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イベントレポート|Mom初の自主企画<look forward to science 1> betcover!!、DENIMSを迎え開催

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EVENT REPORT 2019.09.24(TUE)@新宿MARZ look forward to science 1

ヒップホップの自由度を謳歌しながら自分の歩幅で新たな道を切り開く次世代アーティスト・Momが、自身が主催する企画シリーズ<look forward to science>を9月から12月にかけて開催。第1回目は9月24日(火)にbetcover!!とDENIMSをゲストに迎え、新宿MARZにて開催された。3連休明けの初日であるにもかかわらず、会場は開演前から多くの人で賑わっていた。

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まず初めに登場したのはヤナセジロウのソロ・プロジェクトであるbetcover!!。 ベースとドラムとギター・ヴォーカルのヤナセジロウの3人による、レゲエ/ダブ、ブルースやジャズ、オルタナティヴ・ロックなど、豊富なバックグラウンドを感じさせる音が、ポップと聞いて思い浮かべる整頓された何かを壊すように展開していく。とことんストイックで攻撃的ではあるが、聴き手を置き去りにアヴァンギャルドが独走するようなものではなく、同時にユーモアとファンタジーに溢れ、聴く者の新たな感性の扉を開くような演奏。 序盤の息を飲むような緊張感から、じわじわと覚醒へと導かれていく観客たち。カオスこそが人間の心ともっとも同調できるポップ。終盤にヤナセジロウのなぜか裏声のMCが出た頃には、場内は完全にbetcover!!ワールドに染まっていた。

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続いてはDENIMSの登場。SEは偶然にもbetcover!!の余韻を増幅さるかのようなスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン(Sly & The Family Stone)の“Sing A Simple Song”。そのサイケで濃厚なファンクからの流れを切らずに自らの演奏を繋ぎつつ、一気にDENIMSの開放的で明るい色を放出するスタートはお見事。 トラディショナルなファンクやロックンロール/R&Bを基調にした、“リズムマスター”とでも言いたくなるようなギターのコードカッティングと跳ねたベースとドラミングに、連休明けの重めのメンタルを、フワッと軽くしてくれるような歌。 この日が3日連続ライヴの締めだったというように、引く手あまたの鍛え抜かれたパフォーマンス力があるからこそのレイドバックした空気。どこをとっても唯一の輝きが、フロアのヴォルテージを高める。

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バンドを代表して、ギターのおかゆが、実は主催のMomとは出会って間もないが、MomがDENIMSを好きだということが伝わったオファーへの喜びを語り、最後は大団円のうちにラストのアクト・Momへ。 DJとMomのマイク・パフォーマンスとギター。シンプルなセットの周りに光る、“Mom”の文字と酒瓶を並べた手作り感のある電飾。冒頭で「“自主企画”っていうと、気張ったというか、意気込んでやっている感じがしますけど、ぜんぜん楽な感じで、肩の力抜いて、それぞれ楽しいやり方で、やっていきたいというのが僕のポリシーなので、よろしくね、楽しんで」と優しいトーンで話していた。 声高らかに、エモーショナルに主張することはない、受け手に感じる幅のあるオリジナリティの強さやDIYなスタンスがセットからも伝わってくる。シンガロングやコール&レスポンスを求めるシーンもあるが「歌えたら歌ってね」、「ここは歌えるんじゃない?」と、ステージとフロアにある物理的な境界線をそっと拭うことで、観客それぞれが自由に楽しんで主役になれる、パーティとしてのポテンシャルを引き出すような演出が印象的だ。

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それは曲においても同様。例えばトラップ・ビートに乗ると現在進行形のポップ・ミュージックになるフロウが、ギターの弾き語りになるとエヴァー・グリーンなロックやフォークのように聞こえる。なだらかな起伏のなかで、気がつけば数分前とは別の世界にいるような、不思議な感覚だ。 それは意図的な組みあわせの妙なのか、自然発生的なものなのかはわからないが、まずはフラットに音楽としてただ楽しく、堀り下げればさまざまなレイヤーが用意されている、Momならではのシームレスなスタイルによるパフォーマンスを堪能することができた。

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今回の3組は音楽性もパフォーマンスのベクトルも、まったく異なる。しかし、バラバラなものを楽しんだ、という感覚はない。ジャンルを越境したのではなく、そもそも、ジャンルやコミュニティによる固有の美学はあれど、それぞれに明確な線が引かれているものではないと感じたことに、現代性と豊かな未来を見た時間だった。 この企画はすでに第2弾と第3弾も決定している。ここから生まれるであろう新たなムーヴメントに期待しながら、引き続き追いかけていきたい。

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Text by TAISHI IWAMI Photo by Aoi Haruna

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Mom シンガーソングライター/トラックメイカー。現役大学生の22歳。 様々なジャンルやカルチャーを混ぜこぜにした、手触り感のある独自のジャンル『クラフト・ヒップホップ』を提唱。アートワークやMusic Videoの企画も自身でこなし、隅々にまで感度の高さを覗かせる。 すべてのトラックをGarageBandで制作しているにもかかわらず、一度聴くと頭の中を支配する楽曲たちには、サウンド構築の緻密さや、あくまでポップスフィールドからはみ出ないメロディセンスが光る。 2018年初頭から本格的に活動を開始。手売りのDEMO CDは、タワーレコード渋谷店の未流通コーナーで取り扱われ、入荷の度に即時完売。デイリーチャート3位を記録した。 同年11月、初の全国流通盤となる『PLAYGROUND』をリリース。Apple Music『NEW ARTIST』にも選出され、渋谷O-nestで開催したリリースパーティは完売。 2019年5月、前作より半年のハイスピードで2nd album『Detox』をリリース、TOWER RECORDS『タワレコメン』に選出。翌月には渋谷WWWにて、ゲストにchelmicoを招いたリリースパーティは完売。

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EVENT INFORMATION

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2019.10.21(月) OPEN 18:30/START 19:00 渋谷O-nest ADV ¥2,500/DOOR ¥3,000(1ドリンク別) LINE UP:Mom / TOKYO HEALTH CLUB / xiangyu TICKET:

ローソンチケットイープラス

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look forward to science 3

2019.12.13(金) OPEN 18:45/START 19:30 Veats Shibuya ADV ¥3,300(1ドリンク別) LINE UP:Mom / + GUEST ACT TICKET:

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自分自身のまま在り続ける。Gateballersが音の旅で表現する生きる神秘について

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Gateballers

Gateballers。 GODや小山田壮平バンドのギタリストとして知られる濱野夏椰がボーカル・ギターを務め、カネコアヤノバンドでもベースを担当する本村拓磨が在籍するサイケデリックロックバンドだ。 かねてから名うてのプレイヤーとして音楽界隈で知られていた彼らが9月に出した『Infinity mirror』が、素晴らしい。何が素晴らしいかって、これまでのサイケデリックな実験精神を踏まえて、キャッチーなメロディーラインに研ぎ澄まされた言葉達が並ぶことだ。活動歴の長い彼らが、何故ここにきてシンプルでキラキラとした音像を獲得したのか。 昨年リリースした2枚の作品を経て、より自由に開放されて制作されたという今作について、インドへの旅を経て制作されたというアルバム作りの背景や感じたことについてお話を聞いた。

Gateballers

Interview:Gateballers

実験精神あふれる前作を経たからできたこと

──今作の『Infinity mirror』の話をする前に、去年の話をさせてください。昨年2月にフルアルバム『「The all」=「Poem」』をリリース、12月に“Moon river”も含まれるEP『Thank you Part-time Punks』をリリースされました。今一度過去2作を振り返って、いかがでしたか? 濱野 夏椰(Gt.&Vo. 以下、濱野) 『「The all」=「Poem」』では、詞を読んで、その詞に適した音像でレコーディング作業をしました。簡単に言うと音楽的にやりたいことをやれたんです。そこから、さらに踏み込もうと思ったのが、前作のEPです。そしたらめちゃくちゃになった(笑)。

Gateballers - 「The all」=「Poem」

──めちゃくちゃって(笑)。実験的でサイケデリックな要素の強いEPでしたよね。 本村 拓磨(Ba. 以下、本村) 当初は、3曲入りのシングルをまとめた作品にしようと言っていたんです。3曲デモがある状態でレコーディングに入ったら、「どんどん録ろう!」って(濱野)夏椰くんの発言の元にセッションを重ねました。曲と曲の合間に作ったセッションを素材として構築して、それがインストゥルメンタルの楽曲を含む7曲入りの作品になったんです。 ──バンドとしての基礎体力がいりそうですね。 本村 そうですね。やってみたら「できる!」ということに気づいた感じです。決めごとをしないでその場で作業したことや、メンバーが担当楽器以外のものを使ってどんどん録音を重ねていくみたいなプロセスは、今作にすごい影響を与えたんだろうなと思いますね。 ──突発的な要素が強かったと。プレイヤビリティが磨かれて制作のスタイルが自由になったんですね。 濱野 『Thank you part-time punks』でも、歌詞に合う音を突き詰めたんで、それに関してはみんなすぐにできるようになりました。それから、楽曲の持つ特徴を理解して、一瞬でこの曲が生まれた奇跡に見合った音像にできるようにもなったんです。……できたよね? 意外とすんなりと。 一同 (うなずく) ──それを経て今作は基本的には聴きやすい作風になっていますね。 濱野 「シンプルにしよう」って言って、今作の『infinity mirror』ができました。楽器の垣根がなくなったというか。ベーシストなのに本村は『infinity mirror』でエレキベースを3曲しか弾いてなくて。そのかわりに俺がベースを弾いたり、大正琴を弾いたりとか。 本村 そうですね。これまでとは最終地点や目標地点が変わったかもしれません。今までは曲に対して自分がベースで参加するという前提があったんですけど、今回は作品をどう作るかに意識が向いていました。いい作品を作るのであれば「この人がベースを弾いた方がいい」、「この人がドラムをやった方がいい」っていう意識が分かれてきたんです。でも、ライブはライブでみんな各々の役割があるので、「録音」と「ライブ」という意識が完全にくっきり分かれたなと思います。そしたら、ライブはライブでより楽しくなったし、録音は録音でより楽しくなったし、なんかずっと楽しいですね(笑)。

──最高ってことじゃないですか(笑)。久富さんはどうですか? 手数を抑えた楽曲が多い印象でしたが。 久富 奈良(Dr. 以下、久富)  僕はドラマーの心理として、例えば歌モノで派手に叩くのは邪魔になっていないかとか考えちゃうんですよ。その最適解を探し続けていて。今回も現状でできる範囲の最適解でやりました。 本村 (濱野)夏椰君の地元の伊豆でレコーディングもプリプロもやったんですけど、事前にあったアイデアもレコーディング本番になったら「なんか全部違くない?」みたいな感じになったりして(笑)。「こういう音を入れるぞ」という、決め打ちっていうよりは、本番での判断も多かったですね。 ──新作を披露してからライブのお客さんの反応はどうですか? 濱野 みんな笑ってますね、前より(笑)。 ──前はポカーンってしてる人もいましたか(笑)? 本村 ほとんどポカーンとしてました(笑)。笑顔が増えました(笑)。 ──それは何よりです(笑)。

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初の海外旅を経て生まれた楽曲群

──制作の大半はみなさんがインドに旅をしてからできた楽曲群なんですよね。 濱野 そうですね。インドに旅する前に確か2曲ありました。“スーフィー”は昨年末の最後のライブで披露したので。それからもう一曲なんだったかな……。なんかありましたね(笑)。 ──それからインドに行ってみんなで遊んだから「作るぞ!」って感じになれたのか。それともそこで開放されて「あれ、やばかったね」みたいに後から突き詰める形になったのかっていうと。 濱野 意外と前者ですね。インドの貧困しているエリアに10日間いたので、日本でバンドをやれていることが奇跡だなって噛み締めました。全員で一緒にいれたのがすごいよかったよね。 ──ルーフトップでライブをされたりしたそうですね。あれはヴァラナシ? 濱野 ヴァラナシのガンジス川沿いのユースホステルの屋根の上でライブをやりました。街が砂塵に包まれていて、その中に黄色い光が差し込んでいて、ライブ2曲目で停電して(笑)。 ──すごい環境ですね。 本村 すごい盛り上がってたんですけどね(笑)。 濱野 真っ暗闇の中に声だけが届いてるみたいな感じで(笑)。 ──“船底”の歌詞もガンジス川のお話ですよね。仮タイトルのタイミングで聴いたのが印象的だったんですけど。 濱野 ガンガー(ガンジス川)って聖なる川のイメージがあるじゃないですか。でも、実際に行ったら生活排水や工業排水も垂れ流しだし、死体も流れている。ちょうど川を見に行った時に妊婦が流れてきたんです。現地でも火葬が主流なんですけど、インドでは妊婦と赤ちゃんと蛇に噛まれた人は燃やしてもらえないんですよ。現地に行くまではガンジス川で沐浴するとか息巻いていたんですけど、実際に見たら3秒で「沐浴はしない」ってなりました。指先すら入れたくないくらいで。 ──それくらい衝撃的だったんですね。 濱野 それで、もうただただボーっと川を眺めてるだけしかできないんですよ。なので、帯同していた写真家の相澤くんとボーっと眺めていました。「捨てられた川」みたいな印象がすごくあって、そういうところからできた曲ですね。 ──楽曲の並び順もスムーズに決まりましたか? 濱野 微調整くらいですね。なんとなくですが、制作している時に“スーフィー”が1曲目になるだろうな、というイメージがありました。当初、用意していた楽曲全曲のレコーディングが終わった時に、「最後になる曲がないな」ってなって、レコーディングの最後に“wedding dress”のレコーディングが開始されました。みんながビールを飲み始めた夜中3時に、「もう一曲だけ作らない?」って詞を書き始めて、アレンジも考えずに、ストレートパンチの曲をやろうと。朝8時には“wedding dress”が完成していました(笑)。 ──すごい。 濱野 そのままご機嫌に5月の伊豆で海開きに行きましたね(笑)。 本村 レコーディングの最終日はサポートのイタル君が唯一いない日で、久しぶりに現メンバーの3人だけで録った曲という部分も含めて、特別な感情がありましたね。

Gateballers

時制を越えて響く言葉達

──歌詞の面にフォーカスしようと思うのですが、歌詞ではリアルとイメージの世界、どっちもあるよ、みたいなことをこのアルバムを通して言ってるのかなと僕は勝手に思っていました。矛盾を孕んでいる“過去と現在と未来”の時制を行ったり来たりすることとか。頭の中の世界に行ってしまうことフィジカルに何かを感じることの両方を感じられる言葉遣いだなって。 濱野 そう解釈してくれているのは嬉しいですね。アルバムタイトルになっている“Infinity Mirror”は歌詞で《道に迷ったら 待ち合わせは 合わせ鏡の古い一枚》って言っているんですけど、合わせ鏡の古い一枚っていうのは一番奥にある“はじまり”のことなんです。果たしてこれは過去の話なのだろうか、未来の話なのだろうかと考えたら難しいじゃないですか。 ──難しいですね。 濱野 そこに“はじまり”の鏡があるかを認識しようとした時に、そこには既になくなっていて、またさらに奥にある。だから言葉も時系列もグチャグチャにしてみたんです。 ──以前「ウェディングドレスを着る瞬間は人生で一番の幸せを約束された瞬間だ」という話をされていましたよね。Gateballersの歌詞は《体は入れ物》という言葉遣いとか、“Moon river”の《難しいことはもうやめる時間だ》とか《旅をするのに体重はいらない》とか。精神世界の中を生きるといったように、自分の人生をそういったレイヤーでみることを追いかけているのかなとかって思ったんですけどどうですか? 濱野 現代って今ここにある現実と仮想空間どっちでも生きられるみたいな世界になってきているじゃないですか。もうすぐリアルと仮想空間の垣根もなくなるだろうし、そのどちらも本物みたいな。そうなってしまったら本当に「体は入れ物」でしかなくなるし、誰でも誰にでもなれる世の中になると思っているんです。でも、個人的には、《体は入れ物》と歌いつつ、やっぱり体が気持ちいいことが最高だ、みたいなタイプなんです。自分は“美味しいと感じること”を大事にしたいんです。できれば携帯とか捨てたいし。 ──言いたいことはわかります。 濱野 でも、仮想の方で生きている人もいるんですよね。いつも寂しい気持ちになるのは、死んじゃった人のTwitterがずっと残ってしまうことなんです。誰でもそのTwitterを見れば、その人のその時間を追うことができる。これからもっとそういう状況になってくると思うんですよ。石の墓場じゃなくて、0と1の墓場になってくる。それは果たしてどんなことなんだろうって考えたりもしますね。

Gateballers

──それこそ、“スーフィー”が神秘主義の詩人ルーミーの『愛の詩』に影響されたものと知って。歌詞で歌われていることと、インドで見てきたものの世界の風景と感じたことが混ざっているような気がしました。でも、あの曲がインドに行く前に生まれていたのは、結構不思議ですよね。 濱野 確かにそうですね。インドは初めての海外旅行だったので、1分1秒無駄にせずにああいう歌詞の気持ちで旅をしていました。

Gateballers - スーフィー

──これまでもやろうと思えばシンプルなストレートパンチを打てたと思うんですけど、それをこれまでやってこなかったのにはどんな背景があるのでしょうか? 濱野 どうしても最初からストレートパンチを打ちたくなかったんですよ。最初からストレートパンチをやることを目的にすると、どうしても手法が人の真似になってしまうじゃないですか。それが一番嫌だったから、自分のやり方とか道具とか武器を揃えて使い方も学んで、それを使ってストレートパンチを打つ方が絶対に創作として正しいと思うんです。……意外と硬派なんですよ(笑)。 ──たまたま今回、音像がストレートパンチになっただけで、歌詞の部分とか通底するテーマは変わっていない気もします。大学時代からずっと一緒にいる本村さん的にはどうですか? 本村 根元はまったく変わってないですね。 濱野 淘汰はされてきてますけどね。 本村 変わっているところもたくさんあると思うんですけど、それがあるからこそ変わっていないところにより目がいくんだろうなって思いますね。他の人に対してもですけど、 変わっていないところは本当に変わっていないんです。人といると本当にすごくはしゃいでいて、笑顔だし(笑)。でも、みんなが帰るときに寂しそうっていうのはずっと変わっていないですね。

Gateballers

──最後にこれからの野望といいますか。バンドとしてのスタンスについて教えてください。 本村 僕がパッと思ったのは、ライブをしている時とスタジオの時と比べると、笑っている量が変わらないのが重要だと思います。「この人の音何?」「なんで!?」みたいなシーンが絶えず起き続けていて、その度にみんな爆笑してたので(笑)。ライブだから笑顔になっているわけでもなく、制作でもゲラゲラやっているのは、絶対バンドのスタート地点としてあるので、それは守り続けていきたいですね。 濱野 俺はめっちゃ俺になりたいです。 ──俺になりたい? 濱野 小さい頃から音楽家になることを決めて音楽家をやっているので、「バンドをやってるから、武道館を目指せ」みたいな考えは嫌なんです。あんまりどういう場所にいたいとかはないです。興味持てなくて。 ──音楽を作ることが生理になっているということですね。 濱野 それに関して言えば、もっと空気を吸うように音楽を作れたらと思うし、赤ちゃんが泣くようにギターを弾けたらなと思います。最終的には、ファミレスとかに行ってギターを弾いてオムライスを注文するみたいな。本当にそうなりたいです、まじで。 ──自身を強化していくことでしかないですからね。どっちにせよ。 濱野 そう。だから芸事を磨いていくのみかなと。……どうですか、(久富)奈良さん? ごめんね、いつも最後で(笑)。 久富 これからどうなりたいか……。やっぱり自分の人生を大切にしたいですね。

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Text by Hiroyoshi Tomite Photo by Yuki Aizawa

Gateballers
Gateballers メンバーは、濱野夏椰(Gt,Vo)、本村拓磨(Ba)、久富奈良(Dr)、内村イタル(Gt,Sam / サポートメンバー)。2013年5月に東京にて結成。2014年11月に濱野が小山田壮平(AL / ex.andymori)らと共にレーベル「Sparkling Records」を設立。2016年3月に1stアルバム『Lemon songs』、2018年2月に2ndアルバム『「The all」=「Poem」』をリリース。ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文主催『APPLE VINEGAR -Music Award- 2019』に『「The all」=「Poem」』がノミネートされた。濱野は「ポカリスウェット」と『FUJI ROCK FESTIVAL』のコラボCMにてギターを演奏するなど、活動の幅を広げている。2019年9月より開始される『小山田壮平バンドツアー2019』に濱野がGt、久富がDrで参加。Ba.本村はカネコアヤノBANDに参加中。

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RELEASE INFORMATION

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Infinity mirror

2019.09.04(水)発売中 Gateballers PSCM002 ¥2,484(tax incl.) 詳細はこちら

EVENT INFORMATION

Gateballers 3rd ALBUM「Infinity mirror」レコ発ツアー

2019.10.04(金) 大阪府 梅田 Shangri-La LINEUP: Gateballers ベランダ ARSKN Newdums(Opening Act) 2019.10.11(金) 福岡県 Kieth Flack LINE UP: Gateballers HAPPY the perfect me 2019.10.13(日) 広島県 4.14 LINE UP: Gateballers 愛はズボーン ARSKN 2019.10.17(木) 宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 3rd LINE UP: Gateballers キイチビール&ザ・ホーリーティッツ 2019.10.20(日) 愛知県 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL LINE UP: Gateballers HAPPY 2019.11.07(木) 東京都 代官山 UNIT LINE UP: Gateballers 髭 Helsinki Lambda Club 詳細はこちら

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超小型モジュラー・シンセサイザー「KASTLE V1.5」のサウンドと魅力

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kastle
秋の夜長、皆さんいかがお過ごしでしょうか。爽やかなこの季節、夜の時間に読書をしたり、映画を見たりと、何かに没頭しながら充実した時間を過ごしたいですよね。そんな大切な時間に一風変わった電子楽器にハマってみてはいかがでしょう。今回、筆者がおすすめする、秋の夜長にぴったりのシンセサイザーをご紹介しましょう。

『KASTLE V1.5』は、マイクロ・パッチ・ケーブルを使い、様々な音を作れる、小型モジュラー・シンセサイザー

kastle 今回ご紹介しますのは、チェコ共和国のメーカー「BASTL INSTRUMENTS」から発売されている、「KASTLE V1.5」(キャッスル V1.5)という製品です。本製品は、針金のように細い「マイクロ・パッチ・ケーブル」を使い、様々なパッチングを試す事で、バラエティーに富んだ複雑な電子音を鳴らす事ができる、手のひらサイズのミニ・モジュラー・シンセサイザーです。「2in/outポート」を搭載し、外部機器との接続も可能。手のひらに乗る小型サイズなので、ヘッドフォンを接続すれば、いつでもどこでもモジュラー・シンセの音作りを楽しむ事ができます。 本製品は以前、白い配色の旧バージョンが発売されていたのですが、今は配色が黒に変わり、単三乾電池3本で駆動するだけでなく、新たにマイクロUSB給電でも駆動できる『KASTLE V1.5』(以下『KASTLE』)にバージョン・アップしました。「KASTLE」はお手頃な価格で購入できるのが嬉しく、どなたでも気軽にモジュラー・シンセの楽しさを味わえる、ガジェット系シンセの傑作と言われている製品なのです。本製品を単体で鳴らして遊ぶ事はもちろん、外部のリズムマシンなどとシンクさせて鳴らすとさらに面白さが広がります。 今回、こちらの「KASTLE」とドラムマシンをシンクさせて、リズミカルに鳴らしたり、面白い音を出す方法をご紹介します。すでに「KASTLE」をお持ちの方や、どんなサウンドなのか興味のある方、これから買おうかと思っているガジェット好きな皆さんに向けて、筆者がおすすめするパッチング方法と、本製品の魅力をお届けしたいと思います!

まずは「KASTLE」と「volca drum」を3.5mmのモノラル・ケーブルで接続

kastle パッチングをする前に、まずやるべき事があります。それは「KASTLE」とドラムマシンの接続です。筆者は今回ドラムマシンにコルグの「volca drum」を使用しますが、シンク接続できる機材であれば、どのメーカーの製品でもお好きな物を使用してください。では「volca drum」側の「SYNC OUT」と、「KASTLE」の上側面の左側にある「I/O CV ポート」を3.5mmのモノラル・ケーブルで接続します。上の写真のオレンジ色のケーブルがそれです。 この接続をする時に使用したケーブルは、色とりどりの「ミニ・パッチケーブル」が6本セットになった「SQ-CABLE-6 PATCH CABLE for SQ-1」という製品がコルグから発売されているので、一つ購入しておくとガジェット系シンセ同士を接続する時などに便利です。「volca drum」と「KASTLE」を接続し、両機のアウトプットをミキサーに接続して音が出せるようにしたら「KASTLE」の電源をオンにし、「volca drum」のリズム・パターンを再生します。ちなみに筆者は「volca drum」を「120BPM」にして再生しています。 準備が整いましたら付属の「マイクロ・パッチ・ケーブル」を使った接続方法をご紹介して行きますが、その前に動画を見て頂きたいと思います。今回撮影しました動画は、これからご紹介する接続方法と同じ事を試していますので、最初に見て頂いてからパッチングを試すなり、読みながら音だけ聴いて頂くなり、ご自由にお楽しみください!

▼“KASTLE V1.5”and“volca drum” DEMO Patching by Falcon-106

「volca drum」側から来たシンク信号を「KASTLE」が受け取り、同じテンポで鳴らすための最初の一歩をご紹介

kastle それではいよいよパッチングを開始します。最初は全てのノブを12時の方向にした状態でスタートします。まず「KASTLE」正面、左列の一番上にあります「I/O CV ポート」の「L」と書かれている方のパッチ・ポイントと、中央列の下段にあります「LFO RST ソケット」にパッチを接続します。これだけでは何も音に変化はありませんが、もう一本接続します。 kastle 続いて、右列一番下の「STEPPED パッチ・ソケット」と、左列の下から2段目の「TIMBER MOD ソケット」を接続します。すると「volca drum」のテンポと同じ速さで「KASTLE」がシーケンス・パターンのようなフレーズを発します。「ビヨビヨ」としたリズミカルなパターンにテンションが上がります。この接続が「volca drum」側から来たシンク信号を「KASTLE」が受け取り、同じテンポで鳴らすための最初の一歩になります。この状態で「OSC TIMBRE ノブ」をゆっくり左に回し、9時位の方向にするとステップごとに音が太くなったり、細くなったりする変化があって面白いです。

『KASTLE』はどこにどう接続しても大丈夫、自由にパッチングして、変わったサウンドを探り当てるのが面白い

kastle ではお次に、右列一番上の「OSC OUT」と、その下にあります「SECONDARY OSC OUT」をパッチングします。こうする事で、低域が少し強くなり「パチパチ」と細かいノイズの混じった、やや複雑な音に変化します。「アウトプット同士で接続しても大丈夫なの?」という声が聴こえてきそうですが、「KASTLE」はどこにどう接続しても大丈夫なんです。むしろ自由にパッチングを実験するようにして、変わったサウンドを探り当てるのが本製品の楽しい使い方なので、ルールにとらわれないパッチングをぜひ試してみて欲しいです。 この状態で「OSC PITCH ノブ」と「OSC TIMBRE ノブ」を9時位にすると音がダークになり、「WAVESHAPE ノブ」を2時位にすると張りがある音になって、さらにカッコよくなります。

コンピューターがリズミカルに鳴いているようなサウンドは、まるでSF映画に出てくる研究室

kastle お次は、右列の下から2段目の「LFO TRIANGLE ソケット」と中央列の上段にある「WAVESHAPE ソケット」を接続します。すると、アナログシンセで言うところのエンベロープ・ジェネレーターによって時間的に音色が変化していくような、「ギョン」といったサウンドになります。これはこれで力強く、好みのサウンドではありますが、さらにパッチします。 kastle 左列上から2段目の「Low(-)HIGH(+)ソケット」の「+」側と、そのすぐ下にあります「MODE ソケット」を接続します。すると先程に比べて少し音が細くなりますが、フレーズが「ピロリピロリ」と三連符のように小刻みになります。まるでコンピューターがリズミカルに鳴いているようなサウンドは、SFの映画に出てくる研究室みたいで心地よいです。この状態で「WAVESHAPE ノブ」を9時位にするとより効果的です。

パターンのステップ数を16ステップか、8ステップに選択できる

kastle しばらくこのサウンドを楽しんだら、今度はパターンのステップ数を変化させます。左列の下から3段目の「PITCH MOD ソケット」と、中央列、下段にあります「BIT IN ソケット」の右側のパッチ・ポイントに接続します。白い線で描いた、四角い枠に接続してある赤のパッチ・ケーブルがそれです。こうすると今まで鳴っていたパターンのステップ数が半分の長さに変化します。この接続によってパターンを16ステップにするか、8ステップにするかを選択できるのです。 「BIT IN ソケット」の左側のパッチ・ポイントに差し替えた場合も半分のステップ数に変化しますが、右側に接続した時とフレーズが微妙に異なります。演奏中にこのパッチを抜き差しして、16ステップから8ステップに変化させたり、「BIT IN ソケット」の左、右を差し替えて、微妙にフレーズを変化させる使い方をすれば、パターンにバリエーションがついて面白いと思います。 この状態で「LFO RATE ノブ」を12時方向から10時位に回すと、リズムに対して「KASTLE」のパターンがゆっくりになり、これはこれで面白いです。同じパターンの繰り返しに飽きてきたら、時々このノブを動かしてスピードを切り替えると良いでしょう。しばらく遊んだら、まだパッチングしますので「LFO RATE ノブ」を12時方向に戻しておいてください。

ステップごとに細い音と、太い音が交互に鳴り、刺激的なサウンドに変化する

kastle さあ、もう少しパッチングしてみましょう。お次は左列の上から3段目の「MODE ソケット」と、左列の下から2段目の「TIMBER MOD ソケット」をパッチングします。白い線で描いた、四角い枠に接続してある緑色のパッチ・ケーブルがそれです。このように接続すると再生されるパターンが、ステップごとに細い音と、太い音が交互に鳴り、中々刺激的なサウンドになります。時々「ゴツ」っとした太い音が鳴るパターンは、スリリングでカッコいいです。このパッチは演奏しながら抜き差しする事で、2つのサウンドを行き来できます。 余談になりますが、一度パッチングしたケーブルを片方抜いてみると、パッチする前の音色との対比が面白かったりする事があります。演奏中にパッチ・ケーブルを同じ所に抜き差しする事で、パッチする前と後の音を行き来して、サウンドを変化させる事が出来るので、こういった使い方を演奏しながら試してみて欲しいです。

スピード感のあるテクノなサウンドから、壊れかけた機械のようなベースラインまで、様々に音色変化する

kastle 最後のパッチングになります。パッチ・ケーブルがゴチャっとしてきましたが、指でよけながらうまい事パッチ・ポイントを探り当てるのがコツです。さて、右列下から3段目の「LFO PULSE ソケット」から、左列一番下の「RATE MOD ソケット」に接続します。白く描いた枠に接続してあるブルーのパッチ・ケーブルです。そして「RATE ノブ」を12時から3時方向に回します。すると「KASTLE」がドラムマシンとシンクしながらも、モジュレーションのスピードが変化し、パターンにスピード感が出ます。この音はテクノっぽくてカッコいいです。 この状態で「WAVESHAPE ノブ」をゆっくりと左右に一杯動かします。そうする事で、音が明るくなったり、暗くなったりサウンドが変化し、様々な表情を見せてくれます。さらに「TIMBER ノブ」を3時方向に動かせば、かなり主張の強いサウンドでパターンを繰り返し、10時方向にすると地味ではありますが、壊れかけた機械のような、ノイズ混じりのベースラインを繰り返し奏でてくれます。 本製品はノブを急激に動かすよりも、少しずつ、ゆっくり動かすことによって微妙に異なったサウンドが聴こえるのがとても面白いので、一瞬一瞬を味わうようにして音色を楽しんでみて欲しいです。

