体験だったことが伺えます。その経験はあなたの音楽への向き合い方にどのような影響を及ぼしましたか?
そうね、かなり影響があったと思う。あのツアーが始まった頃、私には自信が欠けていたの。何がやりたいのか、人生に何を求めているのか、全く分からなくなっていた。でも、あの旅で自分を発見することができて、私が音楽を作る理由を改めて学べた感じがするわ。たくさんのファンと会って話をしたんだけど、そうすると自分の音楽がどう聴かれて、私がどう見られているのかが分かってくるの。ラジオでかかるためのテンポがどうだとか、それまで私が気にしていたことなんて大したものじゃないって思えたの。
Lucy Rose - Something's Changing
——音楽を通じた人との繋がりの大事さを、改めて気づけたということですね。
そう。「あなたの音楽を聴いていると、私の人生は大丈夫なんだって感じられる」って言ってくれる人や、自分の音楽がどれだけ大事なのか伝えてくれる人がいて、これこそ私が音楽を愛して、音楽を作っている理由なんだって気づけたの。本当にシンプルなことだったのよ。一人で家で音楽を作っていると、たまにたまらなく孤独を感じることもあるわ。でも世界の裏側には、私と全く同じように感じている人がこんなにもたくさんいるんだって実感できた。それってとてもパワフルなことだと思うの。新しいレコードは、そういうファンのことを思って一緒にいるように感じながら作ったの。
——南米にあなたのファンがたくさんいると聞いて、少々意外にも思いました。実際に話をしてみて、彼らがあなたの音楽を発見したきっかけというのは何でしたか?
ツアー中ずっと、私も皆にその質問を聞いてたの(笑)。特にイギリス以外の国では、私の音楽はよく知られているっていうわけじゃない。サウス・アメリカではフィジカルでもリリースされていないし、ラジオでかかることもなければ、レーベルがあるわけでもない。でもずっと聴いていると、ストリーミングでは人気があるみたいだったわ。たぶん、一番のきっかけはアニメの『蟲師』なんじゃないかしら。
——“シヴァー”が『蟲師』のアニメ二期のオープニング曲に選ばれたのを聴いて、ファンになった人が多いんですね。
あのアニメはサウス・アメリカでとても人気があって、それを通じて私のことを知ってくれた人が多いみたい。彼らはラジオとかで情報を得られない分、インターネットを通じて熱心に情報をリサーチして、いろんなバンドや音楽を自ら進んで見つけようとしている。そういう姿勢も素晴らしいと思うわ。
Lucy Rose - Shiver
——昨年末には、初来日のツアーを行いました。初めて日本に来て、どのような感想を持ちましたか?
東京は私が絶対に行ってみたい都市No.1だったの。日本がどんなに素晴らしい国か、東京がどんなにすごい街か、いろんな人からいつも聞かされていたから(笑)。だから、とても興奮していたのを覚えてるわ。でも、前回の来日では飛行機で具合が悪くになってしまって、初日は最悪の気分だったの。ホテルで、生涯一というくらいにトイレに籠って、トイレにもボタンがいっぱいついてて訳が分からなくなって、頭がグルグル……みたいな。
ただ、いざショーを始めると、やっぱりファンと実際に交流するのはとてもスペシャルなことだって実感できたわ。毎晩ベストな演奏をしたいと思っているのはもちろんなんだけど、ファンとコミュニケーションすることが私にとってはとても大事なことなの。こんなに離れた場所にも自分の音楽を聴いてくれる人がいるってことが実感できるし、また戻ってきたいと思えるから。
——それから、最新作『サムシングス・チェンジング』を新しいプロデューサーのティム・ビッドウェルとレコーディングすることになります。彼と出会い、今作を一緒に作るようになった経緯を教えてください。
私の友達の友達で、前作のミュージック・ビデオを担当してくれた人が推薦してくれたの。その当時は、旅から帰ってきて、メジャー契約を終了してマネジメントも自分でやることに決めた頃で、私にはすでに次のレコードに対する明確なヴィジョンがあった。それを実現するために、いろんなプロデューサーと試していたんだけど、実際に会って一番適任だと思えたのがティムだったの。私がやりたかったライブ・テイクでのレコーディングを得意としていて、今一緒にツアーを回っているバンド・メンバーを紹介してくれたのも彼なの。また、彼は人生で出会った中でも最高に面白い人。レコードはかなりシリアスなんだけど、実際には笑いとか陽気なムードが時に必要だから、楽しい経験だったわ。
——今作からメジャー・レーベルの〈ソニー〉ではなく、インディの〈コミュニオン・レコーズ〉へと移籍しました。その選択をした理由を聞かせて下さい。
サウス・アメリカの旅から帰ってきて、私はとてもエネルギーに満ち溢れてポジティヴな気持ちだった。それで〈ソニー〉の人とミーティングを行って、正直な話し合いをしたの。私はこれまで作ったことのないような最高のレコードを作れるような気がしてる、でもラジオがプレイしてくれるような曲かどうかを保証することはできないって。
それって、彼らにとっては大問題なの。音楽と産業についてはとても難しい問題で、どうしても利益を出さないといけないから、ラジオ頼りになっている部分がある。それで妥協しなきゃいけないことも多々あるけど、今回は私自身のためにも、ラジオとか気にせずに作りたいレコードを作りたいと思ってたの。でも、彼らは本当に良くしてくれたのよ。まだ一枚分の契約が残っていたんだけど、私の意見を尊重して送り出してくれて、やりたいようにやる自由をくれたんだから。
——ニュー・アルバムはロンドンではなく、ティムがブライトンに持っているスタジオでレコーディングしたそうですね。ロンドンとブライトンでは街の雰囲気も違うのではないかと思うのですが、ブライトンでの生活が本作に与えた影響があれば教えてください。
ブライトンでのレコーディングは2週間だけで、その間滞在しただけなの。だから、音楽そのものはブライトンに影響されてはいないかもしれないけど、エネルギーの部分では影響があるんじゃないかな。ブライトンは海沿いの街で、ロンドンとは全く街並みが違う。ロンドンはとっても動きの早い都市だけど、ブライトンはもっとリラックスした感じ。それがレイドバックして落ち着いたレコードの雰囲気にも表れていると思うわ。
——また、本作にはドーターのエレナ・トンラ、ベアーズ・デンのマーカス・ハンプレット、そしてステイヴズがゲスト参加しています。彼らもブライトンのスタジオに招いてレコーディングしてもらったんですか?