「KASTLE V1.5」は使えば使う程、新たな発見があり、楽しいミニ・モジュラー・シンセサイザー

kastle いかがでしたでしょうか。今回、筆者がおすすめするパッチングの一例をご紹介しましたが、「KASTLE」はもっと色々なサウンドを秘めています。様々なパッチングやツマミの設定を試す事で、バリエーション豊富な電子音を鳴らす事ができるのです。そのサウンドは、激しくノイジーなサウンドだけでなく、柔らかいドローン・サウンドも、ステップごとに音が変化する、メカニカルでメロディックなサウンドも、外部のドラムマシンとシンクさせれば、リズミカルなパフォーマンスができるなど、刺激的で複雑な音を出す事ができます。先ほどご紹介した動画のサウンドや、機械いじりが好きな方でしたら、絶対ハマると思います。 日本国内で本製品を輸入販売している「アンブレラカンパニー」では、定期的に「BASTL INSTRUMENTS」の「KASTLE V1.5」をみんなでワイワイ組み立てる 、DIY ワークショップを開催しています。半田ごてなどの製作工具一式をお借りして、インストラクターの指導の下「KASTLE」を組み立てる事ができます。 2019年10月27日(日)には「第10回 BASTL INSTRUMENTS DIYワークショップ」が開催される模様です。今回から「KASTLE V1.5」だけでなく、小型ミキサーの『DUDE』、ユーロラック・モジュラーの『TEA KICK』、『NOISE SQUARE』などを加えた4機種の中からどれか一機種を選んで製作できるそうです。 筆者も8月に開催された、こちらのDIYワークショップに参加してきたのですが、半田ごて初心者の筆者でも無事に完成させる事ができました。アットホームな雰囲気の室内にはガジェット系シンセや、ギター・エフェクターなどがズラリと棚に飾られ、ガジェット系が好きな方には天国のような空間でした。完成品を購入するよりも安く実機を購入できるのが何よりも嬉しいです。興味のある方はこちらのワークショップもぜひチェックしてみて欲しいです。 「KASTLE」は手のひらサイズでありながら、使えば使う程、新たな発見があり、触っていて楽しいです。モジュラー・シンセサイザーに関心はあるけど値段が高くて手が出せないといった方でも、本製品はパッチ・ケーブルを使った音作りの面白さを気軽に楽しむ事ができる、おすすめの製品なのです。ぜひ皆さんも「KASTLE V1.5」を試してみてください! 「KASTLE V1.5」の詳細はこちら 「アンブレラカンパニー」の「BASTL INSTRUMENTS モジュラーシンセ DIY ワークショップ」詳細はこちら

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Shin Sakiuraが持つ無数の顔 — 初期衝動と現在地、ワンマンライブを語るインタビュー

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Shin Sakiura

ソロアーティストとしてはもちろん、多岐に渡る面々の楽曲を手がけるプロデューサー、様々なアーティストのライブを支えるサポートミュージシャンなど多くの顔をもつShin Sakiura。 シーンから乞われるマルチさで近年活動の場を広げ、SIRUP、向井太一、chelmico、Rude-αらとの共演でも知られている彼が、12月7日(土)に代官山UNITにて自身史上初のワンマンライブを行うこととなった。 洗練されつつも柔軟な音楽性をもつ彼の作風が生まれるまでにはどのような軌跡があり、また彼は今立つ現在地から何を見ているのか。 三軒茶屋のとある静かなカフェで、本人に話を聞くことができた。

Shin Sakiura

Interview:Shin Sakiura

──現在、自身名義の作品に加え、さまざまなシーンのアーティストと共演されているShin Sakiuraさん。R&B/ヒップホップチャートの上位にランクインしている楽曲のクレジットを見ると、「この曲にもShinさんが!」と驚くことが多々あるのですが、意外にも幼少期は「ロック少年」だったそうですね。 そうなんですよ。母親がUKロック好きで、家でごはんを食べているときもロックが流れていたので、少年時代はロックこそ音楽そのものなんだと思っていましたね。その後、学生時代にバンドが流行ったので僕もギターを弾き始めました。 当初は同世代のみんなと一緒にELLEGARDENやストレイテナーなど全盛期のオルタナティブロックをコピーしていたんですが、僕は母親の影響もあってレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)やザ・ビートルズ(The Beatles)が好きだったので、徐々に「昔のロックもかっこええんやで」と友人たちを洗脳していきました(笑)。 なので中高生のころの仲間内では、いい音楽に出会ったら周りに共有する習慣があったし、昔の音楽を掘っていって最終的に僕よりも詳しくなるやつもいました。 ──幼い頃から素敵な音楽仲間に恵まれたのですね。その後、現在の音楽性に至るまでにはどんな音楽に親しんでこられましたか? 80年代の王道ロックから入り、日本で流行っていた邦楽のロックも聴いて、その後BOOM BOOM SATELLITESや80KIDZを聴き始めて、アンダーワールド(Underworld)やケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers)にもハマり、ダンスミュージックの要素を持ったアーティストがかっこいい! と思ったんですね。 バンドしか知らなかった当時の僕にはシンセサイザーなんて意味不明で、「生楽器だけでは出せないはずのこの音はどうやって出してるんや?」と興味深々で。 それが高校2年生か3年生の頃だったと思います。そして大学に入ると周りにヒップホップが好きな人しかいなかったので、友人にヒップホップを教えてもらう代わりにこれまで親しんできたロックを教えたりしました。ロック、エレクトロ、ヒップホップとそれぞれにがっつり入れ込んだ時期があったので、それらが混ざり合って今の音楽性になっているのかなと、僕自身は分析しています。

Shin Sakiura

──なるほど。既存曲のコピーだけではなく、ご自身での作曲に興味を持ったのはいつでしたか? ギターを始めた時から「弾くだけじゃなく、自分で曲を作りたいな」とぼんやり思っていて、当時組んでいたコピーバンドでも、アレンジについて積極的に意見を出していました。 大学に入ってバンドメンバーがばらばらになったので僕は何をしようか考えていたんですけど、DTM (パソコンを用いた作曲)をしている先輩の自宅に遊びに行った時に「曲を作れる機材が一式あるやん!」と感激して(笑)。触らせてもらってどハマリしたので、それをきっかけに自分でも少しずつ機材を買って作り始めました。 ──いわば趣味の一環だった作曲がお仕事へと変わり、自身の作品のみならずさまざまな人々から依頼を受けて楽曲を作るようになられたわけですが、環境が変わったなと肌で感じることはありますか? 「こういうのをやりたい!」と思った音に向かって作り始めて、途中浮かんだインスピレーションに従っていろいろ試しながら、好きなことを丁寧にやるという過程は、先輩の家で初めてDTMを触った日から変わっていないです。 僕の仕事には色んな種類があるんですが、Shin Sakiuraという名前が世に出ないような作家業では自我を出すことはなく、そういう仕事は色んな音楽を作れるようになるためのスキルアップに繋げています。 逆にShin Sakiuraとして誰かのサポートで演奏したり楽曲提供をする場合は、共演(共作)するアーティストの方向性を尊重しつつ「こういうの良いと思うんですけどどうですか?」ということも伝えます。 よく一緒に音楽を作るSIRUPや向井太一くんは、日頃聴いている音楽が同じなので細かいコミュニケーションをせずともお互いにやりたいことがわかるんですよね。SIRUPのアルバム『Feel Good』に収録された“Crazy”も、1年半くらい前に彼と出会ったときに趣味が近いことがすぐにわかって、一気に5曲くらい作ったもののひとつです。 曲を作り始めた当初と環境が変わったとすれば、音楽をやる上で自分を理解してくれる仲間が増えたことだと思っています。

向井太一/声が聞こえる(Official Music Video)

──ご自身の楽曲に他のアーティストを迎える場合と、他のアーティストにプロデューサーとして迎えられる場合では、曲作りにおける心持ちにどんな違いがありますか? 自身名義の楽曲に誰かを迎える場合はあくまで僕の曲なので、自分のライブで演奏したときにその曲だけが浮いてしまわないように心がけます。 誰かに曲を提供するときは、「呼ばれている側」としてその曲が収録される作品全体の雰囲気と、その中で僕の曲がどういう位置づけなのかを事前に聞いておきます。さっきも話したSIRUPの“Crazy”は、アルバムの中ではイロモノ的な位置づけだと思うので、この曲でアルバムの幅が広げるためにはどういうトラックにしようか? ということを考えて作りました。 僕はかつてサラリーマンをしていた時期に発注をかける側と依頼を受ける側の両方を経験したのですが、どちらも今の仕事に通ずる部分があるかもしれないですね。

Cruisin'(feat.SIRUP)

──社会人を経験されたというのも驚きです。これまでにさまざまなアーティストとの楽曲制作やライブ活動を重ねてこられましたが、中でも印象的だったかたとのエピソードを教えていただけますか? 選ぶのが難しいですけど……、一緒にバンドをやったり僕の曲にもゲストボーカルに迎えたPAELLASのMATTONは、自分の好きなことをしっかりやりながらもかっこつけずに余裕があって、それが歌にも表れるという、客観的に見てもかっこいいなと思うアーティストです。曲を作っていて「こういうトラックだからこんなメロディーを入れてほしい」と伝えると、想像を超えるものが返ってくるんですけど、彼の歌やインスピレーションにはものすごく説得力があるので、一緒に作品をつくっていてとても刺激になりました。 そもそも彼との出会いは僕がDJとして参加したイベントにPAELLASも出ていて、PAELLASが大好きだったのでMATTONに「一緒に音楽やりたいです!」と話しかけたのが始まりです。彼くらい売れているアーティストなら「忙しくて時間ないから……」と、あしらわれてもおかしくないのに、まだ曲も作ったことのない僕が急に声をかけても「いいよ、やろう」と言ってくれるなんて、すごい人ですよ。 ある意味、誰かと曲を作るときにどのように進めれば良いのかは、MATTONが教えてくれたのかもしれないです。

Shin Sakiura "Sleepless feat. MATTON" (Official Music Video)

omit / u got a spell on me

──Shinさんの手がける楽曲にはさまざまなサウンドがありますが、ご自身が分析する、どの楽曲にも共通するような“Shin Sakiuraらしさ”はありますか? 僕は100%純粋なジャズやヒップホップをできるわけではないので、ジャンルに縛られている意識はなくただ幅広く好きなだけなんですよね。だから「これだけは揺るがない!」というこだわりはないと言えばないんですけど、あるとすれば「多少面倒くさくてもしっかりと手間をかけるところ」ですね。自分だけじゃなくアーティストの友達に聴かせたり、ライブで演奏しても「イケてる!」と思ってもらえるものだけを出そうと思っています。 ──Shinさんのトラックにはボーカルの有無に関わらず印象的な音やフレーズがあるのですが、何度繰り返し聴いても負担にならない軽やかな心地よさがそこに共存していて、絶妙なバランスだなと思います。 ありがとうございます。ただ、僕の曲って完成形を聴くと成立しているけど、実はけっこうめちゃくちゃな作りかたをしているんです(笑)。 ライブのサポートで演奏するときに、そのアーティストの楽曲のパラデータ(楽器ごとに分かれた音声ファイル)をもらうので、他のトラックメイカーがどういうふうに曲を作っているのかがわかるんですけど、CIRRRCLEのA.G.Oくんのトラックなんかは圧倒的に整頓されていて緻密でびっくりします。 僕らは大学でトラックメイキングを学ぶわけではなく、それぞれがオリジナルの方法をとるから人によってやりかたがぜんぜん違うので、他の人の手法を知ると勉強になりますね。

Shin Sakiura

──お話にあったようにShinさんは様々なアーティストのライブをサポートされていますが、Shin Sakiuraとしてお1人で ステージに立たれることもあります。演奏されているのはエレキギターと手元の機材だけという不思議なセットですが、具体的にはどのように音を出しているのですか? エレキギター以外の音がすべてパソコンから出ています。手元で触っているのはAbleton Pushというパソコンの音を出すためのコントローラで、パッドやつまみにいろんな音や効果を割り振って自由に操ることができます。 僕の楽曲には人の声がぶつ切りになったような「声ネタ」が入っているんですが、ああいう音もパッドを叩いて出しています。僕はライブ中にフロアを煽ったりMCで喋ったりしないんですが、お客さんがすごく盛り上がってくれるのは嬉しくもあり、ちょっと不思議でもあります(笑)。 ──先日ライブを拝見していたときにお客さんたちが話していましたが、ギターを弾いていてAbleton Pushに切り替えるときに、持っていたピックを口に咥えるのがかっこいいらしいですよ! 音関係ないやん(笑)! ピックを手元に置いちゃうとパッドを叩くときに邪魔になってしまうし、置いておく場所がないんですよ。でもあれが良いんですね……!

Shin Sakiura

──12月7日(土)にShin Sakiuraとして初めてワンマンライブを行われますが、この公演はお1人ではなくバンドセットで行われるそうですね。 初のワンマンライブなので、色々なアーティストのライブやレコーディングに参加しているドラマーの堀正輝さんと、showmoreのキーボーディスト井上惇志を迎えて初のバンドセットで挑みます。 今日もワンマンライブに向けてリハーサルをしてきたんですが、「だいたいこういう感じで……」とイメージの大枠を伝えるだけでうまく料理してくれる2人なので、すでにめちゃくちゃ良かったです。 このワンマンライブに来てくれるお客さんは、これまでに何かしらの機会に僕のことを知ってくれた人たちだと思うので、僕が1人でやってきたライブとバンドセットの違いを観てほしいです。バンドセットだとできることが増えるし、ワンマンライブを1度経験することによって今後の活動の幅が広がると思うので、楽しみです。 ──今後広がりをみせるであろうShin Sakiuraとしての活動の中で、目標があれば最後にお聞かせください。 僕にはシンガーだったりフロントマンとしての感覚がないので、「このステージに立つぜ!」といった明確な目標はないのですが、いつか自分のやっている音楽が韓国やアメリカといった海外に広がる日が来ればいいなと思います。

Shin Sakiura

Interview/Text by Natsumi Kawashima Photo by Kazuma Kobayashi

Shin Sakiura

東京を拠点に活動するプロデューサー/ギタリスト。バンド活動を経た後、2015年より個人名義でオリジナル楽曲の制作を開始。2017年10月に80KIDZ、TAAR等を擁するレーベルPARKより1stアルバム『Mirror』(2017年10月)、2ndアルバム『Dream』(2019年1月)、2枚のフル・アルバムをリリースした。エモーショナルなギターを基としながらも、HIP HOPやR&Bからインスパイアされたバウンシーなビートとソウル~ファンクを感じさせるムーディーなシンセ・サウンドが心地よく調和されたサウンドで注目を集め、SIRUPのライブをギタリスト/マニュピレーターとしてサポートし、SIRUPや向井太一、s**t kingz、showmore、Rude-α、miwaの楽曲にプロデュース/ギターアレンジで参加するなど活躍の場を広げ、アパレルブランドや企業のPV、CMへの楽曲提供も行っている。

HPTwitterInstagram

RELEASE INFORMATION

Shin Sakiura

Single 『Slide』

PARK 053 / released by PARK 01. Slide feat. maco marets 詳細はこちら

LIVE INFORMATION

Shin Sakiura 1st One Man Live

2019.12.07(土) 代官山UNIT OPEN 18:00 / START 19:00 ADV ¥3,500(税込/All Standing/1Drink別) チケット一般発売日:2019.10.05(土) 12:00 am 〜 お問い合わせ : クリエイティブマン03-3499-6669

イープラスローソンチケットチケットぴあ

詳細はこちら

SHOP INFORMATION

Shin Sakiura

nicolas

東京都世田谷区太子堂4-28-10 鈴木ビル 2F 16:00~24:00 (毎週火曜・第3水曜定休) TEL : 03-6804-0425 HP

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Charlie Lim × WONK対談|日本とシンガポール、アジアでの活動で感じること

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Charlie Lim × WONK

今、アジアの’90年前後生まれで、ことにインディーズを出自に持つアーティストは国をまたいでツアーやライブを行い、交流を果たし、全世界的な音楽シーンの地図を着実に塗り替えつつある。USで最短距離の成功を果たすといったビッグ・ビジネスとはまた違う温度と文脈で育ちつつある興味深い動向だ。 9月にライブで来日したチャーリー・リム(Charlie Lim)はシンガポールの新たなポップシーンを代表するシンガーソングライターで、日本では<SUMMER SONIC 2018>に出演した他、香港、オーストラリア、インドネシア、韓国などのフェス/イベントにも出演している。愁いを帯びたネオソウルにポストロックやエレクトロポップなどを融合した音楽性と、柔らかなボーカルは狭義のジャンルにカテゴライズするのはナンセンスに感じられる。 そこで今回は〈キャロライン・インターナショナル(Caroline International)〉のレーベルメイトでもあり、エクレクティックな音楽性でリンクする部分も多いWONKのメンバーと、同世代ならではの音楽観や同じアジアのアーティストとしての共感、異なるバックグラウンドについて対談を実施した。

Charlie Lim × WONK

Photo by Kana tarumi

Interview: Charlie Lim × WONK

──WONKの皆さんとチャーリー・リムさんが並ぶと5人バンドっぽいですね(笑)。皆さん同世代ですか? 井上 幹(Ba.&Syn. 以下、井上) そうです。多分30歳前後。 ──では同世代としての共通項や、同じアジアのアーティストとしてのビジョンなどを伺えればと思います。まずWONKの皆さんがチャーリー・リムさんの作る音楽に共感できる部分は? 井上 僕は昨日、ライブを拝見して、オリジナルの曲の他にもカバーでマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の曲と、あとJ・ディラ(J Dilla)が所属していたスラム・ヴィレッジ(Slum Village)の“Fall In Love”をやっていたと思うんですけど、それが結構、衝撃でした。というのも、僕らはJ・ディラの音楽をバンドサウンドでやるというところから始めたバンドなので。

Slum Village - Fall In Love

チャーリー・リム(以下、チャーリー) 実は僕がメインで一緒にやってるバンドのメンバーからずっとWONKのことは訊いていたので、WONKがスティーヴ・マックイーン(The Steve McQueens、シンガポールのネオ・ビンテージ・ソウル/ジャズバンド)と共演したショーも観に行きました。とても素晴らしかったし、ショー自体もエネルギッシュですごく楽しめました。 荒田 洸(Dr. 以下、荒田) あと、インタビューでソウルクエリアンズ(The Soulquarians)をチャーリーさんが聴いているというのを読んだんですけど、僕らもめちゃくちゃ聴いてて、その点もかなり被ってますね。 チャーリー コラボレートすべきですよね、僕たち(笑)。 ──チャーリーさんはメルボルン大学ではジャズ・パフォーマンスを専攻していたとか? チャーリー ジャズ・パフォーマンスを専攻していたんですけど、3年生ぐらいになってから、あんまり勉強したくなくなったんです。自分の音楽を作ってる方が楽しくなっちゃって、そっちに集中してましたね(笑)。一応、卒業できるぐらいの勉強はして卒業したんですけど、本当にジャズ・パフォーマンスを真剣に勉強していた訳ではないんですよ。 ──同世代のジャズの音楽性にピンとくるタイミングってあったと思うんですよ。 井上 それこそチャーリーが、オーストラリアのメルボルンで勉強していたなら、ジョーダン・ラカイ(Jordan Rakei)とかハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)とか、新しい世代のジャズを代表するアーティストがしっかりシーンにいたんだろうなと思う。 チャーリー うん。ハイエイタス・カイヨーテはアメイジングなバンドですね。皆さんのスタイル的にも通じるところがあると思うし。残念ながら、ハイエイタス・カイヨーテは最近あまり活動していないみたいですが、もしかしたら何か企んでいるのかな? と思っているのでこれからの動きはとても気になります。 皆さんはロバート・グラスパー(Robert Glasper)もクリス・デイヴ(Chris Dave)も知っていると思うけれど、J・ディラっぽいサウンドがリバイバルとして色々な人が自分たちなりに消化しているのはすごく楽しみですね。

Charlie Lim × WONK

Photo by Kazma Kobayashi

──今、代表的な名前が出たと思うんですが、世界的に同時進行で起こっていたムーブメントですね。 チャーリー 先日、ジェイコブ・コリアー(Jacob Collier)が来日していたみたいだけど、彼もアメイジングだよね。ジャズっていうのは今やユニバーサル・ランゲージになっていると思います。 井上 僕らも割とそうかもしれないですね。ユニバーサル・ランゲージという意味でもそうですし、僕らのバンド内でも共通項は割にそこにあると思う。ジャズをそんなに深く聴いてない僕みたいなメンバーもいるし、詳しいメンバーもいる。で、その次のディアンジェロ(D'Angelo)といったネオソウルの時代からは僕もみんなも同じように影響を受けているんじゃないかと思う。 チャーリー アルトサックス奏者でモダンジャズの創始者であるチャーリー・パーカー(Charlie Parker Jr.)を高校時代に知るきっけかになったのも、日本のジャズバンドのurbのアルバム『urb+bru』で。いわゆるオーセンティックなジャズ音楽というよりも別のフィルターを通してジャズの歴史みたいなものを知って育ってきたんです。 ──あと、他にはチャーリーさんはレディオヘッド(Radiohead)の音楽的な影響も大きいとか。 チャーリー そうですね。昔から聴いているんだけど、トム・ヨーク(Thom Yorke)は素晴らしいソングライターだし、アレンジメントも素晴らしい。様々なジャンルを融合させる力というか、実験的にエレクトロニックやロックを融合しながらも、必ず軸としてエモーションやソウルがあって、それを歌を介して伝えられるという素晴らしい才能がある人だと思う。ソウルって言ってもソウル音楽という意味じゃなくて、魂の部分をきちんと正直にありのままに表現できることが素晴らしい人だと思うし、僕も色々な音楽を混ぜながらも魂の部分を表現していきたいと思う。 ──WONKの皆さんはオルタナティヴなロックからの影響はどれくらいあるんですか? 井上 僕個人ではかなり影響を受けていますね。むしろ、僕はずっとロックを聴いて育ってきまたんです。ロックとディアンジェロを同時に聴いてきたので、そこはWONKのプロダクションにも少なからず影響してるかなと思うところはあると思いますね。

Charlie Lim × WONK

Photo by Kazma Kobayashi

──メンバー各々、影響を受けてきた音楽は違う? 江崎 文武(Key. 以下、江崎) 僕はロックバンドに関しては一切通ってこなかったので、レディオヘッドもオアシス(Oasis)もブラッド・メルドー(Brad Mehldau)を通じて知った感じで(笑)。 だから、彼(チャーリー)は1人でやっているけど、僕らは4人でやっているからそれぞれ全然違う音楽を聴いてきて、その結果が色々混ざっているんです。でも、結局みんなの折衷をいい形で出す、いろんなジャンルをまとめていいものを作るっていう姿勢は、かなり近しいものがあるのかなと思います。 チャーリー 実はソロ・アーティストであるというのは幸運でもあり、不幸でもあるときがあって、バンドの方々を見ているとバンドのメンバーで色々とクリエイティヴなことをするときっていうのはみんなで協力し合うこともできる。もちろんバンドは、違うクリエイティヴな志向があってぶつかり合ってしまうことがあるかもしれないけども、それがうまく融合されたときって、とてつもなく素晴らしいものが生まれるだろうから、そういう意味では羨ましい。やっぱり、1人でやっていると部屋でずっと悶々とすることがあるからね。 ──長塚さんにお聞きするんですけど、ご自身がソロのシンガーソングライターだったらいかがですか? 長塚健斗(Vo.、以下、長塚) チャーリーのライブを見て思ったのは、バンド形態だったんですけど、途中で「タバコ・ブレイクだよ」って言ってバンドを休ませて1人で弾き語りしていたんです。僕はその曲にすごく痺れたんですよ。そこが僕にはできない。僕らはバンドなので、シンガーソングライターのライブってできないから、それは羨ましいというか。 井上 どういうことだ?(笑) 荒田 やればいいじゃない(笑)。

Charlie Lim × WONK

Photo by Kazma Kobayashi

──話題を変えるんですが、今、皆さんが音楽でも音楽を含めて気になっていることはなんですか? チャーリー シンガポールって国として若い国であるので、日本と違って国民すべてがまだアイデンティティを模索してる段階なんですね。政府から第一言語を英語にしろということで、アーティストが音楽を作る時は英語で歌わなくちゃいけない。そして、その音楽を欧米に持っていくと、ネイティブの発音とは違うのですごく批判をされたりすることは事実としてあるんです。そういった意味ではシンガポールのローカルのアーティストはすごく苦労していると感じますね。 ──そういう実情があるんですね。 チャーリー 先日まで台湾でパフォーマンスをしていたんですけど、台湾にはいわゆるローカルな言語で歌っているアーティストをサポートしている動きは自然とありますね。今、東南アジアはすごく成長しているじゃないですか。その中で、自分たちのアイデンティティにもっと誇りを持って、それをサポートしあえる状況が生まれるといいですね。 僕たちは欧米の音楽から影響を受けてはいるけれども、そこから生まれるのはオリジナルな音楽だっていう誇りを持って、地元の人が応援してくれる動きが生まれたら嬉しいなと思います。

Charlie Lim × WONK

Photo by Kana tarumi

Charlie Lim × WONK

Photo by Kana tarumi

──日本とはまた状況が違いますね。 井上 日本は日本語という歴史の長い言語を使ってきた国なので、そこで生まれた僕たちが英語で歌っているということは国内の人から見ると受け入れられにくいというか。日本語じゃないから聴かないって人はかなり日本にはいます。だから、その悩みは近いようで遠いようで面白いなと思いましたね。 日本は、言語だけじゃなくてあらゆる面で問題があって、どうやったら自分たちの音楽を外の人に聴いてもらえるか? という所を今なんとかしようとしていますよね。もしかしたらその問題に近しいのかもしれない。 江崎 言語でいえば、チャーリーさんの“Zero-Sum”って曲は京急の駅の音がサンプリングされていて、あと“Welcome Home“のMVでは日本語の字幕が流れたり、すごく日本寄りだなと思いました。 チャーリー 僕が日本を尊敬するのは、文化的な部分でこだわりを見せて貫く職人的な繊細な部分で、それは音楽だけじゃなくあらゆる部分で感じるからなんです。

Charlie Lim - Zero-Sum

Charlie Lim - Welcome Home [Japanese Subs]

──どうやら隣の芝生は青く見えるというジレンマが付きまとうようですね。 チャーリー 例えばアメリカなんて、僕たちミュージシャンにとっては一つの夢で、子供の頃からグラミーとかを見て、受賞したいって夢を持ちながらやってきているけど、取れたら取れたで、「中国の方がマーケットが大きいから、中国に行った方がいい」なんて言われるのがオチで。そういうジレンマはあると思います。でも、そんなことより大事なのは、ミュージシャンとしての旅をして、新しいファンに1人ずつ出会って、少しずつ成長していくことだから。 ──WONKの皆さんがシンガポールでライブをされた時の印象はいかがでしたか? 井上 僕らがやっている音楽のリスナーの人口はまだまだシンガポールでは少ないのかなと思ったんですけど、それは日本でも同じことが言えると思います。ただ、間違いなくシンガポールのシーンみたいなものはあるなと感じましたね。ライブをやっていた側の僕らからすると渋谷でやるのもシンガポールでやるのも、パリでやるのもあんまり違いは感じないんです。 江崎 日本って割とサブカルチャーというかアンダーグラウンドなシーンを国が支援していくことはないので、エスプラネード(シンガポールにある総合芸術文化施設)や、公的な機関が関わっているような場所で、国として僕らのようなバンドを招いて交流を産もうという気概がすごくいいなと思いましたね。これから成熟していく市場だし、めちゃめちゃいい姿勢だなと思いました。 チャーリー シンガポールが最近、アンダーグラウンドのシーンだったり、サブカルチャー的なところを国が少しずつサポートするようになってきたっていうのは、今、この時代に一番重要なのは文化的な交流であるということを国自体が認めるようになってきたからなんです。例えば、自分が海外ツアーに出るときは旅費の一部を少し援助してくれたりするようになってきて。でも当然、申請がすごく多いから援助をもらうことはすごく大変なんだけど、そういうシステムが一応できているというところは国としてあるかな。 ──ところでWONKは〈キャロライン・インターナショナル〉日本第1弾アーティストですし、これからもし一緒にできることがあれば何をやってみたいですか? 井上 日本でもシンガポールでも対バンしたい。 チャーリー 歌を一緒に作れたら嬉しいし、いつでもバンドの人たちと仕事をすると楽しいんです。新しいバンドみたいに、みなさんと一緒に1曲作れたらすごく嬉しいなと思う。 長塚 やりましょう(笑)。

Charlie Lim × WONK

Photo by Kazma Kobayasi

<BIG ROMANTIC JAZZ FESTIVAL 2020 PRE-EVENT Charlie Lim Japan Tour「Charlie Lim x Tendre」 ~ Big Romantic Jazz #2>

Charlie Lim SETLIST

Welcome Home Zero-sum What Can I Do Choices Blah Blah Blues Human Nature(Michael Jackson cover) Bitter Pedestal Light Breaks In

Charlie Lim × WONK

Photo by Kana tarumi

Text by 石角 友香 Photo by Kazuma Kobayashi、Kana Tarumi(Moon Romantic)

Charlie Lim × WONK

Charlie Lim シンガポール出身のシンガー・ソングライター/プロデューサー。幼少期からピアノを始め、14歳の時にオーストラリアに渡り、メルボルンの大学でジャズ・パフォーマンスを専攻、現在はシンガポールを拠点に活動している。2011年にメジャー・デビューEP、2015年にリリースしたデビューAL『TIME/SPACE』は、シンガポール最大手メディア、ザ・ストレーツ・タイムズ紙から“ベスト・ポップ・アルバム”と称され、シンガポールのiTunesチャートで1位を獲得した。3年後の2018年には2nd AL『CHECK-HOOK』をリリースし、シンガポール建国記念パレードを含む海外の主要な音楽フェスティバルに出演、チャーリーの音楽はアジア全体に渡り、広まった。更に、今だにシンガポールのアーティストが成し得たことのないモザイク・ミュージック・フェスティバルでのショーを完売を達成し、エスプラネード・コンサート・ホールでヘッドライナーのショーを実現するという2つの大きな出来事を成し遂げた。 HPHP(JP)facebookTwitterInstagramYouTube

Charlie Lim × WONK

WONK 東京を拠点に活動するエクスペリメンタル・ソウルバンド。2016年9月に全国リリースした自身初のフルアルバム『Sphere』は第9回 CDショップ大賞 ジャズ賞を受賞。ジャズやソウル、ヒップホップなど様々な音楽に影響を感じさせる彼らの幅広い音楽性は多方面から注目されておりデビューわずかながら、2017年夏には第16回 東京JAZZやBlue Note JAZZ FESTIVAL 2017、SUMMER SONIC 2017、FUJI ROCK FESTIVAL 2018等に出演。また米Blue Note Recordsを代表するシンガーJosé Jamesの最新アルバム『Love in a Time of Madness』のリードトラック 『Live Your Fantasy』のリミックスを担当、ヨーロッパ2大都市公演を成功させるなど、国内に留まらず海外からも多くの注目を集めている。 HPTwitterInstagram

WONK - Orange Mug(Official Audio)

WONK - Sweeter, More Bitter(Official Audio)
WONK - Blue Moon(Official Audio)

RELEASE INFORATION

Charlie Lim × WONK

CHECK-HOOK

2018.10.12(金)発売 Charli Lim

TRACKLIST 1. Welcome Home 2. Circles 3. Zero-Sum 4. Better Dead Than A Damsel 5. Least Of You 6. Premonition 7. Unconditional

SpotifyApple Music

Charlie Lim × WONK

Moon Dance

2019.07.31(水)発売中 WONK ¥2,000(tax incl.)

TRACKLIST 1.Blue Moon 2.Orange Mug 3.Sweeter, More Bitter 4.Mad Puppet 5.Phantom Lane

購入/ストリーミングはこちら

EVENT INFORMATION

WONK’s Playhouse

2019.12.02(月) OPEN 18:30/START 19:30 LIQUIDROOM ADV ¥3,800/DOOR ¥4,500(1ドリンク別) LINEUP:WONK and many special guests TICKET:チケットぴあローソンチケットイープラス

詳細はこちら

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Amazon Fashionの新プログラム「The Drop」から鈴木えみが手がけるコレクションがローンチ!デザイナーとしての素顔に迫る

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鈴木えみ

世界各国のインフルエンサーたちがデザインを手がけたコレクションをお届けするプログラム「The Drop」が、2019年6月よりAmazon Fashionでスタートした。各インフルエンサーのスタイルと、その国ならではのトレンドが反映された特別なコレクションは、30時間限定販売で注文数のみ生産するサスティナブルなシステムも特徴の一つ。さらに受注予定数に達すれば早めに受付を終了する。 そんな話題の「The Drop」が日本代表のインフルエンサーとして白羽の矢を立てたのが、モデルでデザイナーの鈴木えみ。Instagramのフォロワー数は110万人を超え、近年はモデルだけでなく東京を代表するデザイナーとしても頭角を表している鈴木えみに、「The Drop」について、そしてデザイナーとしてのキャリアについて話を訊いた。

鈴木えみ

Interview:鈴木えみ

──2017AWより自身のブランド「Lautashi(ラウタシー)」をスタートさせましたが、ブランドを立ち上げたキッカケを教えてください。 私は27歳で結婚、28歳で出産を経験しました。子育てをしていく上で、改めて自分が社会における役割や「仕事」について考えるようになり、モデル以外に何かもう一つ、表現する軸が欲しいと感じるようになりました。モデルをはじめた当初、私はファッション誌を読むタイプでもなく突然飛び込んだ世界だったのですが、モデルとして約20年膨大な数の洋服を身に纏い、“女性像を着替える”仕事をこなす中で、洋服を着ることで前向きになれたり明るくなれるといった、ファッションのパワーを実感することができました。このファッションの素晴らしさ、力を、今度は自分が作った洋服で多くの人に届けたいと思いブランドをスタートさせました。 ──「Lautashi」のブランドコンセプトは何でしょう? あくまでも“日常着”であることを目指しています。日常の中で、着ることで背中を押してもらえるような洋服ですね。着心地の良さを追求した機能的なブランドや、アートのように買って眺めるタイプのブランドとはまた違うと思います。 ──日常に寄り添う洋服、ということですね。 そうですね。決して安い価格帯ではないので、せっかく購入してもらったからにはたくさん着て、洋服から色んなパワーを感じ取ってもらいたいです。

鈴木えみ
鈴木えみ

──ブランドスタートから3年目を迎え、デザイナーの仕事とモデル業との違いを実感することはありますか? モデルと比べて、自分で決定しなければならない項目は比べ物にならないくらい多いですね。物理的に時間を取られることも多いです。あとは、自分の頭の中で思い描いたものを人に伝えて、手元にそれが形として届くまでの作業では、間に人が多く関われば関わるほど変化していく。それは良い方向に行くこともあれば、思わぬ方向に行くこともあるし、理想の形にするために周りの人たちと意見をすり合わせる作業は、本当に大変だなと感じました。コミュニケーション力だったり知識量だったり、自分のスキルが試されるので。 ──話をまとめたりリーダーシップをとることは得意な方ですか? 自分で自分を「リーダーシップがとれるタイプ」とは言いづらいですが(笑)向いてるかは分かりませんが、元々何でも楽しんでやれるタイプなので、大変ではありますがそれが楽しかったりはしますね。

鈴木えみ

──それでは次に、今回「The Drop」で手がけたコレクションのコンセプトを教えてください。 「Lautashi」とは違ったものが作れたら良いなと思いスタートしました。結果としてドレッシーな仕上がりになったと思います。他のインフルエンサーの方は、西海岸の太陽や広い空が似合うようなカジュアルな洋服が多いように感じたので。今回せっかく日本で唯一選んで頂いたので、ビル群が広がる大都会で華やかに彩ってくれる、そんな洋服を目指しました。 ──コレクション制作にあたり、イメージした女性像はありましたか? 自分の中でイメージしていたのは、「アートギャラリーで働いている女性」ですね。アートが大好きでおしゃれも自分から楽しんでいて、同時に知性も持ち合わせている。そんな女性です。 ──今回全8型を制作されていますが、特にお気に入りのアイテムはありますか? オーガンジー素材を使ったアイテムは絶対に作りたいと思っていたので、ロング丈のコートドレスがお気に入りですね。あとは黒のコットン地のドレス。普段一番着やすいアイテムかなと思います。

鈴木えみ 鈴木えみ
鈴木えみ 鈴木えみ

──ブラックドレスは定番アイテムとして使いやすいアイテムですよね。「Lautashi」は“日常着”とのことでしたが、「The Drop」のアイテムはどのようなシーンを想定して制作されたのでしょうか? 「Lautashi」よりも、もう少し“特別感”のある洋服だと思います。もちろん毎日着てもらえたら嬉しいですが、ツヤ感のあるピンクのワンピースとかは、普段なかなか取り入れないタイプの洋服だと思うので。イベントが増える年末などに、ぜひ着てもらいたいですね。

鈴木えみ 鈴木えみ

──確かに今回のコレクションは、年末を華やかに彩ってくれるアイテムがたくさん揃っていますね。ちなみに「The Drop」では各インフルエンサーがそれぞれの国のトレンドを取り入れたコレクションを展開していますが、鈴木さんが注目した日本のトレンドは何でしたか? 日本はファッションが細分化されているし、それをミックスしたりもするので、トレンドという明確なものがないように感じます。であれば、トレンドという括りに囚われず「東京の街に似合っている洋服」を作りたいなと。 ──なるほど、トレンドないことが日本の特徴かもしれないですね。 そうですね。ただ、首を詰まり気味にしたのは日本的なデザインかなと思います。他のインフルエンサーの方のデザインは、ボディコンシャスで胸元が空いているものが多かったので、そこが違いではないでしょうか。 ──女性らしいデザインという点で言えば、今フェミニズムのブームが世界中で起こっていて、「女性」に注目が集まる時代に入っていると思います。鈴木さんのデザインする洋服にも「凜とした女性の強さ」を感じますが、ご自身がファッションデザインを通して表現したい「女性像」はありますか? 私は自分の母がずっと働いていたので、「女性は弱い立場にある」という概念がなく育ちました。両親は共働きで、父が料理も担当していました。「自分の欲しいものは自分で買う」だったり、女性が自立していることが自分の中では当たり前の価値観なので、それがデザインにも反映されているんだと思います。だから意識的に狙っている訳ではないんですよね。それは「Lautashi」でも「The Drop」の洋服でも同じで、私はきっと何を作っても媚びている甘さの洋服は作らないと思いますね。

鈴木えみ

──デザイナー・モデル以外の活動についてもお伺いさせて下さい。「The Drop」でもAmazon Fashionが注目する日本のインフルエンサーとして選ばれましたが、影響力のあるインフルエンサーとして、普段の投稿で気をつけていることはありますか? 仕事でインスタグラマーとして発信することが多いのですが、Instagramのフォロワーの皆さんは、プライベート寄りの投稿を期待している方が多いと感じています。なので投稿がプライベートなものなのか、お仕事なのか理解してもらえるような工夫をしています。そして仕事で引き受ける投稿に関しては、リアルな声を届けること。だから本当に良いなと思うものしか引き受けません。嘘はつきたくないので、フォロワーの方との信頼関係を大切にしています。 ──Instagramで投稿する際のこだわりはありますか? 投稿を一覧で見たときの、ヴィジュアルの統一感は心がけていますね。ただ昔と比べると最近は、フォロワー数も多いので気軽に投稿するというより、完成度の高いものを発信しなければというプレッシャーを感じることもあります。なので今後はもう少しカジュアルな投稿を増やしたいなと思っています。その方が見て下さっている方も楽しいと思うので。 ──最後に、今後デザイナーとして挑戦したいことはありますか? 「Lautashi」の洋服に対する海外の人たちの反応を見てみたいですね。あとはカスタマーの人たちとの関係を密にしていきたいと思っているので、一緒に洋服を作る過程を見る工場見学を企画したり。「Lautashi」の洋服を通して、何か心に残る体験を感じ取ってもらいたいので、それを実現できる仕掛け作りをしたいと思っています。

鈴木えみ

Photo by Madoka Shibazaki Text by Sumire Fujiwara

「The Drop」について

The Dropは、世界各国のインフルエンサーたちがデザインを手掛けたコレクションをお届けするプログラムです。コレクションの注文受付は30時間限定で、受注予定数に達した場合は終了が早まることも。コレクションの商品はお客様から注文があった数量のみ生産します。 日本から選出されたファッションインフルエンサーは、Lautashiのデザイナーとして活躍する鈴木えみさん。The Dropには最新コレクションのコーデに必要なアイテム、「The Drop定番アイテム」もご用意しています。 販売開始時刻に関しては「The Drop」トップページからSMS通知にご登録いただくとご案内が届きます。   Instagram

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鈴木えみ 1985年に生まれ、13歳でモデルデビュー。 以降数々のファッション誌で活躍し、同性を中心に絶大な支持を集める。 プライベートのファッションにもファンが多く、過去には8冊の書籍をリリースしている。 これまで膨大な数の洋服に袖を通し、自身が体験してきたファッションのパワーを伝えるべく、 2017年にLautashiをスタートさせる。

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Starcrawler アロウ・デ・ワイルドが最新作で見出したボーカルとしての真髄

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「もし君が、ロックンロールはもう死にかけで、本来の遊び心や原始的なエネルギーを失っていると思うのなら、それはまだスタークローラー(Starcrawler)に出会っていないということだ」──そう語っていた〈ラフ・トレード(Rough Trade)〉の創設者、ジェフ・トラヴィス(Geoff Travis)の目に狂いはなかった。この名門レーベルが送り出した4人組は、2018年のデビュー・アルバム『Starcrawler』を皮切りに、狂気の血まみれパフォーマンスと荒削りなロックンロールで世界中を震撼させる。ここ日本でも初のツアーは軒並み完売し、昨年の<FUJI ROCK FESTIVAL’18>でも度肝を抜くステージを披露。身長188センチのヴォーカリスト、アロウ・デ・ワイルド(Arrow de Wilde)がステージ上でかますブリッジも大いに評判となった。 あれからおよそ1年、スタークローラーが早くも2ndアルバム『Devour You』をリリースする。生々しさと疾走感はそのままに、音楽性はよりハードかつメロディアスなものに。歌・リフ・リズムと練り込まれた本作は、イロモノ的なイメージを裏切るように、ロック・アルバムとして王道感すら漂う一枚となった。ちなみに、本作のプロデューサーはニック・ローネイ。80年代のポスト・パンク期からパブリック・イメージ・リミテッド(Public Image Ltd)やキリング・ジョーク(Killing Joke)などを手がけ、近年はニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズ(Nick Cave and the Bad Seeds)やヤー・ヤー・ヤーズ(Yeah Yeah Yeahs)に関与。獰猛かつ艶やかサウンドメイクで知られる人物である。

この新作を巡っては、きっと誰もが「大人になってつまらなくなった」パターンを心配をしていたはず。このあとのインタヴューを読めば、それが杞憂であることがよくわかるだろう。アルバムの制作背景はもちろん、フェミニズム、故郷LAへの想い、話題の映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』まで、アロウが奔放に語ってくれた。

Starcrawler - She Gets Around

Interview:Starcrawler

──瀕死状態のあなたをドクターが治療している写真がInstagramにありますよね。<グラストンベリー・フェスティバル>での出来事みたいですけど、あれは本当に死にそうだったんですか? アロウ・デ・ワイルド(Vo. 以下、アロウ) 実を言うと、その医者は私の友達。あれは自分たちで計画したパフォーマンスだったの。でも、みんなにはヤバいことが起きてたって言ってもいいよ(笑)。オーディエンスを興奮させたかったし、やっぱり<グラストンベリー・フェスティバル>には100組以上のバンドが出てるから、何か特別な事をしないとみんなの記憶に残れないだろうなと思って。ステージ上で死ねば話題になるかなと思ったんだよね(笑)。

──あれだけステージ・アクションが激しいから、どこかで死んだと言われたら信じそうですよ。ケガとか日常茶飯事じゃないですか? アロウ うん、ケガはよくする(笑)。その中でも一番酷かったのは<サウス・バイ・サウスウエスト>の時だったかな。ステージ上で滑って転んだ時に頭を打って、頭の横がかなり大きく腫れ上がったの。残りのパフォーマンスは立たずにそのままステージに座り込んだ状態でやって、ライヴが終わってすぐに病院に行ったよ。全然大丈夫だったんだけどね。ただ、見た目は酷かったし、すごく痛かったけど大きな怪我じゃなかったよ。 ──ニューアルバムのリード曲“Bet My Brains”のミュージック・ビデオでも、頭をマイクで叩いたり、ビニール袋を被って死にそうになってる演技をしていますよね。 アロウ 撮影自体は楽しかったんだけど、あのMVはいきなり撮ることが決まったから色々とギリギリだったの。ツアー中にレーベルから突然言われて、本当は一回(LAに)帰る予定だったのにそのままロンドンに残って、ドタバタしながらの撮影だった。しかも結局、MVを撮り終えたあと、そのまま家に帰らずツアーを続ける羽目になって。大変だったよ。みんな睡眠不足で撮影に臨んだから、かなり素の表情で映ってるんだよね(笑)。

Starcrawler - Bet My Brains

──ニューアルバムではサウンド面が大きく進化している印象です。音楽的なテーマやコンセプトについて教えてください。 アロウ すべての曲がキャッチーで、最高にかっこいいロック・レコードを作ること。それ以外は特になかったかな。その通りの内容に仕上がったと思うし。私はそもそも、「人に聴いてもらえなくてもいいや」ってレベルの曲は、絶対にアルバムに入れたくないの。そんな曲を入れる意味ある? って思う。だから、アルバムを作るにあたって一番意識したのは、繋ぎのためだけの曲を入れないことだった。 あと、今回のアルバムは前回とちょっとやり方を変えて、(アイデアが)降ってきた曲は全部信じるスタイルでやってみたの。“No More Pennies”とかちょっとカントリーっぽいサウンドに仕上がったから、「変かな? やめた方いいかな?」ってみんなで話し合った。でもイイ曲だし、そんなのどうでもいいやと思ってアルバムに入れちゃった。

Starcrawler - No More Pennies

──破天荒なロックンロール・バンドが、2作目で小さくまとまって肩透かし……というパターンは昔から多いですよね。でも、何一つ変化してないのもどうかなと。その難しい綱渡りを見事にクリアしている気がしました。 アロウ 私もそう思うわ。個人的には(前作と)全く違うものを作ったとは思わないんだよね。私たちのサウンドを残しながら成長した姿を見せたいけど、あんまりかけ離れすぎたものは作りたくなかった。2枚目をブロードウェイ・アルバムにするとか、そういうの微妙じゃない(笑)? ──前作と比べて、音楽面でチャレンジしたことは? アロウ 私の場合は、テンポがゆっくりな曲が結構チャレンジングだったな。今までにない感じの曲だし。割と好きなんだけど、ライヴでどう歌うかって部分で苦戦してる。でも、すごく楽しいの。しばらくこのチャレンジと向き合っていくと思う。 ──実際、あなたは派手なパフォーマンスばかり注目されがちですけど、この新作ではヴォーカルがだいぶ表情豊かになった気がします。 アロウ 私のヴォーカルは確実に変わったと思うよ。物凄い数のライヴをこなしてきたおかげで声も成長したし、それをアピールしたかったというのもある。以前はヴォーカルのパートもかなりシンプルだったし、そこまで歌を重視してなかったんだけど、今は歌うことがとても楽しいんだ。これまではパフォーマンス重視でやってきたけど、今は両方とも大事。今回のアルバムでいうと、“Born Asleep”でのヴォーカルがお気に入りかな。あとは“Bet My Brains”も好き。 ──今回のアルバムについて、特に影響を受けた音楽を教えてください。 アロウ ジェーンズ・アディクション(Jane’s Addiction)、ブラック・サバス(Black Sabbath)、ザ・ディスティラーズ(The Distillers)……他のメンバーはわからないけど、私は今まで好きだった音楽ばかり聴いてる。新しいのは聴いてないね。 ──同郷LAの先輩、エル・セブン(L7)のドニータ・スパークス(Donita Sparks)と一緒に映っている写真を見かけました(エル・セブンの20年ぶりの新作『Scatter the Rats』もニック・ローネイがプロデュース)。彼女たちはフェミニストであることを主張してきたバンドとしても知られていますよね。あなたのパフォーマンスに勇気づけられる女性も多いと思いますが、自分にとって女性性やフェミニズムは重要なテーマだと言えそうですか? アロウ そうね。私の表現の仕方は他の人と違うだろうけど。「ガールバンド」とか「女性ヴォーカル・バンド」って言われるのは嫌い。そういうのは逆フェミニズムだと思う。バンドなのに女性ってだけで別のカテゴリーに属させられている感じがする。なんで普通に「バンド」じゃダメなの? クイーン(Queen)やレッド・ツェッペリン(Led Zepplin)をわざわざ「男性バンド」って誰も言わないでしょ? 女性も男性も平等なのであれば全員「バンド」でいいよね、余計なネーミングはいらない。 本当に不思議なの。私以外のメンバーは全員男で、明らかに男の方が多いのに、それでも「ガールバンド」って言われるんだよ? どう見たって男性バンドの方が言葉的に合ってるし(笑)、女性がどれだけ性的なものとして見られているのかよくわかるでしょ。スタークローラーでは全員が平等だし、みんな同じくらい努力している。それなのに、女っていう部分でしか見てない人が多いんだよね。


──前作には地元へのラヴレターともいえる“I Love LA”という曲があったのに対し、今回の新作に“Hollywood Ending”という曲が収められているのも気になりました。 アロウ あれは親友が私の元カレとヤったと知ったあとに書いた曲。別に未練があったとかハートブレイクを感じたとかそういうのじゃなくて、いつになったらこの男とのクソみたいなドラマが終わるんだよ、もうどうでもいいのにって言う気持ちで書いたの。「いつ終わるの? そしていつ始まるの?」って感じ。新しいスタートを求めている曲だね。

Starcrawler - Hollywood Ending

──プレス資料であなたは、「私が生まれ育ったロサンゼルスは、今ではある意味、消えかかっている」と語っていました。このコメントが意味するところを詳しく教えてもらえますか? アロウ たぶんどこでも、それこそ日本でも起こる事だと思うんだけど、何かが流行ったりカッコイイって話題になりだすと、古き良きロマン溢れる場所が壊されて別の物にされてしまうよね。タコス・スタンドがTOP SHOPになったり、サンテリア・オカルト・ショップが流行りの喫茶店になったり。ここ数年のLAでは本当によく見られる光景で、つい2週間前まであった店がなくなって、トレンドに乗った店に変わってたりして凄く残念なの。 想像してみて。自分が生まれて育った街に大好きな場所があって、地味な場所かも知れないけどそこに対するセンチメンタルな気持ちがあって……なのに、ある日突然流行りの喫茶店になっていた。そんな気持ち。
 ──LAといえば、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ってご覧になりました? アロウ 観た観た。私はあまり好きじゃなかったな。基本的に3時間もある映画は全部好きじゃないんだよね。最後のくだりは好きだったけど、(監督の)タランティーノっぽさを感じたのはそのシーンだけだったかも。そこ以外は「60年代のLAをお見せしますよ〜」って感じでいかにもSONYの映画っぽいし、スタイリングもそんなにいいとは思わなかった。チャールズ・マンソン一族の描写も、髪や足の汚れ具合が全然足りてないよね。FOREVER 21から出てきた感というか(笑)。

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』予告2 8月30日(金)公開

──あなたが演じたほうが説得力ありそうですね。 アロウ ディスりまくるつもりはないよ? 『ハリウッド・ブルバード』を再現したシーンとかカッコよかったし、演技もよかったところが多かったと思う。俳優どうこうよりもプランニングと実行の部分が微妙だったかなーって感じ。 ──あの映画にもそういうメッセージが込められているようですが、最近は何かと規制や自粛が求められるのもあって、過激な描写や悪趣味な表現がしづらくなっている気がします。スタークローラーはロックンロールを通じて、そういった風潮に抗っているようにも映るんですけど、その辺りどうでしょう? アロウ 意識してやっていると言いたいんだけど、私たちはロックが作りたくて、というかロックしか作れないからやってるんだよね。私たちから出てくる音楽がロックなだけ。でも、そりゃもちろんそうだったら……かっこいいよね(笑)。 ──自分が表現するうえで、リアルとファンタジーのどちらがより重要だと思います? アロウ 正直言ってわからないけど、半々かな。私は100%リアルのなかでは生きてないんだよね。半分は常に妄想とかしてるし、妄想の世界のなかで生きている。でも、100%妄想で生きるには薬をやるか、生きるのを辞めるしかないんじゃないかな。ちょっとはリアリストでいなきゃいけないと思うの。大人になるためにファンタジーやイマジネーションを捨ててしまう人を見ると悲しい気持ちになるよね。だから私は50/50。 ──これまで何度も日本を訪れてきましたよね。ピーチコーラにハマったのはよく知っていますが、それ以外で印象的なエピソードを教えてください。 アロウ たくさんありすぎて、どれを話せばいいかわからないな。でも一番は初めて名古屋でライヴをした時だね。日本でやったライヴは全部最高だったけど、名古屋が一番ワイルドだったの。壁に頭を叩きつつけて血まみれになっている男の人がいたり、ライヴ中にずっと私たちのお尻を叩いてくる人もいたりして、すごく楽しいショーだった。東京より小さな街って聞いていたから盛り上がるのか不安だったけど、本当にクレイジーで最高だったよ。 ──ニュー・アルバムを提げての来日ツアーでは、どんなライヴが期待できそうでしょうか? アロウ それは実際に観るまでわからないよ! 記憶に残るライヴにはなると思うけど。具体的に何が起きるのか、私もステージに立ってみないとわからないからなんとも言えない。でも、観なきゃ損するよ!

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credit Gilbert Trejo.

Text by Toshiya Oguma

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credit Autumn De Wilde

Starcrawler

2015年にロサンゼルスで結成されたスタークローラー。そのインパクトのあるライブ・パフォーマンスは、エルトン・ジョン、マイ・ケミカル・ロマンスのジェラルド・ウェイ、シャーリー・マンソンと言った大物アーティストたちがこぞって支持を表明、またベック、フー・ファイターズ、スプーン、ザ・ディスティラーズ、MC5などの前座を務めるバンドへと急成長を果たした。2018年1月に発売された1stアルバム『Starcrawler』は各所で大絶賛され、その勢いを駆ってここ日本でも初のジャパン・ツアー(東京・名古屋・京都・大阪)は追加公演も含め全5公演ソールド・アウトを達成、夏にはフジロックフェスティバル'18に再来日を果たした。

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RELEASE INFORMATION

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Devour You

Starcrawler RT0074CDJP ROUGH TRADE/BEAT RECORDS ¥2,200(+tax) 国内盤特典: ボーナストラック追加収録/解説・歌詞対訳冊子封入 1. Lizzy 2. Bet My Brains 3. Home Alone 4. No More Pennies 5. You Dig Yours 6. Toy Teenager 7. Hollywood Ending 8. She Gets Around 9. I Don’t Need You 10. Rich Taste 11. Born Asleep 12. Tank Top 13. Call Me A Baby 14. Pet Sematary *Bonus Track for Japan 詳細はこちら

EVENT INFORMATION

STARCRAWLER JAPAN TOUR 2019

2019.12.04(水) OPEN 18:00 / START 19:00 東京・恵比寿LIQUIDROOM ADV ¥6,000(スタンディング・1ドリンク別)

チケットぴあローソンチケットイープラス

2019.12.05(木) OPEN 18:00 / START 19:00 大阪・梅田バナナホール ADV ¥6,000(スタンディング・1ドリンク別)

チケットぴあローソンチケットイープラス

2019.12.06(金) OPEN 18:00 / START 19:00 愛知・名古屋CLUB QUATTRO ADV ¥6,000(スタンディング・1ドリンク別)

チケットぴあローソンチケットイープラス

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映画『ガリーボーイ』ゾーヤー・アクタル監督インタビュー|インドで誰もが共感するヒップホップ映画が誕生するまで

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ガリーボーイ

インド・ムンバイのスラム街で育った青年がヒップホップと出会い、人生を変えてゆく物語『ガリーボーイ』。「インド版『8 Mile』」とも評される本作は、映画批評サイト「Rotten Tomato」で満足度100%(2019.9.25時点)を叩き出し、2019年公開のインド映画で世界興収入第2位を記録するなど、すでに高い評価を得ている。

『ガリーボーイ』予告編

Qeticでは、10月18日(金)の日本公開を記念して来日した監督のゾーヤー・アクタル(Zoya Akhtar 以下、アクタル監督)に単独インタビューを行い、本作を貫くふたつの軸、すなわちヒップホップと格差社会についての考えを聞くと同時に、制作の裏側についても語ってもらった。

ガリーボーイ

Interview:ゾーヤー・アクタル(映画『ガリーボーイ 』監督)

Naezy(ネィズィー)とDivine(ディヴァイン)には繋がりを感じた

━━本作は、インドの人気ラッパー・Naezy(ネィズィー)とDivine(ディヴァイン)をモデルにしたストーリーです。この2人について映画を撮ろうと思ったきっかけや決め手は何だったのでしょうか? ネィズィーは私にとって、初めて出会ったムンバイのアンダーグラウンドラップシーンの当事者だったんです。まずは、彼のずば抜けた作詞能力とフロウのテクニックに惹かれました。そして2人目に出会ったのがディヴァインでした。インタビューをしたら両者共に、すごく説得力があって話に引き込まれたんです。2人ともすごく正直で、なおかつ才能に溢れていて、それが手に取るようにわかる。彼らとは繋がりを感じました。だから、この2人を中心に映画を進めていくことにしたんです。 ━━「繋がり」というのは、監督と2人の繋がりですか? 私と、私たちチームと彼らの繋がりです。他のラッパーにインタビューをする時は、いわゆるQ&Aみたいになることが多いんです。でも、彼らとは本当に会話をするようにインタビューができた。彼らは、自分たちが育った場所やいつも遊んでいるところ、友達がいるところなど、非常に個人的なことを教えてくれたんです。それから、お互いのアートに関する話ができて打ち解けた面もあったと思います。アーティストとして互いに惚れ合ったということ、それがいちばん大事だと思います。 ━━アクタル監督は、普段からよくインタビューをされるんですか? インタビューはよくしますが、題材によりますね。今回は私がそれほどインドのアンダーグラウンドラップシーンに明るいわけではなかったので、まずはネィズィーとディヴァインの2人にインタビューをして、それからどんなストーリーが作り出せるかを考えました。

Mere Gully Mein - DIVINE feat. Naezy

コピーではなく、自分の正直な真実をラップすること

━━ちなみに、アクタル監督はいつ、どういうきっかけでヒップホップを好きになったんでしょうか。 やはり90年代からですね。最初はスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)、フージーズ(The Fugees)、2パック(2Pac)あたりから聴きはじめて、その後エミネム(Eminem)やサイプレスヒル(Cypress Hill)へ行き、近年はケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)、カニエ・ウェスト(Kanye West)、ナズ(NAS)、リル・ウェイン(Lil Wayne)なんかをよく聴いています。 彼らは非常にオリジナルですよね。本当に何もないところから、自分の生い立ちなどを歌ってラップする。そこに凄くストーリーを感じます。それは、当時の主流の音楽シーンでは誰もやっていなかったことだと思うんです。ネィズィーとディヴァインに関しても同じで、インドのポップカルチャーでは誰もやっていなかった手法であり、こういうストリートのキッズがいるということは発見されていなかったことでもありました。そうした彼らの経験を多くの人たちとシェアできたらどんなに素晴らしいだろうかと考えたんです。

CNas - Nas Is Like

━━映画の冒頭には、車内で流れるパーティーラップに対してムラド(ランヴィール・シン)が「これがラップか? お茶濁しのリミックスだ」と切り捨てるシーンがあります。このセリフは、アクタル監督自身のインド音楽に対する批判でしょうか。 まさにその通りです。インドのメインストリームのラップは、アメリカのラップをコピーしたものが多いんです。つまり、女の胸がどうだとかケツがどうだとか、クスリがどうだとか……。そういう題材ありきなんです。結局それはただのコピーですよね。アンダーグラウンドシーンのラップは、社会経済の状況や自分にとって本当に身近なことをラップしています。つまりそこには正直な真実がある。アメリカの真似をしているだけのラップは私にとって違うんだ、という想いを冒頭のシーンに込めました。 ━━ムラドは英語を話せるのに、ほとんど英語でラップしませんよね。自分の言葉で語りたいという強い意志の表れなのでしょうか? いや、やはり英語の単語はどうしても入ってしまいますね。英語はインドのカルチャーの一部として定着していますし、特定の単語は英語で言うことが多いです(※日本語におけるカタカナ英語のようなもの)。ムンバイには様々な人種がいて、歴史的にも英語は日常的に使われてきました。ヒンディー語と英語が組み合わさった言葉は「ヒングリッシュ」と言われています。

「スラム」と言っても、汚いところから綺麗なところまで色々ある。

━━劇中の会話においても、裕福層は英語メインで話しているのに対し、そうではない層はヒンディー語ないしはヒングリッシュで話していたように思います。その対比が見事でした。一方、スカイ(カルキ・ケクラン)やMCシェール(シッダーント・チャトゥルヴェーディー)は本名ではないですよね。彼らは本名を隠したがっているのではないかと感じられる節もありました。彼らは本名を明かされた時、ちょっと気まずそうな表情をするからです。 「スカイ」はアーティスト活動をするにあたってのニックネームですね。あのシーンは、家の管理人が彼女の活動を知らないことを示すために入れたシーンでした。ラッパーに関しては一般的に、本名で活動することの方が少ないのではないでしょうか? 「シェール」というのはライオンという意味で、「母が僕のことをライオンと呼んでたんだよ」というセリフがありますが、たとえばパフ・ダディー(Puff Daddy)だってエミネムだって本名ではないですよね。そういったある種の別人格のようなものを持つことがラッパーのカルチャーだと思うんです。ムラドも自身をガリーボーイと名付けることでイメージを投影しています。 ━━では、出自を隠したい気持ちや何らかのコンプレックスが反映されたものではないと。 否定しているとか恥ずかしいとかいうことではなく、ラッパーとして別の人格を出したいということですね。良い例がディヴァインで、これは「神」や「神々しい」という意味を持つ名前なんです。彼はクリスチャンで、母親が彼のことを「ディヴァイン」と呼んでいました。ネィズィーには「クレイジー」という意味合いもあって、言葉遊びの側面もあります。こういった名前は、アーティストとして自分がこうありたいという思いの反映なのです。 ━━この映画を見ていると、インドではヒップホップに対して、社会からの厳しい視線があるようにも感じられました。たとえば、ムラドの叔母が「歌いたいなら古典にしなさい」とムラドをなだめるシーンなどは象徴的です。一般にインドでは、ヒップホップはどのように認知されているのでしょうか? インドでジャンルとしていちばん大きいのは映画音楽で、現在も商業的に成長しています。でもインディペンデントでいちばん成長しているのはヒップホップだと思います。ヒップホップはストリートから生まれた音楽であり、お金がない人たちでもできる。ビートをダウンロードすれば、自分でリリックを乗せて、さらにYouTubeにアップして発信もできるわけですよ。 ━━「ストリート」という言葉が出ましたが、「ガリー」という言葉は「ストリート」よりももっと狭くて密集している感じがしました。それこそ、ムラドの家には仕切りすらほとんどありません。ただ同時に、清潔な印象も受けました。この映画のダラヴィ(スラム)は、10年前に公開された映画『スラムドッグ$ミリオネア』のダラヴィよりも綺麗に見えます。スラムの現実は、どの程度正確に反映されているんでしょうか? 『スラムドッグ$ミリオネア』は、やや誇張していると思います。実際はあそこまで汚くない。より汚く見せているので、私としてはやりすぎだなと感じていました。しかし、「スラム」と言っても、とても綺麗なところと、かなり汚いところまで色々あるんです。例えば、ムラドとサフィナ(アーリアー・バット)が落ち合う橋の下はドブ川で汚いけれど、家の中はとても綺麗。一概には汚い場所だとは言えないんですよ。スラム自体には、教育や治安、都市計画、自治の仕方、無関心などたくさんの問題があります。現在は政府が大規模で本格的な衛生活動に乗り出したので、うまくいくことを願っています。