マーカスはブライトン在住だから、直接スタジオに来てくれたの。エレナとステイヴズは、レコーディングが終わった後にロンドンで追加録音したの。少しハーモニーを加えたいと思っていて、エレナに音源を送ったら「ぜひやりたい」って言ってくれたから、ロンドンのスタジオに入って一時間くらいでレコーディングしたのよ。
——本作のリード・トラックにもなっている2曲目“イズ・ディス・コールド・ホーム”は、「ここはホームじゃない」と繰り返し歌われる悲しげな曲調ですが、最後にポジティヴな転調をして、「私にあなたの手を握らせて」という歌詞でエンディングとなります。この楽曲が作られた経緯を教えてください。
あの曲は、去年の夏、ドイツにいた時に書き始めたの。最初はギター・パートから書き始めて、それに合わせてハミングしながらその時の感情をリリックにしていったわ。その時に頭にあったのは、今ヨーロッパ中で大きな問題になっている難民危機のこと。毎日のように報道されて、一歩ドアを開けて外に出れば起こっていることなのに、私は何もしていないような気がして。だから、とても大きな悲しみが曲に込められているんだと思う。でも、エンディングは彼らに救いの手を差し伸べる人だっているんだって歌っている。それはドイツの影響も大きいの。彼らは国を挙げて何万人も難民を受け入れて、彼らを全力でサポートしているから。
Lucy Rose - Is This Called Home
——今回の日本を含むツアーは「ワールドワイド・シネマ・ツアー」と銘打たれています。このタイトルはどういう意味で付けられたものですか?
新作のストーリーは、サウス・アメリカの旅のストーリーと深く繋がっていると思うの。私の夫が撮ったサウス・アメリカ・ツアーについてのドキュメンタリーは、新作でも大きな役割を担っていて、レコードにもっと意味を与えてくれる。今世界を見渡すと、ネガティヴなニュースが溢れているけれど、あのドキュメンタリーにはとてもポジティヴなストーリーとメッセージがあるの。人間性について、旅について、肯定的な体験について……。そういったものを、今回のツアーとショウでも皆に体感してもらいたいという意味で付けたの。でも、特にイギリスだと映画のチケットは本当に高いんだけど、私のツアーは出来る限り安い値段でチケットを売るようにしているから、その点は「シネマ」とは違うよね(笑)。
——あなたのツアー・スケジュールを見ていると、これから来年まで、本当に毎日のように世界各国でライブをすることが決まっているようですね。多くのアーティストにとって、世界をツアーで回るというのは素晴らしい経験であると同時に、とてもハードでもあると聞きます。あなたにとって、世界各国をライブして回るというのはどのような経験なのでしょうか?
そうね。ずっと旅をする点ではとてもハードだけど、私はそれが大好き。普通のバンドだと、イギリスでライブをやってヨーロッパを回って、時々アメリカに行ったりするくらいだけど、それで忘れられている国々や地域が広大にあって、そこにもライブを待ち望んでくれるファンがいる。彼らと実際に会うことは、私にとっては本当に大事なことなの。
ツアーの途中でそういう国を通り過ぎるとき、申し訳ない気持ちになったりもする。熱心なファンがいるのに、私たちは彼らのことを気にしてもいないんじゃないかって。だから今回は出来る限り多くの国と街を回って、ショウを見てもらうことに決めたの。Facebookで投票してくれた地域でライブする「ホームタウン・キャンペーン」を行ったのも、そういう理由から。例えば、来年行く予定のマレーシアのクチンっていう街は、今まで聞いたことがなかった場所だけど、そこに行くのが今から楽しみで仕方ないわ!
text & interview by 青山晃大
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