ガリーボーイ

貧困の中に生きていてもジェンダーバイアスに縛られない

━━この映画のもうひとつの軸として、生まれや貧困、職業、宗教などに対する差別というものがあります。こういったテーマで映画を作るに至った経緯は何だったのでしょう? アクタル監督自身は富裕層の芸術一家出身ですよね。 先ほどお話したように、ネィズィーとディヴァインに会って映画制作がスタートしたので、彼らのストーリーを聞くうちにそういった問題が浮き彫りになっていったんです。問題ありきではなく、彼らを知るにつれて、このようなテーマになりました。 ━━アクタル監督自身、女性であるという理由だけで差別を受けたことなどはありましたか? この映画を見ていると、インドはかなり男性優位の社会なのかなと感じます。女性には恋愛や結婚の自由が与えられていないようにも見えます。 私の場合はアーティスト一家だったということもあって、両親はじめ周りのみんなはリベラルで進歩的な考え方を持っていました。だから女性であるという理由だけで何かを止められたという経験はありません。とても恵まれた環境で育ったと感じています。 ━━ではアクタル監督は、ネィズィーとディヴァインと出会ったことでインドにおけるそのような問題を発見したということですか。 インドは家父長制が強い国なので、兄や弟に許されていることが女性という理由だけで許されていないという状況にある人は、私の友人にもいました。だからそのような問題が存在していたことは映画を撮る前からわかっていました。ネィズィーとディヴァインに出会って驚いたのは、彼らには女性蔑視的な考え方がまったく見られないことです。どちらかというとフェミニスト的であり、母親との関係も良好。貧困の中に生きていてもジェンダーバイアスに縛られないことがある、ということは、私にとって新鮮な発見でした。

大切なのは、自分が楽しいと思うことを探すこと その先に、誰かに還元できる何かがある

━━この映画の登場人物たちのように、様々な差別に苦しんだり、あるいはムラドのように自分に表現の道があるということにすら気付かなかったりする人は日本にもたくさんいます。そうした人々が壁を壊すためには、何が必要だと思いますか? 才能といってもアーティスティックなものに限らず、得意なことを誰しもが持っていると思います。「家事に強い」とか「テーブルを作ることができる」でもいいですし、「共感力が高くて人を助けることができる」でもいい。どれも素晴らしい才能です。自分の関心を活かすことができれば、誰もが特別になれると思っています。だから、大切なのは、自分が楽しいと思うことを探すことではないでしょうか。その先に、誰かに還元できる何かがある。そう私は信じています。 ━━とても力強いコメントで、背中を押される思いです。では最後の質問ですが、この映画を見た日本の観客にどんな反応を期待しますか? 理解を深めてほしいです。これまで知らなかったムンバイの若者たちの現状を知ってもらうと同時に、自分はどこから来たのかという問いを抱いてほしい。人間性や人間の精神というのは、文化は違えども根本は同じ。何らかの共感やつながりを感じてもらえたら嬉しいですね。

ガリーボーイ

Photo by Kohichi Ogasahara Text by Sotaro Yamada

ゾーヤー・アクタル 1972年10月14日ムンバイ生まれ。父は有名な詩人、作詞家で、『炎(Sholay)』(75)等ヒット作の脚本家としても知られるジャーヴェード・アクタル。母は脚本家のハニー・イーラーニーだが、両親は1985年に離婚、父はその後大物女優シャバーナー・アーズミーと再婚した。弟は、監督、俳優、プロデューサーとして活躍する、『ミルカ』(13)の主演俳優ファルハーン・アクタル。インドの大学を卒業後、ニューヨーク大の映画学校で映画製作を学び、1998年『Bombay Boys』(未)の助監督として映画界入り。その後、弟ファルハーンの方が先に『Dil Chahta Hai』(01・未)で監督デビューしたため、この作品や、次作『Lakshya』(04・未)で助監督を務めた。2009年『チャンスをつかめ!』で監督デビュー。続く『人生は一度だけ』(11)がヒットし、舞台となったスペインにインド人観光客が押し寄せる現象が起きたことから、その手腕が評価される。以後、アヌラーグ・カシャプ、カラン・ジョーハル、ディバーカル・バネルジーという個性的な大物監督たちと組んで、2本のオムニバス作品、『ムンバイ・トーキーズ』(13)と『慕情のアンソロジー』(18)を発表。その合間には、豪華スター競演の『Dil Dhadakne Do』(15・未)をヒットさせた。2019年に米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーより新規会員の招待を受けた。本作は、第92回米アカデミー賞国際長編映画賞のインド代表にも選ばれた。

INFORMATION

ガリーボーイ

2019.10.18(金) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー 配給:ツイン 実在するアーティストの驚きの半生を描き、世界中で喝采を浴びた注目作が日本公開! 主演は、次世代のプリンス・オブ・ボリウッドと目されるランヴィール・シン! メガホンを取るのは、北インド映画界の実力派女性監督ゾーヤー・アクタル。プロデューサーはUSヒップホップ史に燦然と輝く数々の名曲で知られるラッパーNAS。ムラドはなぜ、ラップにのめり込むのか? 背景には、インド社会が抱える格差、宗教的差別から解放されたいと願う若者の現実が潜んでいる−−。

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Big Thiefのエイドリアン・レンカーに訊く、『U.F.O.F』の対となる『Two Hands』が完成するまで

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Big Thief

ブルックリンの4人組バンドであるビッグ・シーフ(Big Thief)が〈4AD〉に移籍して今年5月に発表した3rdアルバム『U.F.O.F.』は、ピッチフォークに「疑う余地のない最高傑作」と書かれたのを始め、多くのメディアが絶賛。トラディショナルなフォークを基調にしながらサイケデリックなムードも湛え、幻想的でありながら心を温かにする作品だった。そしてそこからわずか5ヵ月。早くも登場となるのが4thアルバム『Two Hands』で、これが2部作の後編ということになる。 このインタビューでも話しているように『U.F.O.F.』が完成した5日後にはもうレコーディングに入っていたそうで、繋がりは当然あるが、しかし2作のレコーディング環境と音の方向性は大きく異なるもの。静かな印象の『U.F.O.F.』に対し、『Two Hands』は荒々しくて生々しいバンド・サウンドの躍動があり、先行曲の”Not”が象徴的だが圧倒的な爆発力を有している。メイン・ソングライターでもあるエイドリアン・レンカーのヴォーカルも実にエモーショナルだ。

Big Thief - Not(Official Audio)

聞けば、『U.F.O.F.』は「Celestial(天)」、『Two Hands』は「Mud(地)」をイメージして作られた楽曲群だそうだが、今回Qeticでは、このふたつのテーマや関係性についてエイドリアン・レンカー(Adrianne Lenker)に電話インタビュー。『Two Hands』の収録曲についてもつっこんで訊いていこうというところでタイムアップを告げられてしまったのは残念だったが、曲作りに対する彼女の真摯な姿勢はここからもしっかり見えてくるはずだ。改めて『U.F.O.F.』から聴き返しながら読んでいただきたい。

Big Thief

Photo by Dustin Condren

Interview:Big Thief(エイドリアン・レンカー)

──新作『Two Hands』が完成して、まもなくリリースされます。いまの気分は? ワクワクしているわ。この作品を誇りに思っているし、どの曲も私にとって親愛なるものだから。早くみんなに聴いてもらいたい。 ──3rdアルバム『U.F.O.F.』からわずか5ヵ月でのリリースになります。アルバムというフォーマットの持つ意味や価値観が以前とは変わり、楽曲単位での配信リリースが多いこの時代に、アルバムを2作続けて発表するというのはかなり思いきった試みじゃないかと思うんですよ。よほど強い動機がないとできないことですよね。 そう思う。でもそれくらい私たちはアルバムを作るという行為が好きだし、どの曲とどの曲を繋げてどう聴こえるようにするかということを真剣に考えているの。最終的にリスナーは1曲を繰り返し聴いてもいいわけだし、好きなように曲順を変えて聴いてもいい。Spotifyなんかでプレイリストを作って聴く人も多いわよね。 だけど、私たちがいつも一番に考えているのはビック・シーフのコアなファンの人たちのことなの。つまり、私たちのアルバムにじっくりと耳を傾けてくれる人たち。そういう人たちに、いい流れだなと思ってもらえるようなアルバム作りを意識しているわ。

Big Thief – U.F.O.F

──レーベルによっては「もう少し時間をあけてリリースしたほうがいい」という考えを持つところもあるかもしれない。けど、〈4AD〉はバンドの意志を尊重してくれたわけですよね。前作を出す前に〈4AD〉に移籍したことで、より自由に活動できるようになったという実感はありますか? バンド自体、この3年間で大きく進化したけれど、それはレーベルが変わったこととは関係ないと思う。私たちが一緒に仕事をしてきたレーベルの人たちはみんな素晴らしくて、〈サドル・クリーク〉の人たちも〈4AD〉の人たちも私たちのアートを気に入って応援してくれた。何かを変えたほうがいい、といったことは一切言ってこなかったわ。だから、私たちはバンドとして自然に進化を遂げたのであって、以前も今もレーベルに対して不自由さを感じたことなんて全くないの。 ──なるほど。では『U.F.O.F.』と『Two Hands』、間をあけずにリリースするこのふたつのアルバムはどのような関係性のものか、相応しい言葉はありますか? 私は兄弟のようなものだと思っている。双子のアルバムというか。性格はだいぶ違うけど、同じDNAを持っているの。 ──そもそもその2作は、同時期に並行して作っていたんですか? そう。2年間で私はたくさんの曲を書いて、だいたい50曲くらい貯まっていたの。それでカリフォルニアでデモを録って、2つのアルバム用にそれを分けたの。アルバムのひとつはテクスチャーやレイヤーを使って広大なサウンドスケープを印象付ける作品にしたかった。 そしてもうひとつのアルバムは必要最小限の音で、粗削りで、乾いた感じにしたかった。私たちはまず『U.F.O.F.』をワシントン州の森のなかにあるスタジオで録音して、それが終わった5日後に『Two Hands』をテキサス州の砂漠にあるスタジオで録音したのよ。 ──曲を書いている段階から、ふたつのアルバムを作ることを想定していたのですか? いいえ。(ギターの)バック・ミーク(Buck Meek)が「この調子だと2枚組のアルバムができちゃうぞ」と言ったときにはまだみんなで笑いながら「それはちょっと」なんて言ってたくらいだから。でも、確かにそれができるくらい曲が貯まっていることに私も気づいて。ただ、2枚組という形だと濃すぎるし、それはやりたくなかったのね。それで2作に分けることにしたの。 ──書き上げた曲が「天」(Celestial)と「地」(Mud)という2つのテーマに分けられると感じ、それに沿って曲を振り分けていったそうですね。曲を書いている段階からそのふたつのテーマが頭のなかにあったのでしょうか。 それはなかったわ。作曲している段階ではまだアルバムの特徴をイメージできていなかったし。 ──「天」と「地」というテーマをもう少しわかりやすく説明することはできますか? そこに含まれる感情はどういうものを指すのか、とか。 言葉にするなら、「天」は「intangible(無形)」「immeasurable(計り知れない)」「fantastical(空想的)」「magical(魔法のよう)」「vast(広大)」。「地」は「sensory(感覚)」「textural/textured(テクスチャー/手触りのある)」「rugged(ゴツゴツした)」「fluctuating(変動する)」「finite(有限)」「alive/spiritful(生きている/精神あふれる)」。地球は“彼女”自体が呼吸をして存在しているものだと私は思うの。そして「天」と「地」の両方に使える言葉は、「mysterious(神秘的)」。 ──曲作りはどのように行なったんですか? そういった言葉のイメージを浮かべながら曲作りに向かっていったんですか? ギターを持って座って、自然なフローを追うだけ。作曲しているときに何が起こっているのか、言葉で説明するのは難しいわ。自分自身を探索し、自分の周りの空気も探索しているような感覚ね。ある感覚を捉えたいから作曲するときもある。自分が考えていることを曲にしたいときもあるけど、その題材についてまだ知識が十分じゃないと感じるときもある。そういうときは作曲できるようになるまで考えを掘り下げたり、その題材について詳しく学んだりしているわ。30分で一気に書けるときもあって、それはなんというか魔法みたいなもので、どうしてそうなるのか自分にもわからない。そういうときは自分が書いているという実感が持てなくて、何かを思い出しているような感じに近いわね。 逆に完成まで何年もかかる曲もある。何時間も費やし、同じことを繰り返し、トランス状態に自分を持っていって曲作りをする場合もある。曲作りって、半分は自分の努力の成果であり、もう半分は神の恩恵みたいなものだと思うの。

Big Thief - Full Performance(Live on KEXP)

──では、『U.F.O.F.』に入ることとなった曲を作っているときと、『Two Hands』に入ることとなった曲を作っているときでは、あなたの精神状態や体調などは違っていましたか? さっきも言った通り、作曲段階ではふたつのアルバムにすることを意識していなかったのでわからないけど、レコーディングに関してはそのときの環境が大きな影響を及ぼしていると思う。 『U.F.O.F.』をレコーディングしたときは、とても開放的でリラックスした気分だったわ。山小屋みたいなスタジオで、木が生い茂っていて、空気がとても新鮮だったの。まるで昔から馴染みのある家のようで、私は祖父母の家を思い出したわ。そこで姉と従妹が料理を作ってくれて、私たちは外の芝生でサッカーをしたりしていたの。ランニングもしたし、すごく健康的に過ごせたの。 一方、『Two Hands』をレコーディングしたときは、すごく乾燥していて暑かった。砂漠のなかという強烈な環境で、親しみを感じることなんてできなくて。メキシコとの国境近くということがまた緊張した雰囲気を醸し出していたの。メキシコとの国境近くでは頻繁に事件が起こっていて、どこか悲しい雰囲気があるのね。だから、そこで録音した曲には辛辣な感じが含まれている。 ハッキリ言って『Two Hands』のレコーディングは『U.F.O.F.』のときよりも大変だったし、立ち向かわなくてはならない苦労も多かったわ。だけどそれは自分たちで選んだ環境であって。つまり、何かに立ち向かわなくてはならない環境に身を置いて、“ロックンロールな感じ”になるようにしたってこと。

Big Thief - Forgotten Eyes(Official Audio)

──どちらの作品もプロデューサーのアンドリュー・サルロ(Andrew Sarlo)とエンジニアのドム・モンクス(Dom Monks)と共に作られています。アンドリュー・サルロとは今回で4作目。よほどバンドとの相性がいいってことですね。 アンドリュー・サルロは私が18歳のときからの友達なの。私たちは大の仲良しで、彼はバンドの延長線上にいる存在。彼はスタジオをまるで楽器のように操ることができるし、カリスマ性があって情熱的。一緒にふざけあうこともできる。私たちの音楽の一番の理解者だと思うし、メンバー全員の個性もよくわかっていてくれてるの。今回、彼はビッグ・シーフそのものを引き出してくれたと思う。私たちの真の姿というか。私たちの集合的エネルギーをそのまま作品に封じ込めてくれたのよ。 ──ドム・モンクスはどんなタイプのエンジニアなんですか? 静かな達人といった感じ。彼って忍者みたいなの。スタジオ内を動くときも、物音を立てずにスーッと移動していて、その場の雰囲気を一切乱すことなく作業を進めるタイプ。『U.F.O.F.』に“Cattails”という曲が入っているんだけど、あれを書き上げてすぐに(ドラムの) ジェームズ・クリヴチェニア(James Krivchenia)と私はスタジオで2、3回演奏したのね。で、その2回目だったか3回目だったかの演奏に素晴らしい手応えがあって、「よし、この感じで録音しましょう」って言おうとしてドムのほうを見たら、彼が「いまの、録音しておいたから」って言って。それがアルバムに収録されたテイクなの。まだ2、3回目の演奏なのに、ドムは静かに美しくその曲のよさを捉えてくれていた。それはまるで魔法のようだったわ。

Text by 内本順一

Big Thief

Photo by Dustin Condren

Big Thief 2016年にデビューアルバム 『Masterpiece』をリリースし、瞬く間にインディーフォーク界で頭角を現したビッグ・シーフ。 各メディアから賞賛されたほか、同じくブルックリンを拠点に活動するシンガーソングライターのシャロ ン・ヴァン・エッテンは、彼らの音楽について「この長い間に聴いた音楽の中で最も感動的」と絶賛した。 翌年には2ndアルバム『Capacity』を発表。辛口評価で知られるPitchforkでは 8.3/10の高得点を獲得してBest New Musicに選出されたほか、音楽雑誌Rolling StoneやUNCUTなどからも高評価を得た。そして今年5月にリリースした3rdアルバム『U.F.O.F.』は、名門インディ・レーベル〈4AD〉 移籍第1弾にふさわしい、新境地を印象づける作品となった。「疑う余地のない最高傑作」と謳ったピッチ フォークをはじめ、多くのメディアが絶賛した。 HPTwitterInstagramFacebookYouTubeApple MusicSpotify

RELEASE INFORMATION

Big Thief

Photo Credit:Dustin Condren

Two Hands

2019.10.11(金) 4AD ¥ 2,200(+tax)

TRACKLISTING 01. Rock And Sing 02. Forgotten Eyes 03. The Toy 04. Two Hands 05. Those Girls 06. Shoulders 07. Not 08. Wolf 09. Replaced 10. Cut My Hair 11. Love In Mine *Bonus Track for Japan

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EVENT INFORMATION

 

Big Thief Japan Tour 2019

2020.05.07(木) 東京・渋谷 WWW X TICKET:後日詳細発表 2020.05.08(金) 大阪・梅田 SHANGRI-LA TICKET:後日詳細発表 協力:BEATINK お問合わせ:SMASH 詳細はこちら【URL未設定】

映画『ガリーボーイ』ゾーヤー・アクタル監督インタビュー|インドで誰もが共感するヒップホップ映画が誕生するまで

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ガリーボーイ

インド・ムンバイのスラム街で育った青年がヒップホップと出会い、人生を変えてゆく物語『ガリーボーイ』。「インド版『8 Mile』」とも評される本作は、映画批評サイト「Rotten Tomato」で満足度100%(2019.9.25時点)を叩き出し、2019年公開のインド映画で世界興収入第2位を記録するなど、すでに高い評価を得ている。

『ガリーボーイ』予告編

Qeticでは、10月18日(金)の日本公開を記念して来日した監督のゾーヤー・アクタル(Zoya Akhtar 以下、アクタル監督)に単独インタビューを行い、本作を貫くふたつの軸、すなわちヒップホップと格差社会についての考えを聞くと同時に、制作の裏側についても語ってもらった。

ガリーボーイ

Interview:ゾーヤー・アクタル(映画『ガリーボーイ 』監督)

Naezy(ネィズィー)とDivine(ディヴァイン)には繋がりを感じた

━━本作は、インドの人気ラッパー・Naezy(ネィズィー)とDivine(ディヴァイン)をモデルにしたストーリーです。この2人について映画を撮ろうと思ったきっかけや決め手は何だったのでしょうか? ネィズィーは私にとって、初めて出会ったムンバイのアンダーグラウンドラップシーンの当事者だったんです。まずは、彼のずば抜けた作詞能力とフロウのテクニックに惹かれました。そして2人目に出会ったのがディヴァインでした。インタビューをしたら両者共に、すごく説得力があって話に引き込まれたんです。2人ともすごく正直で、なおかつ才能に溢れていて、それが手に取るようにわかる。彼らとは繋がりを感じました。だから、この2人を中心に映画を進めていくことにしたんです。 ━━「繋がり」というのは、監督と2人の繋がりですか? 私と、私たちチームと彼らの繋がりです。他のラッパーにインタビューをする時は、いわゆるQ&Aみたいになることが多いんです。でも、彼らとは本当に会話をするようにインタビューができた。彼らは、自分たちが育った場所やいつも遊んでいるところ、友達がいるところなど、非常に個人的なことを教えてくれたんです。それから、お互いのアートに関する話ができて打ち解けた面もあったと思います。アーティストとして互いに惚れ合ったということ、それがいちばん大事だと思います。 ━━アクタル監督は、普段からよくインタビューをされるんですか? インタビューはよくしますが、題材によりますね。今回は私がそれほどインドのアンダーグラウンドラップシーンに明るいわけではなかったので、まずはネィズィーとディヴァインの2人にインタビューをして、それからどんなストーリーが作り出せるかを考えました。

Mere Gully Mein - DIVINE feat. Naezy

コピーではなく、自分の正直な真実をラップすること

━━ちなみに、アクタル監督はいつ、どういうきっかけでヒップホップを好きになったんでしょうか。 やはり90年代からですね。最初はスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)、フージーズ(The Fugees)、2パック(2Pac)あたりから聴きはじめて、その後エミネム(Eminem)やサイプレスヒル(Cypress Hill)へ行き、近年はケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)、カニエ・ウェスト(Kanye West)、ナズ(NAS)、リル・ウェイン(Lil Wayne)なんかをよく聴いています。 彼らは非常にオリジナルですよね。本当に何もないところから、自分の生い立ちなどを歌ってラップする。そこに凄くストーリーを感じます。それは、当時の主流の音楽シーンでは誰もやっていなかったことだと思うんです。ネィズィーとディヴァインに関しても同じで、インドのポップカルチャーでは誰もやっていなかった手法であり、こういうストリートのキッズがいるということは発見されていなかったことでもありました。そうした彼らの経験を多くの人たちとシェアできたらどんなに素晴らしいだろうかと考えたんです。

CNas - Nas Is Like

━━映画の冒頭には、車内で流れるパーティーラップに対してムラド(ランヴィール・シン)が「これがラップか? お茶濁しのリミックスだ」と切り捨てるシーンがあります。このセリフは、アクタル監督自身のインド音楽に対する批判でしょうか。 まさにその通りです。インドのメインストリームのラップは、アメリカのラップをコピーしたものが多いんです。つまり、女の胸がどうだとかケツがどうだとか、クスリがどうだとか……。そういう題材ありきなんです。結局それはただのコピーですよね。アンダーグラウンドシーンのラップは、社会経済の状況や自分にとって本当に身近なことをラップしています。つまりそこには正直な真実がある。アメリカの真似をしているだけのラップは私にとって違うんだ、という想いを冒頭のシーンに込めました。 ━━ムラドは英語を話せるのに、ほとんど英語でラップしませんよね。自分の言葉で語りたいという強い意志の表れなのでしょうか? いや、やはり英語の単語はどうしても入ってしまいますね。英語はインドのカルチャーの一部として定着していますし、特定の単語は英語で言うことが多いです(※日本語におけるカタカナ英語のようなもの)。ムンバイには様々な人種がいて、歴史的にも英語は日常的に使われてきました。ヒンディー語と英語が組み合わさった言葉は「ヒングリッシュ」と言われています。

「スラム」と言っても、汚いところから綺麗なところまで色々ある。

━━劇中の会話においても、裕福層は英語メインで話しているのに対し、そうではない層はヒンディー語ないしはヒングリッシュで話していたように思います。その対比が見事でした。一方、スカイ(カルキ・ケクラン)やMCシェール(シッダーント・チャトゥルヴェーディー)は本名ではないですよね。彼らは本名を隠したがっているのではないかと感じられる節もありました。彼らは本名を明かされた時、ちょっと気まずそうな表情をするからです。 「スカイ」はアーティスト活動をするにあたってのニックネームですね。あのシーンは、家の管理人が彼女の活動を知らないことを示すために入れたシーンでした。ラッパーに関しては一般的に、本名で活動することの方が少ないのではないでしょうか? 「シェール」というのはライオンという意味で、「母が僕のことをライオンと呼んでたんだよ」というセリフがありますが、たとえばパフ・ダディー(Puff Daddy)だってエミネムだって本名ではないですよね。そういったある種の別人格のようなものを持つことがラッパーのカルチャーだと思うんです。ムラドも自身をガリーボーイと名付けることでイメージを投影しています。 ━━では、出自を隠したい気持ちや何らかのコンプレックスが反映されたものではないと。 否定しているとか恥ずかしいとかいうことではなく、ラッパーとして別の人格を出したいということですね。良い例がディヴァインで、これは「神」や「神々しい」という意味を持つ名前なんです。彼はクリスチャンで、母親が彼のことを「ディヴァイン」と呼んでいました。ネィズィーには「クレイジー」という意味合いもあって、言葉遊びの側面もあります。こういった名前は、アーティストとして自分がこうありたいという思いの反映なのです。 ━━この映画を見ていると、インドではヒップホップに対して、社会からの厳しい視線があるようにも感じられました。たとえば、ムラドの叔母が「歌いたいなら古典にしなさい」とムラドをなだめるシーンなどは象徴的です。一般にインドでは、ヒップホップはどのように認知されているのでしょうか? インドでジャンルとしていちばん大きいのは映画音楽で、現在も商業的に成長しています。でもインディペンデントでいちばん成長しているのはヒップホップだと思います。ヒップホップはストリートから生まれた音楽であり、お金がない人たちでもできる。ビートをダウンロードすれば、自分でリリックを乗せて、さらにYouTubeにアップして発信もできるわけですよ。 ━━「ストリート」という言葉が出ましたが、「ガリー」という言葉は「ストリート」よりももっと狭くて密集している感じがしました。それこそ、ムラドの家には仕切りすらほとんどありません。ただ同時に、清潔な印象も受けました。この映画のダラヴィ(スラム)は、10年前に公開された映画『スラムドッグ$ミリオネア』のダラヴィよりも綺麗に見えます。スラムの現実は、どの程度正確に反映されているんでしょうか? 『スラムドッグ$ミリオネア』は、やや誇張していると思います。実際はあそこまで汚くない。より汚く見せているので、私としてはやりすぎだなと感じていました。しかし、「スラム」と言っても、とても綺麗なところと、かなり汚いところまで色々あるんです。例えば、ムラドとサフィナ(アーリアー・バット)が落ち合う橋の下はドブ川で汚いけれど、家の中はとても綺麗。一概には汚い場所だとは言えないんですよ。スラム自体には、教育や治安、都市計画、自治の仕方、無関心などたくさんの問題があります。現在は政府が大規模で本格的な衛生活動に乗り出したので、うまくいくことを願っています。

ガリーボーイ

貧困の中に生きていてもジェンダーバイアスに縛られない

━━この映画のもうひとつの軸として、生まれや貧困、職業、宗教などに対する差別というものがあります。こういったテーマで映画を作るに至った経緯は何だったのでしょう? アクタル監督自身は富裕層の芸術一家出身ですよね。 先ほどお話したように、ネィズィーとディヴァインに会って映画制作がスタートしたので、彼らのストーリーを聞くうちにそういった問題が浮き彫りになっていったんです。問題ありきではなく、彼らを知るにつれて、このようなテーマになりました。 ━━アクタル監督自身、女性であるという理由だけで差別を受けたことなどはありましたか? この映画を見ていると、インドはかなり男性優位の社会なのかなと感じます。女性には恋愛や結婚の自由が与えられていないようにも見えます。 私の場合はアーティスト一家だったということもあって、両親はじめ周りのみんなはリベラルで進歩的な考え方を持っていました。だから女性であるという理由だけで何かを止められたという経験はありません。とても恵まれた環境で育ったと感じています。 ━━ではアクタル監督は、ネィズィーとディヴァインと出会ったことでインドにおけるそのような問題を発見したということですか。 インドは家父長制が強い国なので、兄や弟に許されていることが女性という理由だけで許されていないという状況にある人は、私の友人にもいました。だからそのような問題が存在していたことは映画を撮る前からわかっていました。ネィズィーとディヴァインに出会って驚いたのは、彼らには女性蔑視的な考え方がまったく見られないことです。どちらかというとフェミニスト的であり、母親との関係も良好。貧困の中に生きていてもジェンダーバイアスに縛られないことがある、ということは、私にとって新鮮な発見でした。

大切なのは、自分が楽しいと思うことを探すこと その先に、誰かに還元できる何かがある

━━この映画の登場人物たちのように、様々な差別に苦しんだり、あるいはムラドのように自分に表現の道があるということにすら気付かなかったりする人は日本にもたくさんいます。そうした人々が壁を壊すためには、何が必要だと思いますか? 才能といってもアーティスティックなものに限らず、得意なことを誰しもが持っていると思います。「家事に強い」とか「テーブルを作ることができる」でもいいですし、「共感力が高くて人を助けることができる」でもいい。どれも素晴らしい才能です。自分の関心を活かすことができれば、誰もが特別になれると思っています。だから、大切なのは、自分が楽しいと思うことを探すことではないでしょうか。その先に、誰かに還元できる何かがある。そう私は信じています。 ━━とても力強いコメントで、背中を押される思いです。では最後の質問ですが、この映画を見た日本の観客にどんな反応を期待しますか? 理解を深めてほしいです。これまで知らなかったムンバイの若者たちの現状を知ってもらうと同時に、自分はどこから来たのかという問いを抱いてほしい。人間性や人間の精神というのは、文化は違えども根本は同じ。何らかの共感やつながりを感じてもらえたら嬉しいですね。

ガリーボーイ

Photo by Kohichi Ogasahara Text by Sotaro Yamada

ゾーヤー・アクタル 1972年10月14日ムンバイ生まれ。父は有名な詩人、作詞家で、『炎(Sholay)』(75)等ヒット作の脚本家としても知られるジャーヴェード・アクタル。母は脚本家のハニー・イーラーニーだが、両親は1985年に離婚、父はその後大物女優シャバーナー・アーズミーと再婚した。弟は、監督、俳優、プロデューサーとして活躍する、『ミルカ』(13)の主演俳優ファルハーン・アクタル。インドの大学を卒業後、ニューヨーク大の映画学校で映画製作を学び、1998年『Bombay Boys』(未)の助監督として映画界入り。その後、弟ファルハーンの方が先に『Dil Chahta Hai』(01・未)で監督デビューしたため、この作品や、次作『Lakshya』(04・未)で助監督を務めた。2009年『チャンスをつかめ!』で監督デビュー。続く『人生は一度だけ』(11)がヒットし、舞台となったスペインにインド人観光客が押し寄せる現象が起きたことから、その手腕が評価される。以後、アヌラーグ・カシャプ、カラン・ジョーハル、ディバーカル・バネルジーという個性的な大物監督たちと組んで、2本のオムニバス作品、『ムンバイ・トーキーズ』(13)と『慕情のアンソロジー』(18)を発表。その合間には、豪華スター競演の『Dil Dhadakne Do』(15・未)をヒットさせた。2019年に米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーより新規会員の招待を受けた。本作は、第92回米アカデミー賞国際長編映画賞のインド代表にも選ばれた。

INFORMATION

ガリーボーイ

2019.10.18(金) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー 配給:ツイン 実在するアーティストの驚きの半生を描き、世界中で喝采を浴びた注目作が日本公開! 主演は、次世代のプリンス・オブ・ボリウッドと目されるランヴィール・シン! メガホンを取るのは、北インド映画界の実力派女性監督ゾーヤー・アクタル。プロデューサーはUSヒップホップ史に燦然と輝く数々の名曲で知られるラッパーNAS。ムラドはなぜ、ラップにのめり込むのか? 背景には、インド社会が抱える格差、宗教的差別から解放されたいと願う若者の現実が潜んでいる−−。

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For Tracy Hyde・夏botがアウトサイダーの視点から捉えた今の音楽シーンとは?

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For Tracy Hyde

For Tracy Hydeの通算3枚目となるアルバム『New Young City』が9月にリリースされた。前作『he(r)art』では、シティポップの意匠を借りつつ内側から「都市幻想」を崩壊させるというコンセプトを掲げていた彼らだが、本作ではあらゆる文脈や含意から切り離した全く新しい街「New Young City」を構築し、そこでの都市生活を描くことによりシティポップを相対化してみせるという、相変わらずパンクな姿勢を貫いている。 ソングライティングやサウンド・プロダクションの面では、紅一点ボーカリストのeurekaがギターを持ち、トリプル・ギター編成となったことでシンセサウンドは後退。音の隙間を生かしたアンサンブルが、リーダー・夏botの書くメロディの美しさをより際立たせることに成功している。

For Tracy Hyde - 3rd Album『New Young City』Trailer

実は、前作の制作直後からスランプに陥り、一時期はバンド解散の危機にまで陥ったというFor Tracy Hyde。それをどう乗り越え、前作を上回る傑作アルバムを作ることが出来たのだろうか。アルバム制作のエピソードはもちろん、直後に行われたアジア・ツアーでの手応えなど夏botにじっくりと伺った。

For Tracy Hyde

Interview:夏bot(FOR TRACY HYDE)

──夏botさん、Twitterのアカウトに肩書きとして「メロディーメイカー」を掲げているじゃないですか。 ああ、そうですね(笑)。 ──For Tracy Hydeに加えて、エイプリルブルーというバンド活動も始まり、dotsなどのアイドルへ楽曲提供をするなど、メロディメーカーとしての活動が増えている夏botさんですが、メロディメーカーとしての目標、目指すところは何かありますか? 僕はもともとビートルズ(The Beatles)やビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)のような60年代の音楽が好きなんです。今から50年前に生まれた音楽が、その時代にまだ生まれてもいない僕のような若者にまで届く普遍性と強度を持っていることを、本当にすごいことだなと思っていて。自分も子供の世代、孫の世代にまで伝わるような楽曲を作りたいというのが究極的な目標の一つではあるんですよね。もちろん、短期的に言えば「売れる」とか、「メディアに露出する」ことも含まれているかと思います。 ──以前のインタビューで「僕は本気で自分のルーツに当たるインディ音楽にメインストリームでのポピュラリティを獲得させたくてバンドをやっています。そうすることでメインストリームの音楽は多様化してより豊穣になり、インディからメジャーに至るまでバンド・シーン全体の活性化/延命に繋がると思っているのです」とおっしゃっていました。メジャーとインディの「架け橋」的な存在でありたいとも思っていますか? 何か具体的な行動を、主体的にしようと思っているわけではないのですが、やっぱり周りを見ていると、今のシーンのあり方に疑問を抱いている仲間がそんなにいない気がしているんです。誰かしらが問題提議をすることで、議論を活発化させる必要があるんじゃないかなと。 例えば、僕は毎年8月にドリーム・ポップを軸にした企画イベントを開催し色々なバンドを呼んでいるのですが、そういった活動を通じて、僕がもっと世に知られるべきだと思うバンドたちを紹介していけたらいいなとは思っていますね。

For Tracy Hyde

──では、夏botさんが思う「美しいメロディー」「ポップソング」の定義とはどのようなものでしょうか。 それを明確に定義できれば、美しいメロディを無限に作れてしまうと思いますが……(笑)。具体的にどうというのは難しいのですが、ひとつ自分が思っているのは、例えばライブを見ていて「このバンド、グッとこないなあ」と感じた時に、突き詰めるとコード進行をはっきり辿れないバンドが多いんですよね。もちろん、アレンジに問題がある場合もありますが、メロディを追っていてもコードが見えてこない場合が往往にしてある。 僕が好きな60年代の音楽は、コード進行に沿ったメロディがつけられていて、それこそビーチ・ボーイズは「このメロディだったら、このコード進行しかあり得ない」と思うくらい密接な関係になっているじゃないですか。それが美しいメロディの1つの条件なのかなと思います。 ──なるほど。 でも、例えばART-SCHOOLのメロディとかは、メロディだけ聞いてもコード進行の予想がつかないし、いくらでもコード進行のパターンが思いつくけど、でもやっぱり美しいんですよね。だから、そこに対して自分なりにどう説明したらいいのかはちょっと分からないです……、なんなんだろう。 ──それでいうと、例えばジョン・レノン(John Lennon)のメロディも、1音とか2音だけで構成されていて、コード進行の移り変わりによって様々な響きにしている曲もあるじゃないですか。“I Am The Walrus”や、“With A little help From My Friends”なんかはそうですよね。木下理樹さんのような例を挙げるとすれば、例えば中田ヤスタカさんの作る楽曲も、リフのようなメロディに様々なコードを当てて発展させるものが多い。 そうですね。それを考えるとコードの響きも含まれているし、メロディが奏でられている一瞬に鳴らされた楽器の音が、とても重要な場合もあります。突き詰めた時に、やっぱりメロディというのは純粋にメロディそのものだけじゃなくて、ある瞬間に含まれている要素をトータルで考えるものなのかもしれないですね。 それと、これは「美しいメロディ」という話から少しずれますけど、自分が惹かれる音楽に共通する点として、音以外の感覚を呼び覚ましてくれるものというのがあります。

For Tracy Hyde
For Tracy Hyde

──例えば? 例えばシューゲイザーだったら、ギターの音色1つとっても「色」や「温度」を感じるというか。すごく「共感覚」的な要素が強いジャンルだと思うんですよ。 僕自身はライド(Ride)やスーパーカーとの出会いがきっかけでギターを弾き始めたんですけど、彼らの何が魅力的だったかというと、決して複雑なことをやっているわけではなくて、簡単なコード進行と歪んだギターリフと、シンプルなアルペジオだけで疾走感のあるうるさくてカッコいいロックを演奏できる、というところが衝撃的だったんですよね。 ──確かに、その音像からはバンドの姿が見えない、抽象的なところがシューゲイザーの魅力といえますよね。 そう思います。 ──では、アルバムについてお聞きします。最新作『New York City』がリリースされてから1ヶ月が経ちましたが、改めて今回のアルバムについて気づいたことなどありましたか? 1つ印象的だったのは、このアルバムを聴いた友人からの「自分が“持ってはいけない”と思っていた感情を肯定されたような気がした」という感想でした。それがLINEで送られてきた時にハッとしたんです。自分自身もこのアルバムを作っていた時すごくモヤモヤしていたし、人に言うのもはばかれるような感情があることを改めて気づかされたんですよね。その上で、自分や自分と同じような気持ちを抱えている人たちのことを、肯定してあげられるようなアルバムを作りたいと思っていたんだなと。そこに気づけたのは自分の中でも大きかったです。

For Tracy Hyde - Girl's Searchlight

For Tracy Hyde - 櫻の園

──ちなみに、そういう思いがもっとも端的に表現されているのはどの曲ですか? “曖昧で美しい僕たちの王国”は、比較的そういうことを歌っていると思います。この曲の歌詞は、あまり自分らしくないというか。今読み返しても、自分がどういう気持ちでこれを書いたのか、はっきり見えてこない曲でもあるので、そこはこれから答えを見つけていきたいなと思っていますね。 あと、最近は「表現の自由」について改めて考えさせられることが多くて。例えば<表現の不自由展>に関する一連の騒動だったり、<あいちトリエンナーレ>で文化庁の助成金が撤廃になったことだったり。自分たちが目指している表現や、そこに含まれている感情のようなものが、徐々にゾーニングされていくようなことへの不安感が何となく自分の中にあるんです。今後そういうことが続くようであれば、改めてこのアルバムを聴いた時に、自分がどう思うかが気になっています。 ──先のインタビューでは、「セカンド(『he(r)art』)を作った後は、自分がこの先何をしたらいいのかを完全に見失ってしまって」、「一時期、このバンドはこのまま終わってしまうんじゃないか」とも話していました。それはどのくらいリアルに思っていたのですか? 前作を作った時に、かなりの達成感を覚えてしまっていました。曲単体で考えてもアルバムの構成にしても、前作を超える作品を作ることが果たして可能なのか、自分でも自信がなくなってしまい、曲が作れなくなってしまったんですよね。何もしないままどんどん時間が過ぎていって、そうこうしているうちにアイドルへの楽曲提供が増えていきました。楽曲提供というのはバンドのフォーマットに囚われずに曲が作れるので、結構それが楽しくなってましたね。 結果的に、前作を超えるような作品を作ることができたし、今後も時代と向き合いつつ、良いアルバムを作り続けていけるという自信を取り戻せました。そうなってから改めてメンバーに、「あの頃はバンドを辞めようと本気で思ってた」と話を振ってみたら、他のメンバーもちょうどその頃、同じことを思っていたみたいで。メンバーの共通認識として「バンドが終わるかもしれない」というのがあった、というくらいリアルなものでしたね。 ──eurekaさんがギターを持つ「トリプルギター編成」にしたのは、曲が作れなくなってしまったことへの打開策の一つでもあったのですか? いや、それは全然なかったです。むしろ、ギターが増えたことでこれまでやってきたシンセサイザーのレイヤーが出来なくなって、そのことが原因で曲が作れなくなった時期もあってすごく不安でした。ただ、一旦そこを乗り越えて、ギター3本でのアレンジが上達してからは、どんどん曲ができ始めたんですよね。なので、結果的にはギターを3本にしたことが功を奏したなと思っています。 これまで音の隙間を埋めていたシンセサイザーがなくなったことで、個々の楽器の音色によりこだわるようになり、「コードとメロディだけで成立する楽曲を目指す」という、ソングライティングの根本に立ち返ることが出来たのも大きかった。歌詞の強度にも、これまで以上にこだわるようになったし、自分が自信を持てて、かつ「自分らしい」と感じられる楽曲ができたという自負はありますね。

For Tracy Hyde

──前作では「シティポップからシティを奪還する」をテーマに掲げ、シティポップの意匠を借りつつその「都市幻想」を内側から崩すことを目的としていました。今作では、あらゆる文脈や含意から切り離した全く新しい街「New Young City」を構築し、そこでの都市生活を描くことでシティポップを相対化して見せています。夏botさんの、そういった批評精神はどこからきているのですか? やっぱり、自分は「渋谷系」という音楽がものすごく好きだったのが大きいと思います。音楽はもちろん、個々のバンドの思想というか、アティチュードに惹かれていた部分もかなり大きいです。当時の音楽誌を読んでみると、例えば、フリッパーズ・ギターもすごくシーンを俯瞰して見ていたし、色んな音楽と批評的に向き合って自分たちの音楽に落とし込んでいたんです。そういう彼らの姿勢を、意識的に真似しているわけではないのですが、無意識に自分の中で理想化されているのかなとは思います。 ──夏botさんは幼少期にアメリカに住んでいたこともあり、日本語と英語の両方で同時にものを考えるところが今もあると聞きました。そのことも、物事を俯瞰的に見るようになった1つの原因だと思いますか? 少なからずあると思いますね。ある研究によれば、人は7歳くらいで人種的なアイデンティティや母語が固まるらしいんです。そんな重要な時期に自分はアメリカから日本へ移り住んだため、日本にも馴染みきれず、かといってアメリカ人でもないといった「アウトサイダー」的な意識が自分の中に芽生えてしまったんですよね。それが結構、色んな側面に影響を与えている気がします。

For Tracy Hyde - Can Little Birds Remember?

──夏botさんが毎年夏に自身のイベントを開催しているのは、アウトサイダーであるからこそ「居場所」を作りたいという気持ちもあるのかなと。 居場所というか、継続的に交流しながら切磋琢磨し合える仲間が欲しいというモチベーションは少なからずあります。実際にそこから、今は活動停止してしまいましたがBalloon at dawnや、普段は違う畑で活動していますが親交の深いLADY FLASH、日本のシューゲイズ・シーンで付き合いのある数少ないバンドの1つ、17歳とベルリンの壁といった仲間を見つけることも出来ました。 一方で、自分がアウトサイダーだからこそ、1つの括りに収まらないイベントが作れているという意識もあるんです。例えば、今でこそBearwearはドリーム・ポップの畑でも認知されるようになっていますが、元々彼らはエモ界隈で活動をしていて、こちらの界隈とは全然クロスオーバーしていなかったんですよね。それを、敢えて僕らがイベントに呼んだことでひとつブレイクスルーになったのかなと思います。 自分のイベントを通じて、バンド同士が表面上の枠を超えて深いところで繋がり合えるような、そういうきっかけを提示できたら嬉しいですし、そのことはいつも意識しています。 ──そういう、枠にとらわれない活動の延長線上に海外ツアーもあったのかなと思うのですが、9月中旬に行なわれたアジアツアー(台北、シンガポール、マニラ、ジャカルタの4都市で敢行)は実際どうでしたか? とても印象に残った出来事が2つありました。まず、オーディエンスが本当に熱狂的だったんです。初めて自分たちの国を訪れて、ろくに言葉も喋れないような日本語詞のバンドを、こんなにも好意的に受け入れてくれるものなのか……と、衝撃を受けましたね。国とか関係なく、音楽は音楽として楽しんでもらえたことが、自分としては本当に嬉しかったです。 ただ、アジアツアーもいいことばかりじゃなかったです。ライブ環境が日本とは比べ物にならないくらい整っていないんですよ。どの都市でも音響面でのトラブルがずっと付き物でした。演奏中にマイクがずっとハウっていたり、返しが聞こえなくて終始PAとやり取りしながらの演奏だったり。 ──インドネシア公演では、ギリギリまで許可が出なくて大変だったようですね。

そうなんです。ライブが終わって、一緒に回っていたコズミック・チャイルド(Cosmic Child)やアワーセルブス・ジ・エルブズ(Ourselves the Elves)のメンバーたちと色々話をしていて、僕が「日本では、ライブを行うスペースは法的に公認されているから、いちいち行政は介入してこない」という話をしたら、みんな僕の方を羨ましそうな顔で見たのがすごく印象に残っています。それが2つ目です。改めて自分たちが、いかに恵まれているかを実感しましたね。有難さを感じると同時に、申し訳なさみたいな気持ちも湧いてきました。 だからこそ、自分たちがこの恵まれた、アジア随一である日本のライブ環境で、いかにしてアジアの音楽シーンに貢献できるか?ということを改めて考えさせられました。
For Tracy Hyde
For Tracy Hyde

──For Tracy Hydeが、アジア諸国で熱狂的に受け入れられる要因はどこにあると思います? うーん、そこは自分でも不思議なんですよね……(笑)。自分たちがシューゲイズやドリーム・ポップと呼ばれるスタイルのサウンドを鳴らしているというのは、かなり大きな要因なのかなとは思いますけど。シューゲイズのバンドって、歌をサウンドの一部と捉えていることが多いと思うのですが、だからこそ僕らのような日本語詞のバンドが海外で聴かれたり、英語詞のバンドが日本で聴かれたりしているのかなと。 ──ああ、なるほど。 あと、今回ツアーを回っていて気づいたのは、アジア全域にわたってコード進行とメロディの好みが共通していたということです。例えば、フィリピンで対バンしたメグミ・アコルダ(Megumi Acorda)という女性シンガーソングライターは、本当に日本人の琴線に触れるようなメロディを書くんですよね。コズミック・チャイルドも、曲を聴いていると「邦楽っぽいな」と思わせる瞬間もあるし。 ──以前、For Tracy Hydeについて「あくまでも邦楽の文脈で洋楽的なサウンド・デザインを取り入れることに一貫して取り組んでいる」とおっしゃっていましたけど、その「邦楽的な文脈」という部分が欧米のシューゲイズ・バンドにはない魅力なのかなとも思いました。 確かに。今、日本で積極的に「Jポップらしさ」を打ち出しているバンドは非常に少ないですよね。むしろ日本らしさを「ダサい」と捉えて排除しようとしているバンドの方が多い気がします。僕はJポップが大好きだし、渋谷系も好きだし、そもそも「ダサい」と思ったことが一度もないんです。海外育ちで学習的に「日本人らしさ」を身につけた立場だというのも、ひとつの要素としてあるのかもしれないですね。 ──やはり「アウトサイダー」的な視点は重要なポイントですね。 別に周りのバンドと差別化するためとか、そういう戦略があったわけでもなく、ごくごく自然に日本らしさを打ち出していたのですが、そこを海外で評価されたという説は……、確かにあり得ますね。そう考えると、For Tracy Hydeってつくづくオンリーワンな存在というか、他のバンドではあり得ないような立場にあるのかなということに、今日話していて改めて気づきました。

For Tracy Hyde

Live Photo by Weekendcycler Text by Takanori Kuroda

For Tracy Hyde

FOR TRACY HYDE eureka(Vo)、夏bot(Gu)、U-1(Gu)、Mav(Ba)、草稿(Dr) 2012年秋、夏botの宅録プロジェクトとしてU-1と共に活動開始。2014年、ラブリーサマーちゃん(Vo)が加入し、女性ボーカルの5ピース・バンドとして原形が出来る。2015年5月、ラブリーサマーちゃん脱退に伴い、新ボーカリストにeurekaが加入。シューゲイザーや渋谷系、60年代から現在までの様々な音楽を自由な発想で取り込み、中高生から〈Creation Records〉にリアルタイムで触れた40~50代まで、幅広いリスナーの日常に彩りを添える「21世紀のTeenage Symphony for God」を作り出す。 HPTwitterInstagramFacebookYouTubeSoundcloud

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For Tracy Hyde

New Young City

2019.09.04(水) FOR TRACY HYDE PCD-83017 P-VINE RECORDS ¥2,300(+tax)

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#FTHNYC Tokyo

2019.10.16(水) OPEN 18:00/START 19:00 Shibuya WWW ADV ¥3,000/DOOR ¥3,500(1ドリンク別) LINE UP: FOR TRACY HYDE warbear エイプリルブルー(Opening Act) TICKET:イープラス

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The ManRayインタビュー|初のフルアルバム『Naked』に詰め込まれたバンドのロードームービーを紐解く

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The ManRay

これが先入観になってしまったら申し訳ないのだが、このThe ManRay初のフルアルパム『Naked』を初聴した際、私の中には「モーテル」なるワードが浮かんだ。この場合のモーテルは、USの街道沿い等にある、ややうらぶれた感じのモーターホテルの類い。そこで見るアメリカの深夜TV映画的な安っぽいムードと、部屋の数だけある哀愁を帯びた幾つもの物語が、歌やサウンドに、まるでアメリカン・ロードムービーを見終えたような情感を私に抱かせた。 The ManRayはアサトタクロウ(Vo./Gt.)、コガコウ(Ba.)、オオキリョウスケ(Dr.)からなる3ピースのロックバンド。元々はUSゼロ世代のロックンロールリバイバルやアシッドロック、ブルースやストーナーロックを自己解釈し放ってきた。しかしこの1年、バンド形態やメンバーの脱退や交代を経て現在のラインナップへと至り、合わせて音楽性も著しい変化を伺わせている。 そんな彼らが今年3月より6ヵ月連続で配信シングルをリリース。この度それらを集約した現行の彼らを伝えるべく初のフルアルバム『Naked』をリリースした。

The ManRay 1st.Album『Naked』 -2019.9.11(wed)Release-

この3人ならではの三位一体性と、自身の都度の音楽性のモードをバランスよくバラエティ豊かに収めた同盤。グルーヴを大事にした各種の音楽性の上、ストレートでダイレクトに誘い、惹き込み、想起させる日本語にシフトした歌詞と、その雰囲気を裏切らないロートーン気味の歌声も印象的だ。 この秋には各地でのライブも控え、そのツアーファイナルの12月1日(日)には、表参道WALL&WALLでのライブも控えている彼らを直撃。バンドの結成やここまでの音楽性の変化や遍歴、そしてニューアルバムやそれを携えての各地のライブやそのファイナルに向けて、その気概や胸中を語ってもらった。

The ManRay

Interview:The ManRay

当初は5人組でシンセもいた チルウェイヴ系のバンドから始めた アサトタクロウ(Vo./Gt.)

━━結成当初はシンセサイザーもおり、ツインギターの5人組で活動していたとお聞きしました。今の3ピースでのソリッドな音楽性とは正反対のようなイメージなのですが……。 コガコウ(Ba. 以下、コガ) このバンドを始動させた時、特に目指していた音楽性も無かったんです。元々、(アサト)タクロウはラップトップで、当時、自分たちの中でも流行っていたトロ・イ・モア(Toro y Moi)といった、チルウェイヴ系の音楽を1人で作っていました。「だったらそれをバンドでやってみようか?」的な発想からバンドが始まったんです。そこから段々とロック方面へと移行していきました。 ━━当初はチルウェイヴ系だったとは意外でした。最初のミニアルバムはロックンロールリバイバルやダンサブルでフィジカルな音楽性だったじゃないですか。 アサトタクロウ(Vo./Gt. 以下、アサト) 当初、自分1人で作っていた音楽は、さっき(コガ)コウが言っていたようにチルウェイヴやフライング・ロータス(Flying Lotus)系のブロークンビーツ的な音楽だったんですが、それも「PCで音楽を作るならそっちの方が早そうだ……」程度で始めたもので。 「でも、もしバンドを組むのならロックやブルースやオルタナ寄りの音楽をやりたいな」とは常々考えていました。つまり、編成メンバーや楽器から徐々に音楽性が変化していった感じです。 ━━そのまま1人で活動していく選択肢もあったわけですが、やはりバンドをやりたかった? アサト やりたかったですね。で、5人が集まって。やはり、一緒に出した音の気持ち良さが1人とは全然違いましたね。 コガ 僕らもそれまでに聴いてきた音楽が レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers 以下、レッチリ)等の影響もあって、最初の5人で出したかった音は、やはりオルタナ方面の音楽性になりました。 ━━その音楽的な遍歴の移行は振り返っていかがですか? アサト これまでに自分たちが聴いてきた音楽が都度、反映されてきた感じはあります。例えば60年代のビートルズ(The Beatles)やローリング・ストーンズ(The Rollin Stones)、キンクス(The Kinks)やヤードバーズ(The Yardbirds)、アニマルズ(The Animals)といったブルースやR&Bに影響を受けたUKのバンドたちですね。 まずはそこから入り、徐々にブルースロック的な方面に惹かれて、それだけやっても面白くないので、ストロークス(The Strokes)といったゼロ世代のバンドなどに自分たちが影響を受けた部分をブレンドしていったんです。

The ManRay

━━元々はリズムやダンサブルさも、もっと前面に出ていましたもんね? アサト その辺りも一時期ハマって聴いていたマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)やカーティス・メイフィールド(Curtis Mayfield)といったアメリカンニューソウルの影響からですね。 メンバーの共通点としてベースが効いていたり、立っている躍動感のある曲が好きなんです。あとは、ケンドリック・ラマ―(Kendrick Lamar)といったヒップホップも好きだったので、当時はそれらの影響もありました。 コガ ロックをやるにせよ、R&Bをやるにせよ、基本的には踊れる音楽への憧れを持っています。自分たちの音楽の中でも、Bassとして踊らせるという役割を担いたいとは常々考えています。

メンバーが脱退し、それを単に補充したところで いい音楽が生まれるとは思えなかった コガコウ(Ba.)

━━そんな中、この2年で3ピースになり、ドラマーもオオキリョウスケさんが新しく加入されましたが、どういった経緯で? コガ 元々の5人も友達の延長戦上でバンドを始めたところがあったんです。なのでギターとシンセが抜けるとなった時に、他の新しいメンバーを入れる考えには至らなかったんです。そうしてもあまりいい音楽が生まれるイメージが湧かなかくて。「だったら、残った3人でやるしかないな」と。 まず気持ちが一緒じゃないとやってく上で難しいじゃないですか。その後、前のドラムが抜けることになり……。さすがにドラムが無しは音楽性的にはキツいなと。で、(オオキ)リョウスケを誘いました。 オオキリョウスケ(Dr. 以下、オオキ) 前のドラムが抜けるというタイミングで誘ってくれて。実は、僕がライブを観ていた当時はまだ5人組の時で。3人体制になってからは音源で知ったんですが、「結構、ロックやってんじゃん!」と即答で加入しました。僕もレッチリが好きだったっていうのもあって。 ━━ドラマーがオオキさんに交代してプレイや音楽性的な変化はありましたか? コガ かなり変わりました。また前のドラムとも違ったグルーヴ感なので。(オオキ)リョウスケが加入したことでよりロック系のサウンドに向かった感はあります。 ━━せっかくこの3人が集まったんだから、レッチリみたいなファンク性やミクスチャー性を全面に出した音楽性でやろうとの発想へは至らなかったんですか? アサト それが不思議とありませんでした。俺がアンソニー(Anthony Kiedis、レッチリのボーカル)のようにラップ的な歌い方が出来なかった面もあったけど(笑)。好きだからってそれをそのままやっても面白くないでしょうから。 コガ でも、ベースはめちゃめちゃ影響を受けていますよ。 ━━この3人になり、より三位一体感が増した印象があります。みなさんの比率やバランスが平等だし、出る部分と引っ込む部分を各位わきまえていたり、と。どれもリード楽器でもあるけども、バッキング楽器だったり、と。 アサト 音が減った分、その厚みやバランス、寂しくなったものをどう補うかという点ではかなり悩みました。結果、各楽器を立たせたり、コーラスやハーモニーを充実させたりと、この3人で出来る最大限のものは詰め込めたかなと思います。

The ManRay

英語詞で雰囲気やニュアンスだけ伝えても歌っていても 上っ面だけになっちゃって意味がない アサトタクロウ(Vo./Gt.)

━━そんな新体制になり、今年の3月から毎月連続配信リリースが開始されました。月毎に全く違った音楽性が飛び出してきたので驚きの連発でしたよ。 コガ ミックスの時に、自分たちで聴いても、ジャンルの繋がりの無さや全体的に音楽性の幅がありすぎて、どの曲をリード曲にするかで迷いました。 でも、だったらそれを強みにして、一曲ずつ「これでもどうだ!」とリリースしていった方が、世の中に聴いてもらえる機会が増えるのかなと。やはり、聴いてもらわないと知られないし広がらないし何も始まりませんから。 ━━それがこれまでの音楽性とも変わり、これまで英語詞で歌うことを貫いてきたみなさんでしたが、いきなり日本語歌詞が飛び出してきた第1弾の“Sea Side Motel”の登場には驚かされました。 アサト 正直、これを一発目にするかどうかは迷ったちゃあ迷いました。今回から日本語でいくことは結構前から決めていたんです。やっぱり日本語じゃないと歌っている意味も伝わらないということが、これまでで痛感してきたことの1つだったので。

The ManRay - Sea Side Motel [Trailer Movie]

━━でも、歌詞の内容もダイレクトでストレート。その気恥ずかしさは無かったですか? 意味がバシッと伝わってしまう分、日本語にシフトさせるのって勇気の要ることだとも思えますが。 アサト 元々英語詞で細かいニュアンスを伝えるのが得意ではなかったんで、結局自分がキチンと意味を把握していないと伝えられるものも伝わらない。雰囲気やニュアンスだけ伝えても歌っていても上っ面だけになってしまって意味がない。逆にこれからはもっと日本語中心になっていくと思います。 コガ でも、このシフトチェンジはいい方向だと捉えています。もちろん、英語語で勝負するのも1つの手だとは思います。ただ、自分たちのアイデンティティを考えると、自分たちは英語のネイティヴスピーカーではないし、例えライブで歌詞を知らなくても、何か1つ素敵な日本語が飛び込んできたら、それだけでも印象が変わることもあると思うんです。 オオキ ドラムに関しても気持ちの入り方が全然違います。内容をしっかりと把握している分、気持ちを乗せる時の一体感が全く違うんです。これまでは、若干ニュアンス的な部分で共有しづらかった面もありました。やっぱり、リリックから叩くイメージや情景も把握できるし、曲のイメージが湧きやすいので、あとはそれにそって叩くだけでした。

The ManRay

このバンドは「これだ!」って 求道的なスタイルではないし向かない オオキリョウスケ(Dr.)

━━それらの集約が今作『Naked』ですが。ほぼ全10曲でタイプが違う曲が表れたので驚きました。 コガ そもそも(アサト)タクロウはこれまでと違ったことに挑戦したがりですからね。一つのスタイルに固執するよりかは、完全にその時に気に入ったものをどんどん取り入れてとりあえずやっちゃうタイプなんです。 アサト その時その時にやりたいことをやってみた結果、かなりバラエティに富んだ曲になりました。 ━━ジャジーでバグダッドカフェ感、シューゲイズ、ウォームさやブルージーでアーシーな楽曲、はたまたドリーミーな曲や、牧歌的なカントリーライクなもの、それからバンキッシュなものがあったり。 アサト このメンバーになって、この1年の間に作り貯めてきたものをまとめた感じです。 コガ 自分の人生にとっても初のアルバムだったので、気持ちの詰まったものにはしたかったんです。ただ正直、聴き返しても自分たちでも「なんとも統一感がねぇな……」とは感じますね(笑)。 ━━正直、これだけ幅が広くて色々なタイプの楽曲が揃っていると、初めてThe ManRay を聞く人にとってはバンド像や核、本質が見えにくい懸念もあるんじゃないですか? コガ それはないです。この雑多感こそが今の自分たちがやりたい事だったので。あまりスタイルにとらわれずに、良いと思えるものは上手く取り入れて加工し、自分たちのスタイルとして昇華して出しちゃう、みたいな。そんな雑多感も含めて「これが俺たちだ!」との気概は込めています。 オオキ それこそこのバンドは「これだ!」という求道的なスタイルではないし向かないと思います。対して、今作は3人のフィーリングについては、まとまっている印象があるんです。そんな珠玉の10曲といったところでしょうか。 ━━幅も広く、間口も広く、球も沢山あるので、どれか1つは聴いた方、それぞれに刺さるものがありそうといった面では非常にサブスクリプションやストリーミング向きかなって。 コガ 結果論ですが、自分もそれは感じました。バラバラな分、好きな曲もいい意味で別れるだろうし、これまで自分たちとは接点の無かった人にも聴いてもらえるチャンスが出来る。もう今の時代、アルバム単位で音楽を聴く人だけじゃないですから。そう考えたらこのようなバラバラで統一感のない作品も全然アリなんじゃないかな? って思います。自分達なりに、ルーツとしての統一感は勿論あるんですけど。 ━━特に今作は、この3人で何が出来るか? どんなことが出来るか? に挑戦している面もありますよね。この3人で最大限、どう三位一体を伝えられるか? みたいな。 コガ そうです。3人の楽器が有機的に絡み合ったり、融合されて1曲として昇華されていく。そこは目指していたところでもあります。

The ManRay

今回は全10曲を2日間で全て録った。 その統一感はあるのかもしれない コガコウ(Ba.)

━━基本、シンプルで余計な音が入っていないわりには全然寂しくないのも特徴的かと。 コガ 音数が少ない中でどれだけカッコ良さが出せるかというこだわりが自分たちの中のモードとしてもあるので、その辺りについては上手く表せたかなと思います。 アサト あとはこれまで自分がPCでデモをカッチリと作っていたものも、ギターの弾き語りレベルのものをバンドに落とし込んで、みんなで肉付けしていった曲もありました。それ故に、歌が前面に出ている曲も表れています。 ━━作品全体的に非常にロードムービーみたいな雰囲気がありました。 アサト 嬉しいですね。好きなんです、ロードムービーのあの感じ。 ━━今のみなさんの音楽性のジャンルを考えました。「モーテルロック」なんてどうですか? 街道沿いの、ややうらぶれて哀愁性のある宿にて、旅の途中で訳アリの人たちが宿泊し、1部屋毎に人生や物語がある。時間の経ったファストフードを食べながらベッドの中で見る深夜映画……そんな場面が浮かんだんです。 一同 おおっ!! コガ 「モーテルロック」って、いいですね。あのモーテルの雰囲気は好きだし、自分たちの今の音楽には合ってあるかも。『バッファロー’66』とか大好きな映画です。 ━━そんな各曲バラバラながら一本の不思議な共通した幹を感じたんです。 コガ 実は今作のレコーディングって全10曲を5曲5曲づつ、2日間で全て録ったんですよ。そういった意味で、1枚にまとまる統一感はあるのかもしれない。 ━━意外です。タイプも雰囲気も全く違う曲たちなので、てっきり録り貯めてきたのだと思ってました。 コガ ところが違うんです。でも、その為に色々と流れは考えましたよ。「これは体力がないと満足なのが録れないだろうな」って曲は最初の方に録って、「これは多少ダレててもその方が雰囲気に合うだろう」って曲は後半に録ったり。

The ManRay - C'mon baby

興味のある方は是非ライブに来て欲しい。 ダイレクトに放つからダイレクトに受け取ってくれ アサトタクロウ(Vo./Gt.)

━━これまでの流れから、歌ももっと荒々しく、感情の起伏の激しい歌い方でくる予想でしたが、どれも程よく洗練されてますね。 アサト 自分たちでもオムニバス感覚なところがあったので、トータル的には何も考えないでレコーディングしました。サウンドのバラエティさをボーカルのテンションを持って統一感が出せたところもありますが、あくまでもそれは結果論で。その時々の気持ちが収まった、まさに「レコード(記録)」っていう作品にはなりました。「その時々の俺たちはこれです」というのは収められたかなと思います。 ━今回はコガさん作詞/作曲の“Everybody wants”も収まっています。この曲はみんなで歌えて一体感のある非常にライブ映えしそうな曲です。 コガ おかげさまで初めて自分の作った曲が作品化されました。この曲ではあえて僕らのポップな面を出してみました。

The ManRay - Everybody wants

━オオキさん的に何か今作の聴きどころはありますか? オオキ やはり、歌ですね。特に日本語にシフトしてよりストレートでダイレクトな歌詞にもなったので、その辺り是非聴いて欲しいです。 コガ 最近の歌って直接的な表現があまりないじゃないですか。でも、僕たちが言葉で響いてきた部分ってそういった曲が多くて。ザ・ブルーハーツとかがそうでした。今の時代、それって求められていないかもしれないけど、同じ人間だし、今作の各曲の歌詞は日本語が分かるなら伝わるでしょってぐらいに直接的な歌詞なんです。 ━━分かります。こちらが気恥ずかしくなるぐらいストレートな歌詞でした。本作と共にツアーがありますね。ファイナルは12月1日(日)に表参道WALL&WALLで行うとか? コガ そうなんです。僕たちにとって、表参道でライブを行うことはある意味、ステータスなんです。僕たちが新宿や下北沢でライブすることって想像つくじゃないですか。音楽性的には分かりませんが、アティチュード的にヒップな人たちにも聴いてもらいたいので、この日本のトレンドの中心地、表参道で行うのも意義があるのかなと思います。僕たちも十分にヒップですから(笑)。 アサト ライブでしか感じられないものを感じさせる自信があるので、ぜひ興味のある方々は観に来て下さい。もうダイレクトに放つのでダイレクトに受け取って欲しいです。 オオキ ツアーでは色々な人たちに出会いたいですね。各地で精一杯の自分たちを見せて、成長して、このファイナルに戻ってきたい。 コガ とは言え、俺たちはもちろん地方出身ということもあり地方のヤツらもラブなので、各地で一緒にラブしたいです。面と向かわないと伝えられないことや伝え切れないことも沢山あるので、ぜひライブに来てその全てを受け取って欲しい。見た目は強面でストイックな印象かもしれませんが全然そんなことはないので、気軽に話しかけて欲しい。各地でお酒をのみながら色々と話しましょう。 アサト 3人でビシッと決めますから。ぜひ各地のライブもファイナルも観に来て下さい。

Photo by Kana Tarumi Text by 池田スカオ

The ManRay

The ManRay

2014年、都内にて結成。 UKインディ/ガレージ/オルタナ/パンクをルーツに、ブルース/ソウル/ファンクなどのブラックエッセンスを混ぜ合わせた、独特で荒々しく土臭いサウンドに気怠いなかに苦みを効かせたヴォーカル、クールかつルードな佇まいで、時代に媚びないロック美学を熱く貫くネオ・ロッキン・ブルース・スリーピースバンド!! 2017年6月に1st.EP『You will be mine』をリリース。リードトラック“Brown sugar” がSpotify 国内バイラルチャートで2位まで駆け上がるなど、そのサウンドに注目が集まる。2018年4月に 2nd.EP『Fly To The Moon』をリリース。タイトルトラック“Fly To The Moon”が【FRED PERRY for JOURNAL STANDARD】 のコラボキャンペーンのタイアップソングに選ばれ、イメージモデルとして本人達もWEBムービーに出演。 2019年3月より配信限定にて6カ月連続で毎月1曲ずつリリースし、9月に初のフルアルバム『Naked』をリリース。 ¥HPTwitterInstagramFacebookSound Cloud

RELEASE INFORMATION

The ManRay

Naked

2019.09.11(水) The ManRay CUCL-800 ¥2,000(+tax) 詳細はこちら

EVENT INFORMATION

The ManRay “Naked” RELEASE TOUR

2019.10.20(日) 愛知・名古屋CLUB UPSET 2019.10.22(火) 埼玉・西川口Live House Hearts 2019.10.27(日) 埼玉・北浦和KYARA 2019.10.30(水) 千葉・LOOK 2019.11.06(水) 宮城・仙台MACANA 2019.11.09(土) 愛知・豊橋club KNOT 2019.11.10(日) 大阪・GROOVYROOMS 2019 2019.11.14(木) 京都・京都MOJO 2019.11.16(土) 岡山・岡山PEPPERLAND and more……

<FINAL ONEMAN>

2019.12.01(日) 東京・表参道 wall and wall

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ビートの祭典を徹底解剖|YAKUSHIMA TREASURE、サンティアゴ・バスケス、フアナ・モリーナが競演する<Beat Compañero>とは?

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Beat Compañero
水曜日のカンパネラ・コムアイとエレクトロニック・ミュージシャン、オオルタイチによる異色のユニット、YAKUSHIMA TREASUREが、先日の恵比寿LIQUIDROOMでの単独公演も成功裏に終えた矢先、早くも新たなフェーズへ向けて、今度は自身が主催するイベントを開催! <Beat Compañero/波動の交わり>と銘打たれた本イベントには、<True Colors BEATS 〜Uncountable Beats Festival〜>でも共演したサンティアゴ・バスケス(Santiago Vazquez)フアナ・モリーナ(Juana Molina)ミロ・モージャ(Miloo Moya)といった、世界で名高いアーティストたちが出演することに! 本イベントでは、この4組でしか紡ぎだせない特別なコラボレーションパフォーマンスも披露される予定だ。 Beat Compañero このイベントに出演する4組に共通するのは、それぞれが独特のリズミカルな音楽性を放っているという点。それは彼ら自身の出自やパーソナリティがそれぞれの音楽に如実に現れているが故なのだが、本イベントではそれぞれの特徴ある音楽性がどのような形で交わり合うのだろうか? 今回は楽曲、パフォーマンスなどの観点から、アーティストそれぞれが持つ個性を紐解く解説をまとめてみた。また、イベント開催に向けてYAKUSHIMA TREASURE名義で出演するコムアイとオオルタイチからのコメントも! 一夜限りのアーティスト・コラボレーションをお見逃しなく。

<Beat Compañero/波動の交わり> 出演アーティストを紐解く

YAKUSHIMA TREASURE (水曜日のカンパネラ×オオルタイチ)

Official Trailer | Re:SET feat. Wednesday Campanella's KOM_I

本イベントの主宰でもあるYAKUSHIMA TREASUREは、その名が表す通り、鹿児島県に属する離島・屋久島から着想を得ているユニットだ。YouTube Originalsでは彼らがどのような経緯で結成されたのかを追ったドキュメンタリー『Re:Set』が公開されているが、その中で彼らのユニークな制作過程がフィーチャーされている。 初のセルフタイトルEPでは、ユニットの起源でもある屋久島を訪れ、カエルの鼓動や木々をうつ雨、岸壁の風、波の音など、自然や人々の暮らしに寄り添った音をフィールドレコーディングし、それぞれの楽曲に使用している。それも手伝って、ビートそのものに不規則なリズムが生み出され、どこかスピリチュアルで幻惑的な音楽性が導き出されている。まるで島が生み出す“鼓動”が聴き取れるようだ。 そんな彼らのライブパフォーマンスは常に即興的だ。演出もその時々で変わり、その現場でしか見出せない瞬間を味わうことができる。先日の恵比寿LIQUIDROOMでの単独公演では、ステージ上で土と苔を植えるという大胆なステージングを披露し、躍動する屋久島のうねりを再現してみせた。<Beat Compañero/波動の交わり>でのステージではどんな仕掛けが用意されているだろうか? True Colors BEATS YAKUSHIMA TREASURE 2019年4月にYouTube Originalsで発表された、水曜日のカンパネラと屋久島のコラボレーションを試みる作品Re:SET。 この作品を通し一枚のEP「YAKUSHIMA TREASURE」が誕生した。島のカエルの鼓動や木々をうつ雨、岸壁の風、波の音に耳を澄まし、村のおばあちゃんたちとうたい、あの手この手で採集された音をもとに様々な曲が制作された。 屋久島の自然を壊滅させてしまった縄文時代の鬼界カルデラ噴火を題材にした「屋久の日月節」をはじめ、水曜日のカンパネラとオオルタイチが屋久島と取っ組み合い、紆余曲折を経て生み出したタカラのような曲たちをライブセットで披露する。

サンティアゴ・バスケス

Santiago Vazquez Special Band @Shinjuku PITINN August/26/2018

アルゼンチンを代表するパーカッショニストでありながら、アーティストだけでなく、楽器にあまり触れたことがないような初心者の方も参加できるワークショップを主催するなど、音楽の持つ多様性を伝える活動にも取り組んでいる音楽家、サンティアゴ・バスケス。 ドラムスにコンガ、カリンバなど、数々の楽器を難なく叩きこなしてしまうパーカッショニストとしての腕前にも定評がある一方で、さまざまなアーティストと共演するリズム・アンサンブルを世界各地で披露していることでも知られている。 ここ日本でも、技巧派ギタリストの大友良英や女優としての活躍も目覚ましいシシド・カフカ、さらに先述のオオルタイチなど、多岐にわたるジャンルを越え、錚々たるミュージシャンたちと共演し、喝采を浴びた。

2018年度 アンサンブルズ東京(ショートバージョン)

ライブでは、自身のワークショップでも活用している“リズム・ウィズ・サインズ”と呼ばれるハンドサインを駆使し、リズム・アンサンブルの指揮者としての役割を果たしながら、ダイナミックさと緻密さが同居するパフォーマンスを繰り広げていく。各演奏者がバスケスの指揮に盛り立てられ、四方八方にインプロヴィゼーションを広げていく様相は、YAKUSHIMA TREASUREのライブ同様、圧巻の一言だ。 サンチャゴ・バスケス(True Colors Beats) Santiago Vazquez 1972年生まれ、ブエノスアイレス出身。アルゼンチンを代表する打楽器ほか多様な楽器の演奏者、作曲家、指揮者、文化イベントの仕掛け人。ハンド・サインにより複数の演奏者による即興演奏を可能とする「Rhythm with Signs」のメソッドを開発。本年4月にブエノスアイレス市から文化功労者と認定された。

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フアナ・モリーナ

Juana Molina - Full Performance (Live on KEXP)

アルゼンチン音響派というジャンルの第一人者としても知られるフアナ・モリーナは、その独創的かつ実験的なサウンドで日本を中心に人気を集めている。多くの楽曲は変拍子かつミニマルな音数で展開されながらも、ラテン・ミュージックに共通する軽快なメロディが散りばめられているのが彼女ならではの音楽性だ。 特に電子音楽の不穏なイメージとラテン・ミュージックの陽気さが絶妙にブレンドされた2ndアルバム『Segundo』は、彼女の代表作となり、日本でも大ヒットを記録した。以来、日本のアーティストと共演する場面も多く、2006年の来日公演ではYMOのメンバーでもある高橋幸宏や今は亡き電子音楽家のレイ・ハラカミとともにステージに立っている。 サンティアゴ・バスケスがオーケストラ・サウンドでのライブパフォーマンスを得意とする一方で、フアナ・モリーナのそれはほぼ真逆といってもいい。ステージに上がる演奏者も少数精鋭。サンプラーやシーケンサーを駆使しながら、音楽性同様にミニマルかつ無駄のない演出でステージを進めていく。気がつけば、彼女が魅せる柔和な世界観のトリコになっているだろう。 True Colors BEATS Juana Molina アルゼンチンのブエノス・アイレス出身。1995年に1stアルバム『Rara』。2001 年に『セグンド』が日本でもヒットし初来日を果たす。平井堅のアルバム『Ken's Bar』に参加したこともある。2006年の来日公演では高橋幸宏、レイ・ハラカミがサポートを務めた。2017年には渋谷で開催されたジェフ・ミルズ、テリー・ライリーとのイベントに出演した。

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ミロ・モージャ

MILOO MOYA Y LA ORQUESTA DE BEATBOX – JAPON

ミロ・モージャはサンティアゴ・バスケスのパーカッション・ユニットであるPANのメンバーとして活躍する一方で、若手のビートボクサーたちを育成するプロジェクトOrquesta de Beatboxのディレクターとしても活動しており、これからのアルゼンチンのストリートシーンにも寄与しているアルゼンチンを代表するヒューマン・ビートボックス・アーティストだ。 彼のビートボックスはアルゼンチンの風土をもとに構成されており、クンビアなどに見られるラテン・ミュージック特有の2拍子のリズムが盛り込まれているのが特徴的だ。聴いてみると、フラメンコギターの音がどこからか聴こえてきそうなほど、情熱的なラテン・ビートがうまく再現されている。実際、ライブでもアルゼンチン・タンゴをベースにした楽曲を制作しているシンガーソングライター、ダリオ・ハルフィン(Dario Jalfin)や地元のフラメンコ・シンガーなどと共演し、腰にくる2ビートを披露している。 <Beat Compañero/波動の交わり>においても、そんなラテン・ビートを堪能できるだろう。またOrquesta de Beatboxでは、日本語を取り入れた楽曲も。以前より来日することを熱望していた様子なので、この日は一層気迫あふれるパフォーマンスを期待できそうだ。 True Colors BEATS Miloo Moya ヒューマン・ビートボックス・アーティスト。サンティアゴ・バスケスのパーカッション・ユニット「PAN」のメンバー。ヒップホップやエレクトロニック・ミュージックの限界を乗り越え、アルゼンチン民謡やクンビアなどの多様な影響から自身のスタイルを表現する。 Orquesta de Beatboxのディレクターとして、若いビートボクサーのためにワークショップを実施している。

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彼らは、それぞれが類を見ない個性をオリジナリティあふれる音楽に昇華しているという点でも共通している。これまでに挙げた彼らの音楽に対する向き合い方でそれがわかるはずだ。 当日は出演する全アーティストが同じステージに登って、それぞれの楽曲を1曲ずつ演奏するパフォーマンスも披露される。そんな個性あふれる4組による競演によって、きっとこれまでに見たことのない光景を目にすることができるだろう。 YAKUSHIMA TREASURE・コムアイさん、オオルタイチさんよりコメントいただきました!
肝がヒエヒエしています! 森や湖や崖から、やばい魔術師が集まって、この日出演する人たちのなかで、私だけがまだどんな魔法をつかえるのかわかっていません! 才能のないハリー・ポッターのような気分です!   たのしみです!
by コムアイ
サンティアゴ・バスケスとは2006年に大阪新世界にあったBRIDGEでセッションをして以来、13年ぶりに再会します。2mくらいありそうな大きなバナナの葉っぱをアルゼンチンから持ち込んでパーカッションとして使っていたのを覚えています。かつてアルゼンチン音響派と一括りで呼ばれていましたが、その中でも随一の面白さとユーモアがあった彼の作品『Raamon』にはすごく親近感を感じました。   そしてフアナ・モリーナとは2009年彼女のUSツアー・フィラデルフィア公演でひょんなことからオープニングアクトを務めさせてもらったことがあったり、その後も僕のリミックスアルバムで彼女の「SON」という曲をこちらからオファーをかけてリミックスさせていただいた経験があります。   最近のYAKUSHIMA TREASUREでの活動を通して自分の原点でもある即興性の面白さを再認識しているところで、このタイミングで懐かしい2人とセッションできるのはとても嬉しいです。当日はヒューマンビートボクサーのミロ・モージャも加わり、どんな音空間になるか想像がつかないです。今からとても楽しみにしています!
by オオルタイチ

Text by Kenji Takeda

EVENT INFORMATION

Beat Compañero/波動の交わり

Beat Compañero 2019年10月23日(水) OPEN 18:30/START 19:30 ADV:立見¥5,000/指定席¥5,800(税込/ドリンク代別) DOOR:立見¥6,000/指定席¥6,800(税込/ドリンク代別) 渋谷WWW X TICKET:イープラスチケットぴあローソンチケット 主催:株式会社つばさプラス 制作:SALMONSKY 後援:TRUE COLORS FESTIVAL 協賛・協力:QETIC お問い合わせ:WWW X 03-5458-7688
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「ホストの輪郭」-シティーボーイの現在地 Vol.1-

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青山礼満
青山礼満(アオヤマレマン) CLUB OPUST代表 1993年3月15日 東京都世田谷区下北沢出身 親父は小2のときに消えた。覚えているのは歌舞伎町に事務所を構えていたことくらい。 祖父母の家に母と妹と住んでいて、小5までは四谷にある中華学校に通ってた。 日本語をしゃべったら罰金を取られるような学校。 勉強は嫌いだった。成績もよくなかった。学費がもったいないと家族に言われて小6で公立の学校に転入した。 青山礼満 中学はそのまま地元の公立の学校にいった。これが最後の学生生活。 ひたすら友達と遊んでたし、初めての彼女もできた。 相変わらず勉強は嫌いで、給食の時間と体育の授業くらしか記憶にない。 中3になって周りは受験ムード。 自分も高校に行くと思ってたけど、ある日じーちゃんと進路について話したら 「誰が高校のお金出すの?」って聞かれた。 じーちゃんは都内にパスタ屋を何店舗か経営していた。 青山礼満 「じーちゃんでしょ?」って言ったら「俺はださないよ」って言われた。 「じゃあどうすればいいの?」って言ったら 「お金を払って学ぶんじゃなくて、お金をもらって学びなさい」って。 「うちの店で働けよ」って。 今思えば、跡継ぎにしたかったんだと思う。 それから中3のうちは時給600円でじーちゃんの店でアルバイトとして働いて、中学卒業してから社員になった。 同じ中学で就職したのは自分だけ。高校行けばあと3年遊べたのにって思ったら寂しくなって、卒業式でめちゃめちゃ泣いた。 じーちゃんの会社の大久保のお店で働きはじめた。 週6で朝から終電くらいまで。お店には歌舞伎町のホストもきていて、いい人もいたけど横柄なヤツも多かった。 青山礼満 就職しても地元の友だちとは遊んでたけど、公園でタバコふかしてだべってるだけ。 つまらなくなってきて、仕事終わりに1人で渋谷に行って朝までバーやクラブで遊んでた。お酒はぜんぜん飲めないからコーラ。それでも自分だけのコミュニティがほしかった。 17歳のときに働いてるお店が渋谷に移転して、もっと遊ぶようになった。 18歳のくらいまではこんな感じの生活。渋谷で仲良くなった友達と未成年なのにバーでイベントを開いて、「ガキが酒のある場所でイベントやるな」って大人に怒られたのを覚えてる。 青山礼満 19歳のときに自分でお店を持ちたくなった。 仲良くなった友達がみんな夢を追っててかっこよかったから焦ったんだと思う。 だからじーちゃんの会社を辞めて、勉強も兼ねてカフェで働きはじめた。 20歳のとき、じーちゃんが持ってた地元のお店をたたむ話しを聞いて、そこをそのまま貸してもらった。それからカフェで働いていた仲間3人とお店をオープンした。 青山礼満 自分は接客担当。接客が好きなのは今も変わらない。 お店が好きで来てもらってるのはもちろんだけど、プラスアルファの付加価値を接客によって作るのが好きだった。自分に会いにきてくれるお客さんがたくさんいて、それに充実感ややりがいを感じてた。 青山礼満 昔から人を笑わせるのが好きで、人と話すのが好きだ。 お店の良さを伝えるのも大事だけど、単純に人に興味があったんだと思う。 みんながどんなことしてるのか、どんな生活をしてるのか。 15歳で社会人になってから、早い段階で接客は天職だと思ってた。 でも、一緒に始めたヤツらとは仲がいい分ぶつかることも多くて、2年後に辞めた。 2人にはかなり迷惑をかけたと思う。 2ヶ月間はなにもしなかった。じーちゃんの会社に戻ることは考えなかった。 ホストをやってる友達から「接客得意だし、ホストやってみない?」と誘われた。 で、ホストになった。 青山礼満 続きはまた今度。
青山礼満

青山礼満(アオヤマ レマン)

歌舞伎町ホストクラブSmappa!Groupのフラッグシップショップ「OPUST」代表。 お酒を飲めないながら軽快なトークと接客スキルを武器に最年少で店舗代表に抜擢。 業界最大級の大箱でNo.1を務める。 SNSやイベントプロデュースを通じた活動で歌舞伎町から新しい遊びの提案を行う。

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Rei × 丸井”Motty”元子 対談|ハーレーダビッドソンとのコラボMV ”Territory Blues”制作秘話

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Reiさんとハーレーダビッドソンとのコラボレーション・プロジェクト<SEEK for SOUL>から育まれたコラボソング“Territory Blues”のミュージック・ビデオが現在絶賛公開中。

Rei - "Territory Blues" (Official Music Video)

今回そのミュージックビデオのアートディレクションを担当したのは丸井"Motty"元子(以下、Motty)。独特のカラーテクスチャーやコラージュセンスを持ち、多くのCDジャケット、カタログ、テキスタイル、 広告、グッズデザインなどを手掛けているアートディレクター/グラフィックデザイナーだ。 男性アーティストとのコラボ曲が続いたこの企画の中、初の女性アーティストと女性クリエーターの融合により、歌に、映像に、独特の観点からハーレーの魅力が映し出されている感のあるこのミュージックビデオ。その経緯やディテールをお2人に対談スタイルで教えてもらった。

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Photo by Madoka Shibazaki

Interview: Rei × 丸井"Motty"元子

“ハーレーとReiちゃん……この組み合わせは凄いけど…… さて、どうしたら良いだろうか……?“ Motty

──今回の“Territory Blues”のMVのアートディレクターは、Reiさんからの希望でMottyさんに依頼があったとお聞きしました。 Rei そうなんです。私自身、元々Mottyさんの作風が好きで。その世界観に魅了されていたところもあったんです。今回はハーレーさんとの貴重なコラボということもあり、是非自分を色濃く表現していただける女性のクリエーターの方とご一緒したいな……との想いもあり、リクエストさせていただきました。 ──ReiさんはMottyさんの作品のどの辺りに惹かれていたのですか? Rei 私のこれまでのMVも、色味やヴィヴィッドなカラースキーム、その中にある女の子特有の毒みたいなものを大切にしながら映像を作ってきた経緯があったんです。それがMottyさんとだったら、今回のプロジェクトでも上手くいくんじゃないかなって。 ──私からすると今作を観るまでは、ハーレーとMottyさんにいまいち結びつきが浮かびませんでした。意外な組み合わせのイメージが当初はあったんです。 Rei Mottyさんの世界観とハーレーとの親和性を考えるとそうかもしれません。でも、逆に一緒にやったらどんなものが生まれるんだろう? という期待値やワクワク感の方が強くあって。その掛け合わせの妙に賭けてみました。 ──逆にMottyさんは今回のお話を受けていかがでしたか? Motty 光栄でした。誰でも知っているハーレーというブランドと何か出来ること自体もですが、Reiちゃんから声をかけてもらったことも私的には意外だったし。ハーレーとReiちゃんという普段の私の中には無い2つの要素が組み合わさってポンと私の中にいきなり入ってきたので。「この組み合わせは凄いけど……さて、どうしようか……?」と。 あとはReiちゃん本人からの希望というのも嬉しかったです。自分の知らない場所でミュージシャンの方が私のことを気にかけて下さっている。それがなんだかとても嬉しくて。

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Photo by Madoka Shibazaki

“バイクを愛している方はバイクを「恋人」と例えたり、 女性を擬人化している方も多いのでは“

Rei

──そんな中、Mottyさんの持つハーレー像とReiさんへのイメージ、それから求められているMottyさんの持つ世界観との融合の辺りはいかがでしたか? Motty 最初はそんな考えこまずに挑みました。やりながら色々と出てくることに期待して(笑)。元々Reiちゃんには「世界感のある女の子」との印象があったので、それこそ一度、お話をしながら考えていけたらなって。 Rei 撮影当日、セットをパッと観たら、そこには既にハーレーのバイクが2台あったんです。もうそれだけで異彩と存在感が凄くて。なので、あえて「コラボするぞ!」との気概がなくても、その存在感の掛け合わせだけで既にコラボが成立しそうな予感がありました。 Motty ハーレーともなると、借りようと思ってもなかなか借りられないですからね。そこをハーレーさん側から、「使っても良い」との前提の下、MV作りが出来る。それだけでかなり面白いものに行き着きそうな気はしていました。あとはダンサーの方々が普段みないような異質感を放っておられて。そんな不思議さとハーレーさんとを掛け合わせた面白さ、その辺りが上手く出せたらいいなと挑みました。

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Photo by Masato Yokoyama

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Photo by Masato Yokoyama

──確かに異質で意外な上での面白さや印象深さはあります。 Motty いわゆるバイカー然とした人がハーレーに乗るんじゃなくて、セクシーでなまめかしい、しかも女性というそのシチュエーション。その前でReiちゃんがかっこよく歌いギターを弾く。その構図や絵面、バランスはユニークだし、過去誰もやったことがないだろうなって。 Rei これまでのハーレーとのコラボ曲はいずれも男性のアーティストばかりだったんです。「女性は今回が初」との話も聞いていたので、だったらなおさら今回はあえて女性と一緒に作りたかったし、女性ならではのセンスみたいなものも今回一緒にやってみて表現できたかな、と思います。 ──おっしゃる通り、女性的なセクシーさや艶めかしさを引き立たせている面では、これまでのコラボ曲のMVとは違っています。 Rei これはあくまでも想像でしかないんですが、バイクを愛している方ってバイクを「恋人」と例えたり、女性を擬人化している方も多いんじゃないかなって思うんです。実は楽器に対しても、そのような例えをされる歴代のミュージシャンもいらっしゃいます。女性と称したり、女の人の名前を楽器につける方もいたりするほど。丁寧にバイクを磨いたり、愛でている感じは、バイクをバディや彼女に例えているからなんじゃないかな。 ──バイクを彼女に見立てた『バイク擬人化菌書』なんて人気コミックもありますもんね。実際にお2人でご一緒にお仕事をされてみてはいかがでしたか? Rei Mottyさんと一緒にお仕事をしていて凄くいいなと感じたのは、ザックリですが、カッコいいと思っているものとダサいと思っているものが結構一致しているなって思いました。「これとこれだったらこっちだよね」って選択の意見がかなり合致したんです。そこが凄く安心したし、なおさら信頼を置くことが出来ました。

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Photo by Masato Yokoyama

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Photo by Masato Yokoyama

“夕陽の中でReiちゃんが歌っている、 そんな裏テーマもあった“ Motty

──ちなみに今回の制作において、お二方的に何か心がけたことってありましたか? Motty ポップさはある程度意識しました。大型バイクって女性からしたらかなり敷居の高いイメージがあったので、あとはもう少し間口を広げたかったんです。それからさきほど話していた3回目のコラボとして、ようやく女性に回ってきた。その役割はお互い共通してたんだろうなって思いました。 ──色使いもポップですし、あえて衣装もファーですもんね。ギターもあえてビザールだったり。 Motty 後ろの美術セットで言うと、ハーレーってロマンがあるじゃないですか。バイクで独り旅をするとか。そんなこともあり、自分の中でシチュエーション的には夕陽がイメージとしてあったんです。「夕陽に向かって!」じゃないけど(笑)。 あとはハーレーさんのブランドカラーにオレンジが含まれていたので、美術の真ん中に夕陽をイメージしたオレンジの巨大な半円を用意しました。それを中心に色々な造詣物が広がっているんです。夕陽の中でReiちゃんが歌っている、そんな裏テーマもありました。 Rei 衣装もインパクトが凄かったです。MVを観て下さった方がよく「プードルみたい」と言っていますが、実はフラミンゴが2羽いる衣装なんです。

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Photo by Masato Yokoyama

──フラミンゴだったんですか? Motty そこは「なんでハーレーダビッドソンを象徴する鷲がモチーフじゃないんだ?」って(笑)? 装苑賞を受賞された一点ものを神戸から借りてきました。もう存在感バッチリでしたね。Reiちゃんがバックの人たちを従えてるみたいでした(笑)。 Rei 私、このMVに合わせる為に髪も一部ピンクにしましたから(笑)。フラミンゴがピンクだし、思い切ってピンクにしちゃえ! って。作り込まれたステージもですが、コラージュも是非やってみたかったことだったので、それらが全て実現出来どれも新鮮な気持ちで取り組めました。

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Photo by Madoka Shibazaki

“Mottyさんが全てを見渡し俯瞰して ディレクションをしていた光景は今後の勉強になった“ Rei

──これまでReiさんのMVは一連の監督さんとずっと一緒に作られてきましたが、今回Mottyさんとやってみてこれまでとの違いはありましたか? Rei 違いました。でも、どの辺りが違うか? と聞かれると具体的には答えられないんですけど、そのMottyさんならではのセンスもですが、やはり普段アートディレクターをやっておられるだけあって、仕事の進め方には感心させられていました。 映像単体だけではなく全てを見渡しながらディレクションをされていました。MottyさんはMVのみならず、ホームページやキービジュアル、スチール等、それらを全て俯瞰で見渡しつつ、感情移入も程よく立ち回れる方で、その辺りがとても魅力的でしたね。 ──何か自身と照らし合わせてしまうことがあったり? Rei 実はここのところリーダーシップをとらなくてはいけない機会が以前より増えてきて。その時に、人とどのようなコミュニケーションをとった方が良いかを相談できる方が周りに少なかったんです。偶然ですが、そういった現場に居合わせられて、私的にはすごく勉強になりました。 ──Mottyさんは普段はグラフィックが中心で、いわゆる二次元的なデザインが多い中、今回のMVのような動くものに対するアプローチはいかがでしたか? Motty これまでも何度かMVは撮らせてもらってきたんです。でも、今回はハーレーさんとのコラボという大きなプロジェクトの下のMV制作でもあったので、これまで以上にかなり緻密にやらせていただきました。 結果、それが良く出たなって思いますね。正直、一瞬迷った時もありました。その時に「どこを切り取ってもグラフィックだと思えばいいや」「ムービーという概念にあまり囚われなくてもいいや」と思えるようになってからは、だいぶ気が楽になりましたね。 抑揚をつけて展開するという部分では、「これってなんかブックレットを作っている際と似てるじゃん」って思ったんですよね。ブックレットにも時系列があるじゃないですか。そんな考え方でいいんじゃないか? って。そう思えたら急に気が楽になって。今回、私もすごく勉強になりました。 Rei 分かります! どこを切り取ってもOKになっている感じとか、すごくグラフィックの概念に近いですよね。 Motty 私の場合、MVの世界で勉強をしたことが無いので、逆にそのような考え方をしないと理解が出来ないんですよね。今回も制作チームのリアルロックデザインのみなさんにサポートしていただきながら完成へと辿り着かせてもらいました。

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──とは言え、意表を突く色使いや組み合わせ、コラージュ等、「さすがMottyさん!」と思わずうなずくテイストはキチンと各所に散りばめられています。 Motty おかげさまで結構、好きにやらせいただきました。それをReiちゃんがOKとしてくれて良かったです。相性がイイんだろうと勝手に思ってます。 Rei 相性はバッチリですよ。私もこのMVの完成以降、この曲が流れる度にあの色彩が頭に浮かんできますもん。それって視覚と聴覚という別の五感が結びついていくマジックでもあるわけで。 私も素人ですが、自分でデザインをやったりするので、その色合わせの妙は凄く勉強になりました。色合わせで凄く和風になったりルネサンス風になったり、時代背景や国柄を感じさせられることを知ったり。「Mottyカラースキーム10色」みたいに、それらの組み合わせでMottyさんならではの世界観に結びつけられるのはホントすごいです。

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Photo by Masato Yokoyama

Motty 実は、自分の中で色使いのルールがあります。それはトーンを合わせることで。トーンさえ合っていれば、だいたい色が多少異なっても統一感は出させたりするんです。彩度を合わせるのとトーンを合わせる、そこは絶対に気をつけています。 今回に関しては、造形物はポストモダンっぽいもの。色味にしてもバッキバキの色ではなく多少気を遣った色合いを意識しました。もちろん原色も好きだし、よく使ってますけど、今回はもう少し微妙な色合い。そこが重要かなと思いますね。 あとはライティングにもかなり助けていたただきましたね。おかげさまで全体をまとめた際に、あまり子供っぽくなり過ぎずに仕上げることが出来ました。元々その辺りに落ち着かせたい意図もあったのでバッチリでした。 Rei そんなことがあの現場内でMottyさんの頭の中で駆け巡っていたとは……。改めて感心しました。

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Photo by Madoka Shibazaki

“情熱的に作ったんで、 その結果、女性にも歓んでもらえたら嬉しい“ Motty

──でもこのMVを観たら女性でもハーレーに乗りたくなる方が多数現れると思いますよ。 Rei だといいですね。 Motty そのようなリアクションが一番嬉しいです。MVが魅力的に仕上がったら、もしかしたらそんなことを想って下さる方も現れるかな……? なんてことは考えていました。 Rei 自分たちがカワイイ、カッコイイと自負できるものを情熱的に作ったので、その結果、女性にも歓んでもらえたら嬉しいですね。私たちが作っている時点で、自然と映像には女性ホルモンが注入されているでしょうから。……と今だったら言えますが、作っている最中は全くそんなことを考える余裕はなかったな……(笑)。 ──実際にハーレーの実物を見て、欲しくなったりはしませんでしたか? Rei まずは免許取得が先かな。なので、まずはイイ感じのメンズにタンデムしてもらう、こちらの方が早くて現実的かも(笑)。 Motty 欲しいけど、きっと自分では倒しても起こせなさそう。原付レベルでもちょっと苦労したタイプだったので、私。 ──最後にお互いに今後望むものを教えて下さい。まずはReiちゃんからMottyさんへ。 Rei ミュージシャンや役者さんを始め、色々な方との新しいケミストリーに今後も期待しています。 Motty Reiちゃんの場合は、この若さで既にこれですから。現時点でこんなにも世間から認められているのに、今後成長し続けていったら終いにはどうなるんでしょうね? もう今のまま育ってくれたら必然とカッコいい存在になっていくでしょうから、そのまま大きくなっていって欲しい。 Rei ありがとうございます。目指します。Mottyさんとも、また機会があったら是非一緒に何かやりたいですね。

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Photo by Madoka Shibazaki

Photo by Madoka Shibazaki Masato Yokoyama Text by 池田スカオ

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Rei 卓越したギタープレイとボーカルをもつ、シンガー・ソングライター/ギタリスト。 兵庫県伊丹市生。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターをはじめ、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。 2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1st Mini Album『BLU』をリリース。 FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ARABAKI ROCK Fest、SXSW Music Festival、JAVA JAZZ Festival、Les Eurockeennes、Heineken Jazzaldiaなどの国内外のフェスに多数出演。 2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる「TED NYC」でライヴパフォーマンスを行った。 2019年11月13日 通算7作品目となる 4th Mini Album『SEVEN』をリリース。 2019年12月からソロ弾き語りによる「Rei Acoustic Tour“Mahogany Girl”2019-2020」を全国10箇所開催、さらに2020年2月からはRei Release Tour 2020 “7th Note”を開催する。 2020年2月 Verve Recordsより1st Album「REI」の英語歌唱によるインターナショナル盤のリリースを発表。 HPTwitterInstagramFacrbook

丸井"Motty"元子 大分県出身、東京を拠点に活動中。 デザインスタジオRALPH(現YAR)より2014年独立。 中毒性のある色使い、エッジーでシュールな表現を得意とし、 音楽、ファッション、カルチャーを軸にビジュアル表現を行う。 広告、ロゴ、パッケージ、CDジャケット、カタログ、グッズデザイン、映像監修、 海外ファッション誌への作品提供、コラムの執筆など、独自の目線で幅広く活動中。 HPInstagram

RELEASE INFORATION

Mini Album『SEVEN』

2019.11.13(水) Rei Reiny Records Limited Edition CD+DVD 紙ジャケット仕様 UCCJ-9220 ¥3,200(+tax) Standard Edition CD 紙ジャケット仕様 UCCJ-2173 ¥2,200(+tax)

Tower RecordsHMVAmazon

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EVENT INFORMATION

Rei Release Tour 2020 “7th Note”

2020.02.22(土) 仙台・darwin open 17:30 start 18:00 info: GIP 0570-01-9999 2020.02.24(月) 札幌・cube garden open 17:30 start 18:00 info: KYODO WEST 0570-09-2424 2020.03.01(日) 福岡・DRUM Be-1 open 17:30 start 18:00 info: KYODO WEST 0570-09-2424 2020.03.13(金) 名古屋・THE BOTTOM LINE open 18:45 start 19:30 info: JAILHOUSE 052-936-6041 2020.03.19(木) 大阪・BIG CAT open 18:30 start 19:30 info: SOUND CREATOR 06-6357-4400 2020.03.27(金) 東京・赤坂BLITZ open 18:30 start 19:30 info: HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 Reiny Records先行 2019年10月18日(金) 18:00~10月27日(日)23:59 イープラス Tickets: ¥4,000(+1 Drink)

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Survive Said The Prophetライブレポート|ワールドツアー直前!観客とのシンガロングで作り上げた奇跡の一夜

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Survive Said The Prophet(以下、サバプロ)の今後へと、様々な面で夢を馳せさせる一夜であった。ライブ面では昨年の同時期に同会場で見た時よりも数段大きく逞しくスケール感も増し、更に雄々しく映った。また、感受する我々側も、それらを全身でしっかりとレシーブ。呼応し、シンガロング&アンセム化させていた各光景も印象深い。つい昨年までエネルギー発散装置的な印象があった彼らのライブに対し、着実に「歌」として、その各曲が集まった各人の中で育まれ歩み出しているのを改めて実感した一夜でもあった。 今秋より<Made In Asia Tour>と銘打ったアジアを中心にワールドワイドなツアーを敢行中のサバプロ。これは国内公演では各地で音楽性も多岐に渡るアーティストをゲストアクトとして迎えて行っているものだ。現在もアジアやヨーロッパをまたにかけて続いている。 この日も当初はゲストアクトが出演予定であった。A crowd of rebellionだ。ところがこの9月にa crowd of rebellionの両ボーカル、宮田大作と小林亮輔の声帯ポリープが悪化。その治療/療養のため活動休止となり、残念ながらこのツアーにも不参加となってしまった。結果、サバプロのワンマンという形にはなったが、逆に彼らの分までも意志や想いを各曲に込め放っていたように映り、それは結果、凝縮度と瞬発力、会場の起爆へと更に結びついていった。

LIVE REPORT 2019.10.15(TUE)@Zepp DiverCity(TOKYO) <Made In Asia Tour> Survive Said The Prophet

SSTP 定刻を少し過ぎたあたりでSEが轟き始める。同時に青白い神秘的なライティングによりステージが浮かび上がる。それらがコーションランプを彷彿とさせる赤い色合いへとシフト。期待感が緊張感や緊迫感へと移り変る。ステージにTatsuya(Gt.)Ivan(Gt.)Yudai(Ba./Scream.)Show(Dr.)の各メンバーが登場。緊迫感を煽るようにサイレン音も加わっていく中、間を置きボーカルのYoshも現れた。中央ステップにてマイクを持った左腕を高らかに気高く掲げ、次の瞬間、ライブの幕開けを告げるが如く「TOKYO~!!」とシャウトするYosh。 同時にバンドが一丸となり放つデモンストレーション音の中から、最新シングル“MUKANJYO”(TVアニメ『ヴィンランド・サガ』のOPテーマ)が現れる。Tatsuyaのライトハンドが楽曲に色どりを加え、Yoshも《誰か答えてみてくれ!!》と場内に懇願するようにシャウト。Yudaiもグロウルでアンガー、それでいて激情なシャウトを轟かせていく。「東京、無感情なのか? いや、感情溢れるお前らに感謝することはたくさんあるぜ」とYosh。 SSTP 続く“Fool’s gold”に入ると、前曲での圧倒さから一転。会場を引き連れるような疾走感が場内を並走させていく。会場前方の密度もさらに凝縮。加えて、クラウドサーフの嵐が起こり始める。会場をバウンス&大合唱の渦に巻き込んだ“found & lost”を経て、ここからは彼らの特性の一つ、ダイナミズムと景色感のある音楽性が加味されていく。まずは“The Happy Song”が会場に幸せそうなワイパーを起こし景色感を共有させていく。同曲では「東京、思いっきり一緒に歌ってくれませんか」とのYoshによる扇動から会場がサビの大事なところを任され大合唱。この上ない光景へと誘われていく。 SSTP 続いて、耳馴染みのあるマイナー調のアルペジオがIvanにより紡がれていく。TVCMとしても馴染み深い“Right and Left”だ。同曲では彼らがハネさせるファンキーな部分も光り出し、対してサビで現れる開放感が会場中をここではないどこかへと引き連れていく。重さと躍動感を居させた開放感溢れる曲が続く。“I don’t care”では会場をさらに眺めの良い高みへと引き上げていく。ここでYoshから来場への感謝が述べられ、「ベラベラ喋っているよりも曲に行った方が良いだろう?」とライブへと会場を引き戻す。 SSTP SSTP 神秘性と幻想性を帯びたシンセによる同期も交えた“When I”ではYudaiもスラップを交え会場も雄々しく呼応。雄大な景色を見ることができた。また、“Conscious”ではフロントの4人が同じステップに座り弾く場面も。それ経たラスサビがさらなる開放感を引き出していく。リバース音の中、会場のクラップと共にインタールードとなるインスト曲 “[ ]”が贈られ、続くIvanによるアコギのクリスピーなストロークも印象的だった6/8拍子のロッカバラード“Listening”では、合わせて会場も大合唱。感動的な場面を共有させてくれた。 また、雰囲気をガラッと変えるように、「自分を超えていけ!!」と煽るかのように放たれた“NE:ONE”では、障壁を超えるが如くステージに向けクラウドサーフの嵐に美しさすら感じた。また、16ビートを交え、場内の呼応が楽曲を成立させていった“HI | LO”では、Yudaiの膝が作った椅子にTatsuyaが足を乗せギターソロをプレイ。豊かな景色感を楽しませてくれた。 SSTP SSTP 後半に入る際、YoshのMCはあえてノンマイクで挑まれた。自分たちはみんなに活かしてもらっている旨を告げ、そのままノンマイクのYoshを旗手に“Spectrum”のキラーフレーズ、《We are the light We are the future》の大合唱が場内より起こる。また、川が大海へと至るような大河感を味あわせてくれた“MIRROR”ではライトの光量も上がり感動的な場面が作り出されていく。 「色々詰め込んだ10年間だった。でも忘れないで欲しい。俺たちはアンダーグラウンドから始まった。最後にお前たちとカオスを作りたい!」とYosh。ラストスパートへと走り出す。 ここからのラスト2曲は更に会場中の気概もしっかりと背負われ連射された。激しくも雄々しく会場中をしっかりと吸心し放たれた“T R A N S l a t e d”、また、一際激しく鳴らされた本編ラストの“Network System”では、誰も置いていかないからとばかりに誘う歌声に、しっかりと最後までオーディエンスの雄々しい歌声や呼応もついていく。 「最高な1日をありがとう。これからもここからまた続けていこうな!!」とYosh。最後に1人、センターのステップ上で、登場時同様、片手を天に掲げ、落ちる照明と共に彼も消えた。 SSTP アンコールは2曲。それぞれ会場も交えた大合唱が巻きおこる楽曲たちで締められた。と、その前に、ここでYoshから2020年1月15日(水)にニューアルバム『Inside Your Head』がリリースされる旨が伝えられる。「めちゃくちゃ楽しみ。石橋叩いてよかった。叩き続けて良かったな!」とシャウト。“Bridges”へとイントロデュースしていく。同曲では昨春の初披露以降、既にお約束ともなっている《石橋叩き続けてたんだ》の大合唱も印象的。この日の場内も彼らの未来の姿へと思いを馳せながら、会場中で一緒に歌った。ラストは感動的に“Follow”が、これまた会場中の大合唱と共に放たれた。 この後、彼らはアジア各国とUKでのツアーを経て、<Made In Asia Tour>のファイナルとしてワンマンにて再び日本に還ってくる。海外でのライブを経て、そこで観た景色や体感したものが彼らの音楽の糧となり、またより一層のスケールアップとダイナミズムの取得、更なる景色や光景感を帯びたサウンドや音楽性にも希望が膨らむ。そこではきっと彼らが描き出す楽曲毎に雄々しくシンガロングし、アンセムさせ、呼応したりワイパーをしたり、時に聴き浸ったりと楽曲毎に自身を佇ませている皆の姿が浮かぶ。すでに私は今からその日が来るのが待ち遠しくてならない。 SSTP

Live Photo by toya Text by 池田スカオ

SETLIST Survive Said The Prophet

01.MUKANJYO 02.Fool's gold 03.found & lost 04.The Happy Song 05.Right and Left 06.I don't care 07.When I 08.Conscious 09. [ ] 10.Listening 11.NE:ONE 12.HI | LO 13.Spectrum 14.MIRROR 15.T R A N S l a t e d 16.Network System Encore En-1.Bridges En-2.Follow
SSTP

Survive Said The Prophet

Survive Said The Prophet(通称「サバプロ」)は2011年、東京にて結成。 ネイティブな英語を操るバイリンガルのボーカリストYoshの圧倒的な歌唱力とカリスマ性を筆頭に、確かなスキル、ミュージシャンシップ、そして個性的なキャラクターを持った5人のメンバーからなる奇跡のインターナショナル・ロック・バンド。 その異彩を放つ音楽性はロックに限らず、ポップ、エレクトロ、ヒップホップ、R&Bまで幅広いバックグラウンドをベースに、既存のシーンの枠に収まらないダイバーシティを武器に様々なフィールドを活動の場とし、日々進化し続けている。 HPMEMBER'S SITE 『SABA CULT』TwitterInstagramFacebook

EVENT INFORMATION

Made In Asia Tour Final (one-man)

SSTP 2019.12.09(月) OPEN 18:00/START 19:00 場所 新木場STUDIO COAST 1Fスタンディング¥4,400 2F指定席¥5,500 TICKET:一般発売 (先行発券タイミング) 11/2(土)10:00〜 詳細はこちら

RELEASE INFORMATION

Inside Your Head

SSTP 2020.01.15(水)リリース Survive Said The Prophet 初回生産限定盤:CD+DVD SRCL-11380〜11381 ¥4,000(+tax) 通常盤CD only SRCL-11382 ¥2,500(+tax) 詳細はこちら

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ライブレポート|海外に拠点を移したDYGLが鳴らす世界標準のロック

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DYGL
拠点をロンドンに移し、現在は活動照準を海外に置いているDYGL。7月から全国24ヶ所にて行ってきた全国ツアー<DYGL JAPAN TOUR>が10月19日(土)の東京・EX THEATER ROPPONGIにて完遂。大盛況の中、幕を閉じた。 9月中に行われたヨーロッパツアーを間に挟み、彼ら史上最大規模の東名阪ファイナルシリーズの終着地点でもあった同東京公演は、彼ら最大規模の会場ながらチケットは早々に完売。しっかりと現行の世界照準の雄姿を確認させてくれるものがあり、加えて作品からは伝わり切れなかった、各楽曲に込めた気持ちや気概、温度感をも含め、作品とは違った側面も楽しませてくれた。 今夏に発売された2ndアルバム『Songs of Innocence & Experience』は、従来の彼らの音楽性とはまた違った側面を感じさせた作品であった。漂うまどろみのようなサイケデリック感とリバーブ感、60'sUKのR&Bバンドたちのビート全体で躍らせるあの感覚や、80'sミッドなUKインディーズ、例えばC86年的センスがそこかしこから伺えた。 そんな同作品収録の全曲のプレイも交え贈られたこの日は、これまでの彼らの音楽性と、これらの要素の邂逅も興味深いものがあった。以下はその日のドキュメントにあたる。

LIVE REPORT 2019.10.19(SAT)@東京・EX THEATER ROPPONGI DYGL “JAPAN TOUR”

    背後のニューアルバムのジャケットのバックドロップが見守る、まだ無人のステージ。開演定刻を10分ほど過ぎた辺りで、C86的なジャングリーギターの場内BGMがまだ流れている最中、会場の照明がスッと暗転を始める。特に登場SEの類いもなく真っ暗なステージにメンバーのNobuki Akiyama(Vo.&Gt. 以下、Akiyama)、Yosuke Shimonaka(Gt. 以下、Shimonaka)、Yotaro Kachi(Ba. 以下、Kachi)、Kohei Kamoto(Dr. 以下、Kamoto)のDYGLのメンバーに加え、サポートのHiroto Taniguchi (Gt,Key,Per 以下、Taniguchi)の姿が現れる。東京公演としては実に約1年ぶり、ジャパンツアーの実質のファイナルにして彼ら史上単独では最大規模の会場ながら、そこに特別感や待望感をあえて抱かせず、「ただいつも通り自分たちのライブを演るだけ」と言わんばかりのスタンスが、そこからは垣間見れた。 Akiyamaによる、くぐもったリバーブのかかったギターのイントロが場内に響き渡っていく。頭はニューアルバムの1曲目でもあった“Hard To Love”が飾った。最初期のジーザス&メリーチェイン(Jesus And Mary Chain)を彷彿とさせるあえて低めに歌うAkiyamaの歌声と新作独特のサイケデリック感に場内が早くもたゆたい始める。続く“Let It Sway”に入ると、そこにボーイズサマー感が加わる。フロントピックアップを利かしたウォームに歪んだネオアコ感でライブが走り出し熱を帯びていく。 「久しぶりに東京に戻ってきました。いつもの会場とはちょっと趣きも違いますが、自分たちも好き勝手に楽しくやるし、あまり縛られたくないので、皆さんもお酒でも飲みながら好きに楽しんで下さい」とAkiyama。 ライブはさらに楽しく転がっていく。“Let's Get Into Your Car”ではドライブ感が、続く“Spit It Out”では昨今の彼らから感じられた、KachiとKamotoが寄与するビート感とサイケ感も加味されていく。そして、ライブはガレージ方面へと矛先を転換。“Slizzard”ではShimonakaのロックンロールなギターソロが炸裂し、対して、これまで縦ノリだったフロアのリアクションから“Boys On TV”に移ると、その裏打ちのダウンビートとブリティッシュレゲエ的なケミカルなダブも織り交え場内に横揺れを育んでいった。 中盤にはニューアルバムの曲群が配されていた。「今の常識やルールが生きにくい環境に憤りを感じてる。だけど言いたくても言えない、声をあげたくてもあげられない人たちの代わりに演奏します! 消費税10%に憤りを持っている人に変わり演奏します!」(Akiyama)と熱いMCから入った、“Bad Kicks”では、場内もその激情に感化。演奏が醸し出す、あえて荒く激情も露わにした捨て鉢感が場内を帯電させていく。 そして、それを一度クールダウンさせるが如く次曲のメローな“Only You(An Empty Room)”では、元々同曲が擁していた沈殿感や深海感と共に場内を心地よくたゆたわせていった。ここではKachiもあえて休符を多く起用。独特の余白や隙間、行間がオーディエンスに更なる自由さを寄与していくのを見た。 ニューアルバム同様、彼らの骨太さが味わえたのは“An Ordinary Love”であった。Taniguchiもグロッケン的な幻想的な音色を加え、同曲が元々擁していた生命力を更に高めていく。同曲ではKachiとKamotoが生み出すファンキーさが場内に躍動感を与え、終曲時には完全に光に包まれ至福に浸っている自分と出会えた。続いては、Kamotoがスティックからマレットに持ち替え、“Behind the Sun”がゆったりと流れ出していった。合わせてShimonakaのリバーブの深くかかったまどろみ感のあるメローなトレモロギターが会場にドリーミーさを寄与していく。 「東京は昨年末以来。本当は1年前に今回のアルバムを出す予定だったんだけど、ちょっとこだわりすぎて思ったよりも時間がかかった。今回のアルバムは自分たちでも以前と違い、今の時代もあり自分たち以外の楽器もあえて取り入れた」とAkiyama。「進歩するが故に最初の足元を見失うこともある。どんな時でも自分の無垢な部分があるんじゃないか。自分のその無垢な感覚が自分を結果的には導いてくれるんじゃないかと信じている」と続け、そんな気持ちを込めて作ったとされる、こちらもニューアルバムからの曲“A Paper Dream”がジャングリーなギターに乗り現れる。 ポップで大合唱を起こさせる曲は続く。次曲“I've Got to Say It's True“でもサビの部分は会場の大合唱が成立させた。また、Akiyamaがアコギに持ち替え歌われた”As She Knows“では場内に牧歌的かつ弾んだ雰囲気を広げ、次曲の”Thousand Miles“ではゆったりとしたアーシーさも加わり彼らのダイナミズムな面がアピールされた。 “Waste of Time”を皮切りにラストスパートに入ると新旧織り交じり、各曲毎に違った生命力や活力を場内に与え始める。“Nashville”が、ゆったりジワジワながらもこの日最大のスケール感を寄与すれば、“Come Together”では、Shimonakaもマニュアルでエフェクターをいじるシーンも交え、まるで包まれていくかのように神々しい光が会場中をここではない何処かへと誘ってくれた。 本編最後に入る前のAkiyamaのMCは、これまでの想いが堰を切ったかのように、とてもエモーショナルであった。それらを私的に要約するとこうだ。「世の中、どんどん内側に向かっていき、分断が深まっている気がする。自分もそれを見て見ぬふりをすることがあるけど、社会的、政治的なものに限らず、世界中がおかしな方向へと向かおうとしている。自分はこの先も風通しの良い文化を目指していきたい。音楽は自分にとってセラピーでもある。自分は自分にとって歌いたいことを今後も歌っていく!」。そう熱く長く語り、本編ラストの“Don't You Wanna Dance In This Heaven?”へ。ループするシューゲイズ的なKachiのベースラインの上、音が感情となり熱を帯び、とてつもないエネルギーが放出されていく。場内もそれらに感化され起爆。まさに、シーンがエクスペリエンスからエモーションへと移りゆく様を見た。そんな中、プレイし終えた彼らはショートディレイによるフィードバック音を残し袖へと消えた。 アンコールは2曲。それぞれ彼らの出自的なものを感じた。上半身裸のShimonakaも突如MCをふられ、「感慨深いツアーだった」と、今回のジャパンツアーを振り返った。そんなShimonakaのギターも特徴的な力強く感情が込もりエモさのある“Don't Know Where It Is”では会場から無数のコブシが挙がり、それに感化されるようにShimonakaもKachiもステージ狭しと動き回りながらプレイ。最後はニューウェーブ的な歌い方に、前のめりでツッコミ気味のKamotoのドラミング、そしてロックンロールリバイバル的な“All I Want”が誇らしげに鳴らされ、とてつもない熱さを場内に生み出し、フィードバック音と、「凄かった……」の観後感を残し5人はステージを去った。 今後も彼らは22日(火)にはUSツアーを、11月5日(火)には今回のツアーのエクストラを渋谷CLUB QUATTROにて行い、その後、アジアツアーへと向かう。きっと今後も彼らは国内外を問わず、世界を照準にみた日本発のロックバンドの音楽を放ち、魅了していくことだろう。次にまたこの日本で逢うときは、もっともっと大きくスケール感豊かな彼らと出会えるに違いない。これからの彼らの飛躍がますます楽しみになった一夜であった。

Live Photo by Yukitaka Amemiya Text by 池田スカオ

SETLIST

01. Hard To Love 02. Let It Sway 03. Let's Get Into Your Car 04. Spit It Out 05. Slizzard 06. Boys On TV 07. Bad Kicks 08. Only You(An Empty Room) 09. An Ordinary Love 10. Behind the Sun 11. A Paper Dream 12. I've Got to Say It's True 13. As She Knows 14. Thousand Miles 15. Waste of Time 16. Nashville 17. Come Together 18. Don't You Wanna Dance In This Heaven? Encore En-1. Don't Know Where It Is En-2. All I Want

DYGL

DYGL(デイグロー)は2012年結成、Nobuki Akiyama(Vo,Gt.)、Yosuke Shimonaka(Gt.)、Yotaro Kachi(Ba.)、Kohei Kamoto(Dr.)の4人組バンド。2017年4月にThe StokesのギターのアルバートハモンドJrのプロデュースで1st Album『Say Goodbye to Memory Den』をリリースし、日本を皮切りに、台湾、タイ、マレーシア、インドネシア、韓国とアジアツアーを敢行。その後、FUJIROCK FESTIVAL’17のREDMAQUEEのステージで5000人を集めてパフォーマンスを行うなど注目を集める。2018年に活動の拠点をイギリスに移し、精力的にヨーロッパツアーなどを行いながら、日本でも12月に行った東名阪札福ツアーはすべてソールドアウト。2019年1月にはアメリカのBAD SUNSとのヨーロッパツアーを成功させ、3月にはSXSW2019にて8公演を行う。今回約2年ぶりの2nd Full Album『Songs of Innocence & Experience』を7月にリリースし、FUJI ROCK FESTIVAL’19でのライブも国内外から高い評価を受ける。 現在アルバムツアー中。北米、EURO、アジア(日本を含む)で全52公演を敢行する。 HPTwitterInstagramFacebookSoundCloudYouTubeApple MusicSpotify

EVENT INFORMATION

DYGL “JAPAN TOUR EXTRA SHOW”

DYGL 2019.11.05(火) OPEN18:00/START 19:00 東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO TICKET:SOLD OUT

US TOUR

2019.10.24(木) The Wayfater コスタメサ 2019.10.25(金) UNCOOL FESTIVAL V @ The Hollywood Palladium ロサンゼルス 2019.10.26(土) UNCOOL FESTIVAL V @ The UC Theatre バークリー 2019.10.28(月) No Fun ポートランド 2019.10.29(火) The Sunset シアトル 2019.10.30(水) Biltmore Cabaret バンクーバー

ASIA TOUR

2019.11.2(土) Dudesweet バンコク 2019.12.04(水) Clapper Studios 台北 2019.12.05(木) This Town Needs 香港 2019.12.07(土) Hou Live 深圳市 2019.12.08(日) Mao Livehouse 広州市 2019.12.10(火) Nu Space 成都市 2019.12.11(水) Vox 武漢市 2019.12.13(金) Vas Live 上海 2019.12.14(土) Mao Livehouse 杭州市 2019.12.15(日) Omni Space 北京 詳細はこちら

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鬼才ギャスパー・ノエ監督インタビュー|映画『CLIMAX クライマックス』“観るドラッグ” ができるまで

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死んだ人間の魂の視線で描いた『エンター・ザ・ボイド』(09)。過激な性描写を3Dで描いた『LOVE 3D』(15)など、毎回、観客を挑発する問題作を発表してきたフランスの鬼才、ギャスパー・ノエ。最新作『CLIMAX クライマックス』は、山奥の廃墟でパーティを繰り広げるダンサー達の物語だ。飲み物のなかに誰かがLSDを入れたことで、パーティは恐ろしい結末を迎えることになる。ダンサーの激しいダンス。強烈なエレクトロニック・ミュージック。そして、大胆なカメラワークが融合して観客の感情をかき乱す、まるで観るドラッグのような危険な映画はどのようにして生まれたのか。来日中のギャスパー・ノエに話を訊いた。

11/1(金)公開『CLIMAX クライマックス』日本版予告

Interview:ギャスパー・ノエ

──この映画は実際にあった事件からインスパイアされたそうですね。 1996年に起こった事件を自由に脚色したんだ。でも、その事件を映画にしたかったというよりも、ダンスを軸にした映画を撮りたいと思っていて、その事件がうってつけの題材だった。 それで、閉じ込められた場所でダンサー達がだんだん自分を見失っていくようなパニック映画を撮ろうと思ったんだ。最後にカタストロフィが待ち受けているような物語をね。 私は子供の頃から、登場人物の誰が死んで誰が生き残るのかわからないようなパニック映画に強く惹かれていたんだ。例えば『タワーリング・インフェルノ』や『ポセイドン・アドヴェンチャー』みたいな映画が大好きだったね。 ──ダンスのどんなところに魅力を感じますか? ヴォーキング・ダンスを初めて観た時はすごいと思った。役者がセリフを口に出して表現する以上に、ダンサーは身体を通じていろんなことを表現している。ダンス以外にアクロバットも好きなんだ。でも、スポーツにはまったく興味がない。フィギュアスケートはまだ興味はあるけど、フィギュアスケートの映画を作ろうとは思わないね。

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──今回はいろんなスタイルでダンス・シーンを撮影していますね。正面から撮ったり、俯瞰で撮ったり、手持ちカメラで撮ったり。撮影スタイルに関して何か心掛けたことはありますか。 いちばん最初のダンス・シーンは、唯一振り付けをしてリハーサルに2日間かけたんだ。その間、私は現場にいなくて本番で合流したんだが、その時には、もうカメラとクレーンの位置が決まっていたんだ。クレーンをどう使うかは、振り付けを担当したニーナ・マクニーリーが決めていた。彼女はハリウッド・ミュージカルのテイストを取り入れようとしたんだ。 それ以外のダンス・シーンはリハーサルをせず、ダンサーは即興的に踊って、カメラは常に3台回していたよ。俯瞰で1台、それ以外の2カ所にカメラを置いた。その中でも俯瞰で撮った映像が良くて、とくにダンス・バトルのシーンは気に入ってるよ。

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──演技もダンスのように即興が多かったのでしょうか。 今回は自分が撮りたい作品の内容を、ざっくり書いた2~3ページの脚本があっただけ。脚本は無いようなものだった。 出演者のなかで役者の経験があるのは2人だけで、その他のダンサーはカメラの前で演技したことが無かったんだ。そんな彼らにセリフを言ってもらっても、自分が撮りたいものは撮れないとわかってたよ。だから、ダンサーそれぞれの特徴を役に活かしたんだ。そして、「何か笑わせるようなことを言って」とか、ざっくりした指示を出して、その指示に対してリアクションしてもらって、良いシーンが撮れたらそれを使った。 ──ダンサーひとりひとりの個性が活かされているわけですね。 撮影に入る前、彼らに平常心じゃない自分をダンスで表現した映像を送ってくれるように頼んだんだ。自撮りだから、すごくおもしろい映像が送られてきたよ。その一方で、私が集めた精神病院の患者の様子や普通の状態じゃない人々の映像を見せて、ダンスや演技の参考にしてもらった。 この映画に出演していたダンサーのほとんどはパリ郊外に住んでいて、あまり豊かじゃない生活を送っている。この映画を成功の足掛かりにしたいと思っているから、みんなすごく自分を大切にしているんだ。いつもの映画の現場とは大違いでアルコールは一滴も飲まないし、もちろんドラッグもやらない。みんな競争心を抱いているから緊張感のある現場だったよ。

──ダンサー1人1人がビデオのモニターを通じて紹介されるオープニングのシーンでは、モニターの横に『サスペリア』『ソドムの市』『切腹』など様々なビデオが山積みされています。それぞれ、この映画に影響を与えた作品なのでしょうか。 あの冒頭のシーンを撮ろうとした時に、モニターの横のスペースが空いているのが気になったんだ。どうしようかと思って、自分のアパートに行って私物を持ってきて置いた。どの作品も何十回も観たお気に入りだよ。私はDVDよりVHSが好きなんだ。DVDのほうが映像が美しいのはわかっているけど、自分にはノスタルジックなものにバカみたいに惹かれるところがあってね(笑)。

CLIMAX

──『サスペリア』と『クライマックス』には通じるところがありますね。ヒロインはダンサーで、最後にカタストロフィが待ち受けている。 確かにそうだね。あと、ケネス・アンガー(Kenneth Anger)の『快楽殿の創造』では、登場人物が麻薬のような液体を飲まされて朦朧とする。そんな風に、人が平常心を失ってしまう物語が好きなんだ。

The Inauguration of the Pleasure Dome - Kenneth Anger

──登場人物だけではなく、あなたの映画を観ていると観客も平常心を失います。あなたはなぜ、カタストロフィックな物語に惹かれるのでしょう。 人生がカタストロフィックなものだからだよ。ニュースを見ていると。毎日、カタストロフィがどこかで起こっている。アマゾンの大火災とか、イランや北朝鮮のミサイルとかね。我々はカタストロフィのなかで生きているんだ。

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Text by 村尾泰郎 Photo by Kohichi Ogasahara

ギャスパー・ノエ(Gaspar Noé)

1963年12月27日、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。父は画家のルイス・フェリペ・ノエ。子供時代の数年間をニューヨークで過ごし、1976年フランスに移住。パリのエコール・ルイ・リュミエールで映画を学んだ後、スイスのサースフェーにあるヨーロッパ大学の映画科の客員教授となる。短編映画『Tintarella di luna』(85/未)、『Pulpe amère』(87/未)を経て、94年に中編映画『カルネ』で、カンヌ国際映画祭の批評家週間賞を受賞。続編で初の長編映画となる『カノン』(98)はアイエス.bの資金援助を得て完成、カンヌ映画祭でセンセーションを巻き起こす。その後、『アレックス』(02)もカンヌで正式上映され、更なる衝撃をもたらす。その後も、『エンター・ザ・ボイド』(10)、『LOVE 3D』(15)など世界の映画ファンを驚愕させ続けている。

INFORMATION

CLIMAX

CLIMAX クライマックス

2019年11月1日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開 配給:キノフィルムズ/木下グループ

『カノン』『アレックス』『エンター・ザ・ボイド』『LOVE3D』など作品数は多くはないものの、新作のたびにその実験的な試みと過激描写で世界中を挑発し続けてきた鬼才ギャスパー・ノエが3年ぶりに放つ最新作。出演のソフィア・ブテラ(『キングスマン』、『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』)以外は各地で見出したプロのダンサーたち。音楽は、ダフト・パンク、ザ・ローリング・ストーンズ、セローン、エイフェックス・ツインなどが使用されている。演技経験のないプロダンサーによる度胆をぬくパフォーマンスとダフト・パンクらが手がけたエレクトロミュージック、そして、全編を通して多用される長まわし撮影で、ドラッグにより次第に充満していく地獄絵図を鮮烈に映し出した。

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“日本で生まれた偉大なレーベル”mule musiqが世界に残した15年の軌跡を追う

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音楽の仕事に携わって一体どれほどの月日が経ったのだろうか? ベルリンへ移り住んで5年、〈mule musiq)との関わりは東京にいる時より濃厚になった気がする。“音楽”を感じない瞬間などないこの街の日々の生活は、様々なシーンを牽引するトップアーティストやプロデューサーとの出会いさえも日常なのだ。 そんな中で、いろんな場面において〈mule musiq〉という名前が登場する。言うまでもなく日本を代表するダンスミュージックレーベルであり、世界の至るシーンで注目されており、今の私を構築したルーツの一つであることは紛れもない事実なのだ。そんな〈mule musiq〉が今年で設立15周年を迎え、その集大成として、12月7日(土)にはDJ Kozeをゲストに迎えたアニバーサリーイベントが渋谷のContactにて予定されている。 開催を前に、レーベルの主宰であり、世界を飛び回るDJでもあるToshiya Kawasaki氏にQetic独占でインタビューを行った。15年の時を経て、今改めて〈mule musiq〉という偉大な存在を紐解いてみたいと思う。

「僕は、一般的な人と比べると常に新しいものを追い掛けていると思う」 Toshiya Kawasaki

mule musiq Kana Miyazawa(インタビュアー|以下、Kana) まずは、15周年おめでとうございます! Kawasakiさんと初めて会ったDOMMUNEの現場は今でも忘れられませんが、今ではベルリンやパリで飲みながら情報交換や雑談する関係でいれることをとても嬉しく思っています。今日は改めて〈mule musiq〉を振り返ってみたいと思っています。レーベルを15年間続けて、しかもクオリティーも保ち続けるというのは非常に大変なことかと思いますが、何か秘訣のようなものがあるのでしょうか? Toshiya Kawasaki(以下、Kawasaki) 嫌味に聞こえるかもしれないけど、何も秘訣なんてなくて、常に新しいアイディアがたくさん生まれて来る。もちろん色々リサーチして、たくさんの音楽を聴いて、新しいイラストレーターやフォトグラファーを探したりしてるけど。あと、絶対的に自分のレーベルからのリリースを客観的に見るようにしているかな。その音楽に対して人はお金を払うのだろうか? と。僕的にはマスターベーションのような物事のあり方や生き方はあんまり好みじゃないから。 Kana 15年間アイデアが自然発生し続けることがすでにすごいと思いますが、何か、心掛けていることはありますか? Kawasaki それも特にはないかな。ただ、トム・フォード(TOM FORD)にデザイナーが変わってからのGucci全盛期だった時にBRUTUSでトム・フォードの特集があって、彼も同じ様な質問をされていたんだけど、「誰よりも先に今やっていることを飽きること」って言っていて、今もその言葉は覚えているよ。僕はそこまでではないけど、一般的な人と比べると常に新しいものを追い掛けていると思う。 あと、ファッション的なバックグラウンドがあるというのが、他のレーベルのA&Rとの大きな違いじゃないかな。僕にとってレコードのアートワークはファッション広告みたいに捉えているし、どんなに音楽が良くてもアートワークに関してミュージシャンと意見が合わなかったら〈mule musiq〉からは絶対にリリースしない。実際、沢山のリリースがmuleからリリースされなかった……。
mule musiq
petre inspirescu/vin ploie  mule musiq 192
mule musiq
dj sprinkles/midtown 120 blues  mule musiq cd 9
Kana アートワークが理由でリリースされていない楽曲があったとは知りませんでした! でも、確かに目を引くアートワークが多いですよね。特に、ステファン・マルクス(Stefan Marx)は〈mule musiq〉のトレードマークのようなイメージがあります。私もヴァイナルに関してはアートワークを先に見ています。楽曲ももちろんですが、部屋に飾りたいかどうかを考えたりしますね。 15周年を記念して、世界中でギグが行われていますが、特に印象に残った都市、クラブはありますか? 今回のツアーでなくて以前のことでも構いません。
mule musiq
va/i’m starting to feel ok vol.3 compiled by toshiya kawasaki
Kawasaki いつもパリが一番大好き。お客さんのクオリティーが自分にとって一番合っていると思う。どんな音楽が流れていてもオープンから多くの人が来ていて遅い時間まで残ってくれる。クラブギグは世界的にどんどん難しくなって来ていると思うけど、ヨーロッパよりはアメリカやメキシコの方が今はツアーをしていて楽しいかな。New Yorkの「Good Room」は西麻布にあった「Yellow」を彷彿させる感じで好きかな。キャパシティーは大きいけど、そこまで人が沢山入っていなくても良い雰囲気が出来上がるのも「Yellow」に似ている。 mule musiq
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Michael Mayer mule 3rd years anniversary at space lab yellow 2007.3.20
Kana 以前、今はNYが楽しいって話をしていましたよね。「Yellow」は私も大好きで思い出深い箱なので是非、「Good Room」に行ってみたいです! メキシコは私も気になっているシーンの1つですね。ヨーロッパではどこか印象深いギグやクラブはありますか? Kawasaki ツアーを始めて10年で、初めて海外でDJをしたのが「panorama bar」だったんだけど、それは忘れられないね。あまりの緊張に飲み過ぎて三日酔いくらいだった(笑)。もちろん「Robert Johnson」は特別な場所だと思う。 Kana (笑)。いつもそんなに緊張しているようには見えませんけどね。「p.bar」はどのアーティストにとってもスペシャルな場所ですよね。お客さんとして行ってもそう思います。「RJ」は前評判がすごくて、実際行ったらそれ以上でした。個人的にもいつも考えるんですが、Kawasakiさん的に海外のクラブは日本とはどんな違いがあると思いますか?
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Henrik Schwarz at WOMB
Kawasaki いつも思うのは、どうして日本のクラブのDJブースはステージの上にあるんだろうって思う。もちろん大きなキャパのお店だとしょうがないけど、500人くらいまでのキャパなら絶対にお客さんと同じ目線というのが一番大事だと思う。「panorama bar」も「Robert Johson」もそうだし。 Kana 確かにそうですね! 私もいつも思いますし、ATAがインタビューで絶対大事なことだと言っていたのが印象的でした。キャパは広いですが、アムステルダムの「Shelter」も同じですね。多くの日本人アーティストが海外で実力を発揮していて本当に素晴らしいと思いますが、日本のシーンに対しては厳しい意見を聞くことも多いです。現在の日本における課題は何だとお考えですか? Kawasaki 日本のクラブで働いている人はもっと世界の良いとされているクラブに視察に行ったり出来れば良いんじゃないかなと思う。フェスティバルを見に行っても意味が無い。あと、音楽以外の動線を作れると一番ベストだと思う。例えば、それは飲み物だったり。20年前、僕が初めてレギュラーパーティーをやっていた三宿の「web」はお酒が美味しかった。音楽の力だけで東京はやっていけない……。東京らしいモダンなお店がどうして出来ないんだろう? っていつも不思議に思ってるけど。 Kana ベルリンのクラブのお酒はクオリティーが低いので日本のクラブは美味しいと思ってしまいますが、メニューが豊富でプロ意識の高いバーキーパーがいるミラノの「Tunnel Club」に行った時はレベルの違いに驚きました。値段にも驚きましたが(笑)。話は変わりますが、〈mule musiq〉と並行して、日本のシティーポップのリイシューをメインとした〈studio mule〉を立ち上げられましたが、これはどういった経緯からですか? Kawasaki 〈studio mule〉は本当は僕が始める予定だったレストランの名前だったんだけど、レストランのBGMをリリースするレーベルの名前にもしようと思っていた。でもパリからシェフが来る予定が頓挫して、その計画が無くなった代わりに、レーベルだけ先に始めようとしたのがきっかけかな。でも、当初は日本の音楽に焦点を当てようとは全く思っていなかったけど、日本の音楽が海外レーベルにライセンスされていくのを見て、これは良くないと思って今の様なスタイルになった。
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va/midnight in tokyo vol.1 compiled by toshiya kawasaki
Kana ヨーロッパ全体のシーンを見ても、日本の古き良き楽曲が見直されて、ハウスやディスコ、ビートミュージックのシーンにおいて一種のリバイバルブームのようなものを感じていた時に〈studio mule〉が設立されたので、さすがだなと思っていたんですが、実はそんな経緯があったんですね。でも、素晴らしい国産を国内で守るってとても大事なことですし、Kawasakiさんだからこそ出来たのではないでしょうか? レストランの話はパリで会った時にお聞きしていましたが、計画通りにならず残念です。でも、次に期待しています! Kawasaki 多分、初めて「sure shot=狙い撃ち」ということをやったかも。今までは一番やりたくなかったことだったけど、今は結構楽しめいてる。 Kana Kawasakiさん自身もDJとして海外での活動が非常に多いですが、拠点をヨーロッパへ移すことはお考えですか? Kawasaki ずっと考えているけど僕は東京が好き。自分自身に需要があれば住んでいる街は関係無いと思う。もちろん需要が熟せるスケジュールを超えた時は考えないといけないと思うけど、僕はそんな感じじゃない。でも、自分が好きな人は皆んな海の向こうにいるんだ。クニユキですら言ってみれば海の向こう。だから、半分半分くらいに出来ればそれは理想かもしれない。今は少し真剣に考えているかな。東京で音楽を続けていくことに対してどういう未来を思い描けるか正直分からないのが現状だったりするし……。
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kuniyuki takahashi/newwave project mule musiq 215
Kana 私はもう日本を出てしまった立場ですし、〈mule musiq〉がヨーロッパ拠点になってくれたらいいなと勝手なことを思ってしまいますが、やはりこれまで日本で築き上げてきた歴史もあるし、そう簡単ではないですよね。最後になりますが、12月には拠点である東京で開催されるアニバーサリーイベントにDJ Kozeを招聘していますが、どういった理由からですか? Kawasaki それはもう彼がベストだから。僕にとって彼はNO.1で誰が自分にとってNO.2かは分からないけど、NO.1とNO.2の差はもの凄く大きい。
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左:DJ Koze、右:Lawrence
Kana なるほどですね。DJ Kozeがゲストだった「代官山AIR」でのレーベルナイトを思い出しました。今回は場所が変わって渋谷Contactですが、非常に楽しみです! 本日は貴重な時間とお話しをありがとうございました!!
2004年、ヨーロッパでプロダクション/ディストリビューションを行い日本へは逆輸入として入って来るというこれまでになかったスタイルでスタートし、幾つかのフロアヒットを経て複数のメディアでベストレーベルに選ばれ、"日本で生まれた初めての偉大なレーベル"とも称された〈mule musiq〉。同レーベルは、エレクトロニックミュージックのあらゆる面にフォーカスし、これまでに400タイトルを超す作品をリリースしてきた。15周年を記念してリリースされた12inchシリーズは12枚全て集めると、stefan marxが描いた「i’m starting to feel okay」という〈mule musiq〉のスローガンがパズルの様にバックカバーでディスプレイされるというユニークなアイディアで人気を博し、一昨年からスタートした新レーベル〈studio mule〉からは埋もれてしまった素晴らしい日本の音源が数多くリイシューされた。 そして、New York、LA、Paris、Milano、London、Mexico city、Berlin等で行われた来た15years tourのファイナルに盟友DJ Kozeが約4年半振りに来日を果たす。常にユニークかつ音楽的でモダンハウスシーンのNo.1 DJと言えるDJ Kozeがクラブギグを行うのは世界的に稀でとても貴重な一夜となるだろう。
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DJ Koze

Text by 宮沢 香奈

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15 YEARS MULE MUSIQ

mule musiq 2019.12.07(土) Contact Tokyo LINE UP: DJ KOZE TOSHIYA KAWASAKI and more
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gato×pavilion xool インタビュー|目指す先はシーンのアイコン。どこにも依存せず新しいものを生み出すために

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gato×pavilion xool インタビュー

視覚と聴覚をこれでもかと刺激しエクスタシーへと導くパフォーマンスで、都内のライブハウスやクラブを湧かせる5人組・gatoが新作EP『miss u / C U L8er』で大きな変化を遂げた。 前作『luvsick』のクールな中に情熱が燃えるサウンドスケープやソウルフルな歌声、ダンス・ミュージックの先端をとらえるビートといった持ち前の魅力は健在。そこに、これまで以上に即効性の強いポップセンスが加わった、ネクスト・ウェーヴの決定打とまで言いたくなるほどの5曲を収録した1枚になっている。 今回はプロデューサーであるpavilion xoolにも入ってもらい、作品の魅力に迫るとともに、自らが“音楽シーンのアイコンになりたい”と語る5人の今とこれからについて、話してもらった。

gato×pavilion xool インタビュー

Interview:gato × pavilion xool

──gatoはもともと作詞作曲を手掛けヴォーカルを務めるageさんと、ギターとサンプラーのtakahiroさん、マニュピレーターのkaiさんとドラムのhirokiさんの4人で始まったんですよね? age もともと僕がバンドを組みたくて、当時サポート・ベースとして入っていたバンドから、ドラムのhirokiを誘ったんです。その頃はギターが2本あるバンドをやりたくて、takahiroとkaiに入ってもらうことになりました。そのバンドは5人組のバンドで、ヴォーカルが女性だったんですけど、彼女が抜けるタイミングで曲調も新しくしたいと思い、僕がヴォーカルになって今の編成になりました。 ──そして今年に入ってVJのsadakataさんが加わった。 age 最初は環境や予算が合う時だけ、VJをお願いしていたんですけど、sadakataが正式メンバーとしてやりたいって、言ってくれたんです。僕らとしてもVJがいたりいなかったりするよりは、ずっといてくれたほうがよかったので、入ってもらいました。 sadakata 私はもともとgatoのファンだったので、正式メンバーとして動きたいっていう想いがあったんです。その気持ちをageくんに話したら、ずっといてくれたら嬉しいって言ってくれて。 ──視覚の情報はすごく強いので、音とリンクしてその効果を存分に発揮することもあれば、それだけが独走したりイメージを限定したりしてしまう可能性もある。特にsadakataさんはメンバーとともにステージに立つので、必然的に注目度が高まる部分もあります。そこで意識していることなどはありますか? age おっしゃるように、視覚の情報はすごく強いからこそのライブをやりたいんです。VJがステージに立つことで、“サウンド=聴覚”と“映像や光=視覚”のバランスは“5:5”くらいになるイメージです。 sadakata 正式メンバーになる前から、ライブを観ながら「私だったらこんな映像入れるな」って、いつも画を思い浮かべていました。なので、ageくんが作った基礎に演奏隊の3人が加わってできたライブのアレンジから受けたインスピレーションを映像にしていく上で、特に苦労したことは今のところないですね。あとはそれをageくんやみんながいいと思うかどうか。ダメだったらちょっと変えたり別のイメージを出したり。そうやってライブごとに模索しながらやっています。

gato×pavilion xool インタビュー
gato×pavilion xool インタビュー

──kaiさん、takahiroさん、hirokiさんはバンドのなかで、どのような役割を担っているのでしょう。 kai 僕は”マニュピレーター”という立場で、ライブごとに曲の構成を練ったり、サウンド面での演出を考えたりしています。演奏に関しては、PCを使ってほかのメンバーの楽器では出せない音を出しています。 takahiro 僕はもともと絵に描いたようなギター少年で、gatoも初期の頃はそういう要素もあり、2018年の最初に出した“Creep”や“Natsu”ではガンガン弾いていました。しかし、それ以降の曲がよりエレクトロ路線になってきて、今回のEPではギターを弾いていないんです。 ──ギターはライブで必要に応じて使う。 takahiro はい。ライブではサンプラーから音を出すこととギターを弾くことが僕の役割なんですけど、ギターに関しては、プレイヤーとして主張の強いフレーズを入れるのではなく、曲に寄り添って曲の魅力を引き立てるようなフレーズを入れていくんです。なので、音源も聴いてほしいと思いますが、ライブならではの楽しみも、感覚的なことだけでなく、形としてはっきりしているので、ぜひライブを観にきてほしいですね。 hiroki ageとバンドを始めた頃は、ポスト・ロックなことをやっていました。ドラムも変拍子や手数ありきのプレイが特徴だったんですけど、エレクトロとかダンス・ミュージックをやろうよってなったときに、アプローチは変わりましたね

gato×pavilion xool インタビュー

──具体的にはどのような変化があったのでしょう。 hiroki そういう手先の技能よりも、生のドラムが入ることで曲に高揚感が出るように、打ち込みとの関係性を繊細に考えるスタイルになっていきました。自分がフィジカルで叩くことより、トラックをどれだけ響かせられるかが第一ですね。 ──そこに作詞作曲を手掛け、ライブではフロントマンとしてそびえ立つageさんがいる。そのオーラが凄まじくて、いつも驚くばかりです。 age ライブでの軸は自分のナチュラル・ボーン系のダンスとそれに合わせた5人の動き、VJの映像、箱と僕たちで押し出すサウンドの3つです。ドラムやギターやヴォーカル、フィジカルで出せる音や動きにはもともと自信があったし、そこにsadakataの映像が固まってきたことで、いいパフォーマンスを観たときの多幸感やエンタテインメント性は、よりオリジナルなものとして確立できている感触はあります。 ──“gatoが出るイベント/パーティだから行く”というお客さんも多いですよね。そこがすごく興味深いです。 age 音楽シーンのアイコンとして存在したいという想いは強いです。 kai ”アイコンになるべく”っていう軸があるので、そこに向かってみんなで話し合って、どんな曲や音やビジュアルが、どの位置にあったらいいのかや、オーディエンスからの見え方も意識しながら音を構築しています。そこには、5人それぞれの意見があるんですけど、リーダーのageを中心にみんなが呼応する感じで、いい足し算ができるようになってきたと思います。

gato×pavilion xool インタビュー

──生音からエレクトロニックまで幅広くプレイし、早い段階からgatoの音楽性と共鳴してきたDJ JUDGEMANとのパーティ<KØĀ>、ravenkneeやphaiとの繋がりなどは、これから大きなムーヴメントが起こりそうな”何か”がうごめいているような印象があります。gatoにとって”シーン”とは? age 僕らにとっての“シーン”って、ジャンルや演奏スタイルではなく、何か新しいものを生み出したいという姿勢で繋がっているもの。僕らはいろんなジャンルが混ざっているし、バンドだからライブハウスとか、エレクトロだからクラブとか、そういう限定的な感じではなく、どこにも依存しない形態は強みだと思っています。 ──まさにそうだと思います。 age JUDGEMANはDJだし、phaiは2人のトラックメイカーが組んだユニットだし、ravenkneeはバンドだし、でも”同じ界隈”みたいなイメージがある。それは僕らに共通認識のようなものがあって、アウトプットの色味や演奏形態を揃えなくても、ひとつの括りはできるものなのかなって思いますね。 ──音楽的に限定的な言葉で形容できるシーンではないですよね。アティチュードや雰囲気的な何か。 age 今現在、深く関わっているのがおしゃってくれた1人のDJと2組なんですけど、ライブハウスとかクラブカルチャーとか、いろんなものがクロスフェードしているものの中心に、僕たちはいるんだって、思っています。それをもっともっと大きくして、いろんな人たちを巻き込んでいけるように、積極的に動きたいですね。 ──では、続いて新作EP『miss u / C U L8er』の話に移ります。ここからは、今作のプロデューサーであるpavilion xoolさんにも加わっていただきます。前作のEP『luvsick』と比べて、すべての曲がクラブのピークタイムにかけれられそうな、ざっくり言うとアッパーな曲が揃っています。 age そうですね。BPMも速くなっていますし、テンション感は違うと思います。そこは、僕たちがクラブにもよく出ているし、仲間にもたくさんのDJがいるし、そういう人たちにかけてもらって共存したいっていう目的はありました。あと今回は、自分のなかでのポップ・センスみたいなものを打ち出したくて、メロディックな曲をしっかり入れつつ、gatoらしいところに落とし込めたEPになったと思います。

gato - Miss u / C U L8er

──“シーンのアイコン”として決定的なものを出したかった、ということですか? age そうですね。 ──『luvsick』も含めての話になりますが、gatoの音楽的な背景にはムーム(múm)、ボノボ(Bonobo)、ジェイムス・ブレイク(James Blake)、フランク・オーシャン(Flank Ocean)、ムラ・マサ(Mura Masa)といった存在からの影響と、そこに内燃するロックバンド魂が見えるのですが、いかがでしょうか? age 今挙げてくださったようなアーティスト、ジェイムス・ブレイクやボノボ、フランク、オーシャンなどは、世代的に衝撃を受けたというか、自分のなかに落とし込まれたものではあるんですけど、直接的に意識して曲を作っているかというと、そういうわけではないんです。付け加えるならシガー・ロス(Sigur Rós)とかも含めて、アンビエント的な側面を、真似して再現するというより雰囲気としてとらえている感覚です。ムームみたいなことは、ひとつの理想として、やろうとしたことはあるんですけど、「そもそもこの音どうやって出してるの?」ってなって、解決しないまま終わりました(笑)。ロックに関してはgatoの根っこにあるものですね。

gato - luvsick

──ロックにもいろいろありますが。 age gatoの前身バンドでhirokiと共有していた北欧系のポスト・ロックや、takahiroは90年代エモみたいなバンドをやっていて、僕はそのバンドの追っかけをしていました。あとは、もともとカオティック・ハードコアが好きだったんです。 ──デリンジャー・エスケイプ・プラン(The Dillinger Escape Plan)とかConverge(コンヴァージ)とか? age そうです、めちゃくちゃ好きですね。あとは、そこから遡ってパワー・ヴァイオレンス系とか。 ──ライブで感じるエネルギーもそうですけど、音の面でも、コアな部分でロックからの影響があるというのは腑に落ちます。エモとかって、例えばThe 1975もそうで、あらがえないじゃないですけど、世代的に滲み出てくるもののような気がして。 age 言われてみれば確かに。 pavilion xool 僕もgatoはエモ・バンドだと思っています。 ──pavilion xoolさんのgatoに対するイメージを、突き詰めて話してもらえますか? pavilion xool gatoには失礼かもしれないけど、最初にluteのカルロスまーちゃんから、「パブくん(pavilion xool)がきっと気にいるバンドがいるよ」って、紹介されて音源を聴いたときは、「ああ、エレクトロな感じの、なるほどね」くらいの印象で、大きく感情が動くとか、そういうことはありませんでした。でも、ライブを観てめちゃくちゃカッコいいなと思って、そのあともイベントとかで一緒になって観るたびに、「今日のナンバー1!」って思ってましたね。で、そこで思ったのが、音源とライブの勢いが大きく乖離しているということ。僕だったら音源も最強にできるって、思ったんです。 ──pavilion xoolさんは、制作にあたって具体的にはどんな感じで絡んだのでしょう。 age ミックスからマスタリングの段階でガッツリ入ってもらって、いろいろ相談しつつ作っていきました。プロデューサー的な立ち位置で、サウンドのアレンジにもいろいろと意見をもらえて、pavilionくんじゃないとできないことも入れてもらったのは、ほんとうに大きかったです。 pavilion xool 今回はageさんのMIDIデータをもらって、いつもやっているようなものと同じような感覚で、好きにやらせてもらいました。ageさんはこんな感じかなとか、いろいろ想像しながら音を加えたり音色を考えたりして、最終的にマスタリングしています。話が戻りますけど、ライブはめちゃくちゃカッコいいのに、音源は音源で別なのはいいとしても、本当にageさんが家で作ったような感じだったので、これを単にミキシング/マスタリングで整頓するというよりも、絶対にプロデューサーがいたほうがいいと思って、最大限にアプローチしました。 ──かなり細かい作業だと思いますが、大きなポイントはどこにあったんですか? pavilion xool 音源を聴いてライブに行きたいと思ってもらえるようなものを目指しました。ライブに足を運んだらgatoの良さはよりわかるので、今度はライブの帰りの電車とかでまた音源を聴いたら、ライブと音源の違いが相乗効果になって、さらにカッコよく感じられるものを作りたいと思いました。僕の役割は、アップルの純正イヤホンで聴いたときに、その良さがちゃんと伝わるサウンドにすることでした。

gato×pavilion xool インタビュー

──なるほど。 pavilion xool その上で、ミックスとかマスタリングにおいては、僕のなかで正しい音があるんです。だから、まずはその正位置に戻してから加工するんですけど、gatoに関してはけっこう大胆に加工しました。ageさんが家に来てマスタリングした音源を聴いて、お互いの意見を交換してブラッシュアップしていったんです。 age もともとpavilion xoolくんが作る曲や、関わった作品の音が好きだったので、オファーしてよかったです。職人でありアーティストでもある、2つの軸で自分たちの曲にアプローチしてくれて、僕が作ったやぼったい石ころみたいなものを加工して磨いてもらって、「はいダイヤモンドです」、くらいの感動でした。 ──そんなお2人のアイデアのハイブリッドによる魅力が、もっともわかりやすく表れた曲が“throughout”だと思いました。さまざまな音楽の要素が凝縮されて展開していく、ちょっと強引でいびつな感じもありつつ、ストレートなダンスミュージックになっています。 pavilion xool そのいびつな感じがいいですよね。途中で初期のヒップホップみたいになったり。そこはおもいっきりアフリカン・バンバータ(Afrika Bambaataa)に寄せていきました。全体的にはスクリレックス(Skrillex)っぽく、ギラギラした感じでけっこう音圧のある感じにしているのですが、そのなかで景色が変わっていく曲なので、最後のほうはそれこそよりEDMっぽくマデオン(Madeon)みたいにしています。あとは88risingを思わせるような、ちょっと不協和音で紫系のリズムを入れたりしましたね。 ──“cinema”は、さきほどageさんが「DJにかけてもらいたい」とおっしゃっていましたが、イントロは規則的な4つ打ちと見せかけて、ずれるからかけにくい。ここはポスト・ロック寄りだった頃の名残とか? age 何拍目の裏、とか取るのが好きなんです。pavilion xoolくんに送った時に「これ変拍子でしょ?」って言われて「いや4つです」ってやりとりがありましたね(笑)。 pavilion xool 最初にヴォーカルなしで送られてきて、データのミスかなんかだと思って後回しにしていたんですけど、ヴォーカルが入ったときに「なるほどね」と、なりました。最終的にはいちばんポップな曲になったんじゃないかと思います。 ──ここまで話してもらった2曲もそうなんですけど、アフロやダンスホールっぽいビートが、踊れるフックになっています。そういった要素はどこからきているんですか? age 高校3年生あたりから大学までは、ジャズバーのプレイヤーとして、ベースを弾いていたんです。その中でいちばん多かった現場がスタンダードというよりは、R&Bとかネオソウルで、そういう場所で吸収して染みついているものが出ているんだと思います。 ──“Dawn”は再録の曲ですが、なぜここにきて入れようと思ったのですか? age ちゃんとプロダクションしたものを、アルバムに入れたいと思ったんです。で、pavilion xoolくんも、好きだって言ってくれていた曲だったので、このタイミングで入れました。 pavilion xool gatoってプラック音が多いんですけど、そういうダンス・ミュージックっぽさと、今回のアルバムで唯一、生ドラムが入っている曲なので、バンドとしてのエネルギーをうまく引き立て合えないかと思いました。でも、プラック音は音数が少なければ少ないほど映えるので、エモバンドっぽさを前に出すと音の隙間がなくなるから隠れてしまうんです。そこをどう両立させるかや、最初に聴いたときに、もっと壮大にできるポテンシャルも感じていたので、その時に自分の脳内で鳴っていたヴァイオリンとかヴィオラとかホワイトノイズとかもイメージして取り組みました。“音圧を保ってバンドらしさを目指しながらプラック音を立たせて壮大にする”っていう、けっこうおもしろいことをやった曲ですね。 ──さまざまなジャンルや概念を越境した“gatoらしさ”がよく表れたEPだと思います。この作品をもって、どんな場所に出ていきたいですか? age シーンの話に戻りますけど、出ていけるんだったらどんなジャンルでもいいし、形態とかにはこだわらないです。でも、どこでも誰とでもやるわけじゃなく、出るライブやイベントの色味は、ちゃんと選んでいきたいです。 ──どんな人たちと一緒にやりたいですか? age 自分たちと同じように新しいサウンドを目指している人たちですね。エッジがある人の音楽って、すごくカッコいいし尊敬できるので、そこは自分からどんどんアプローチしてお願いしていきたいです。そして、直近で目標としている、恵比寿LIQUIDROOMや渋谷WWWみたいな、流行を発信していけるところにちゃんとgatoっていうアイコンがいて、そこから日本だけじゃなくて海外にも届けていけるように、楽しんでいきます。 . ──11月1日(金)には恵比寿LIQUIDROOM内のKATAとTIME OUT CAFEを使ってのリリース・パーティがあります。 age KATAはポップアップとかショウ・ケースとして使われることが多いので、僕らのやりたいことが実現しやすいんです。ファッションや映像、今回のジャケットやフライヤーはhirokiによるグラフィック・デザインですし、音楽以外のいろんなメディアを発信していく、というコンセプトがgatoにはあるので、すごく意味のある日になると思います。DJにはJUDGEMANがいて、ライブにはShin Sakiuraとpavilion xoolを呼んでいます。pavilion xoolくんはもともと大好きなアーティストですし、今回初めてオファーしたShin Sakiuraくんは、現行のシーンを引っ張っていける人というか、次を塗り替えて波が起こせる人だと思っています。全員で新しい流れはここにあるって、しっかり示したいです。

gato×pavilion xool インタビュー

Photo by Seita Hiramatsu Text by TAISHI IWAMI

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gato 2018年age(Vo.)を中心に突如として現れた「gato(ガト)」future bass、post dubstepなどを基調に新しい世界観を生み出す。 エレクトロシーンや北欧エレクトロニカの流れをも感じさせるバンドサウンドは、現行のインディーシーンにおいて唯一無二の存在。 2018年12月『Luvsick』を配信限定でリリース。当時全くの無名にも関わらず、表題曲「Luvsick」が TOWER RECORDSやHOLIDAY! RECORDSなどのプレイリストに選出され、早耳リスナー間で話題を集める。渋谷 Gladにて開催した同 EP のリリースパーティーでは、カルチャーとしての音楽にフォーカス。 ヒップホップ・トラックメイカー・シンガー・DJ と表現の幅を絞らず、CIRRRCLE, pavilion xool,Utae など 同世代の多彩なアーティストを招集。 初の自主企画ながらも 150 人超の動員を記録しソールドアウト。2019年4月、新メンバーとして sadakata(VJ)が加入。 ボーカルageの美声、曲を繋いで演奏するDJライクなパフォーマンス、映像と楽曲のシンクロ率の高さが武器のライブには定評があり、イベンター・DJ・ブッキングマネージャーなど、各所から出演オファーが殺到。初見のオーディエンスから対バンアーティストまでをも虜にし、着々とファンを増やしている。 HPTwitterInstagram

RELEASE INFORMATION

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Miss u / C U L8er

2019.10.23(金) gato ¥1,500(+tax) G-0021910231

1. miss u(prod by pavilion xool) 2. C U L8er(feat.telyoshi prod by pavilion xool) 3. cinema(prod by pavilion xool) 4. dawn(prod by pavilion xool) 5. throughout(prod by pavilion xool)

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EVENT INFORMATION

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『miss u / C U L8er』EP release party

2019.11.01(金) OPEN/START 18:00 KATA/Time Out Cafe & Diner[恵比寿LIQUIDROOM 2F] ADV ¥2,500/DOOR 30,000(1ドリンク別)

LINE UP 
gato Shin Sakiura pavilion xool JUDGEMAN TICKET:イープラスRA

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